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SFC改定は単なるラウンジ問題ではない
2028年4月、ANAはスーパーフライヤーズカード(SFC)の特典体系を大幅に見直す。
SFCをSFC PLUSとSFC LITEの二層に分け、SFC PLUSの維持にはANAカード・ANA Payの年間決済額300万円以上を求める。SFC LITEではANAラウンジの利用が対象外となり、スターアライアンス資格もゴールドからシルバーに降格する。
ANAスーパーフライヤーズカードの制度変更(2028年度)|ANAマイレージクラブ
この改定をめぐる議論は、ラウンジが使えなくなるかどうかに集中しがちである。しかしそれは本質を外している。
問題の核心は、ANAを選び続ける理由が失われることにある。特に深刻なのは、会社出張でANAに相当程度乗りながら最後に自腹の修行でSFCを取得した層——いわゆる「準プラチナ層」——からANAを選ぶ動機を奪う可能性である。
私自身、過去に会社の移動でSFCとJGCの両方を取得した。現在は飛行機の利用は年十回程度だが、出張や私用で航空会社を選べる場面では上級会員制度の存在が選択に影響してきた。
ANAがSFC LITEへの格下げを進め、JALがJGCの価値を維持するなら、今後は会社利用もプライベート利用もJALに寄せる。ANA便しか就航していない空港、例えば鳥取、米子、岩国などではANAを利用せざるを得ないが、感情的な反発ではなく、合理的な選択である。
2028年SFC改定の概要
ANAは2028年4月から、全SFC会員を対象に新たな年次判定を行う。初回判定期間は2026年12月16日から2027年12月15日で、この期間のANAカード・ANA Pay決済額が基準となる。既存のSFC会員も判定対象であり、取得時の条件が遡及的に変更される形となる。
SFC PLUSはANAラウンジ利用権とスターアライアンスゴールド資格を維持する。条件は年間決済額300万円以上。SFC LITEはANAラウンジが対象外となり、スターアライアンス資格はシルバーになる。例外として、ANAグループ運航便で100万ライフタイムマイルに到達した会員は決済額にかかわらずSFC PLUS相当となるが、この水準に達している会員は少数と考えられる。

出典: ANA SFCサービス改定案内
SFCは何を約束していたのか
ANAはSFCについて、「会員である限り永続的に享受できるプレミアムな特典」と説明してきた。プラチナ以上に一度到達した会員が、SFCカードを保有する限りANA上級会員に近い特典を継続できる仕組みである。この設計は、毎年プラチナに届く超頻繁利用者だけでなく、過去にANAへ相当程度貢献した顧客を長期的にANA陣営へ固定する機能を持っていた。
SFCの本当の価値は、毎年プラチナに届く人よりも、プラチナには少し届かない人にあった。一度プラチナに届いてSFCを取得すれば、その後は年によって搭乗数が減っても上級会員に準じた特典が続く。ANAを選び続ける理由を必要としていた人たちの制度だった、と言い換えてもいい。今回の改定は、この層に最も深刻な影響を与える。
準プラチナ層とは誰か
本稿で「準プラチナ層」と呼ぶのは、業務利用で毎年それなりにANAに乗るが、業務利用や旅行だけではプラチナ(年間5万プレミアムポイント)に少し届かず、最後の数便だけ自腹で修行便を飛んでSFCを取得した層である。
この層はANAカード決済額では見えない形でANAに貢献してきた可能性が高い。会社出張では航空券が個人カードではなく、会社精算、法人カード、旅行代理店、出張管理システム(BTM)、ANA Bizなどを通じて購入されることが多い。出張者本人は何度もANAに乗っていても、その購入額が個人のANAカード決済額に反映されないことは珍しくない。
年300万円決済という基準は、個人消費者としてのカード貢献度は測れても、法人出張者としての航空収益貢献を十分に捉えられない。
東京-大阪で「プラチナに80PP届かない」現実
ANAのプラチナサービスは年間5万プレミアムポイント(PP)が条件で、そのうちANAグループ運航便分は2万5,000ポイント必要である。国内線のプレミアムポイントは「区間基本マイル x 積算率 x 路線倍率(2倍)+搭乗ポイント」で計算される。
東京-大阪の区間基本マイルは280マイル。フレックス/Biz運賃(積算率100%・搭乗ポイント400)では片道960PP、往復1,920PPとなる。26往復で49,920PP——プラチナ基準の5万PPには80PPだけ届かない。
月に2回以上東京-大阪を出張していても、往復とも変更可能な業務運賃を使い続ければ、自然にはプラチナに届かないことがある。この「あと少し足りない」層が、自腹の修行でSFCを取得してきた。

東京-大阪 区間基本マイル280、国内線路線倍率2倍で計算
東京-札幌でも「17往復で届かない」
東京-札幌の区間基本マイルは510マイル。フレックス/Bizでは片道1,420PP、往復2,840PP。年17往復で48,280PP、18往復で51,120PPとなる。年17往復の東京-札幌出張者は、かなり飛んでいてもプラチナには届かない。

東京-札幌 区間基本マイル510、国内線路線倍率2倍で計算
まとめ
ANAの2028年SFC改定には、ラウンジ混雑対策やカード経済圏強化という合理的な側面がある。しかし年300万円のANAカード決済という基準は、法人精算のために個人カードに決済が乗らなかった準プラチナ層を低評価する可能性がある。
次回では、実際の出張購買行動における「往路安価・復路変更可能」というパターンと、ANA Bizや法人精算が年300万円決済に反映されない構造的問題を掘り下げる。
(次回につづく)
【主要参照】
ANA SFCサービス改定案内 / ANAプレミアムポイント計算式 / ANA国内線マイル表・利用運賃一覧表







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