「ゲゲゲの鬼太郎」生成AIに駆逐される

この作品、作ったのはどっち? 人? それともAI? わからない。わからないから続けられない。最近のコンテストはここまで追い込まれている。

“川柳の お題は妖怪 大募集”

妖怪をお題に楽しむ「妖怪川柳コンテスト」が今年で終了する。作品を作ったのが、人間なのかAIなのか、見分けがつかなくなったからだ。

「全く同じ句が来る。これはおかしい」

AI作品の応募に気づいたのは昨年のこと。傾向が同じ。オチも同じ。そんな川柳がいくつも届くようになった。観光協会の職員がAIで試すと、全く同じ川柳が出来上がる。出来栄えも、過去の応募作に引けを取らない。「対策はない。終了は止むを得ない」。ゲゲゲの鬼太郎の原作者 水木しげる氏の故郷で20年間続いてきたイベントを終わらせたのは、AIの急激な進化だった。

第20回『妖怪川柳』コンテスト公式サイトより

AI作品の急増

AIを用いた作品応募が問題視されるようになったのは2022年頃からだ。米国「第150回コロラド州品評会」のデジタルアート部門では、AIで作った絵画が1位を獲得している。受賞作は、一人の作者がAIで作った900枚のうちの1枚。制作に要した時間はわずか80時間だった。

以降、AIによる作品の応募は禁止・区分・容認と、各コンテストで対応が分かれた。積極的に受け入れているところもある。日本の「星新一賞」もそのひとつだ。同賞は、「人類以外の応募も受け入れる」。人でなくてもかまわない。宇宙人でも問題ない。>AIだって歓迎だ。(さすがSFの巨匠星新一、気っ風がいい)。とはいえ、ここまでの進化は想定外だったようだ。

22年に行われた第9回では、AIを用いて執筆した小説が一般部門優秀賞を獲得している。受賞作のAI利用は軽微なものだったが、わずか3週間で100作品を執筆し投稿したこともあり、大きな話題となった(現在、AI作品は1人1作品と規定されている)。

同賞のAI作品応募は増加傾向にある。先の第9回と今回(第13回 26年)を比較すると、応募数は114作品から491作品へ。応募総数に占める比率は4%から23%へと急増した。質も向上している。今回は、一般部門受賞4つのうち、グランプリ含む3つを、AIを用いた作品が占めている※1)。受賞者の一人は、締切1週間前にお試しのつもりでChatGPT有料プランに加入し、初めて小説を書き上げたという※2)

「(あくまで私見だが)AIか否かはまったく見分けがつかない」

最終審査員を務める矢野寿彦氏はこのように語る。AI作品であることを見抜き、審査員全員が「ホッとした」昨年とは、全く様相が異なっていた。

中間審査員・最終審査会司会進行を務めたSF作家 鏡明氏は、総評

「素晴らしい作品が生まれるとしたら、それはそれとして認めておかねばならない」
「アイディアは素晴らしいのだが、それを小説という形にすることができないという人にとっては大きな助けになるだろう」

と語った……が、続きがある。

何のために作るのか

「けれども、生成AIを使って応募する『動機』にはわからないところがある」

動機。過程でも結果でもない。それ以前の「なぜ作るのか」という動機に疑問を呈する。そこに、作家である鏡氏の強い意思を感じる。

なぜ作るのか。楽しいからだ。作っているときが(辛いけど)一番楽しい。完成したときが一番嬉しい。充実感、達成感、自己満足。これらが、次の創作の糧となる。褒められたい、目立ちたい、賞をとりたい。このような動機だけでは創作が続かない。商業作家とアマチュア作家で違いはあるが、創作者は多かれ少なかれ、こう考えているのではないか。

総評は以下のように続く。

「賞金目当てというような動機で応募するのは、筋違いではないか。それだけは避けていただきたい。それは審査をしてくださる皆さんや他の応募者を否定することに連なるからだ。そして星新一という素晴らしい創造者の名を汚すことでもある」

苦言である。もちろん、今回の受賞者を指したものではない。だが、総評の場でここまではっきり言うのは異例のことだ。

ワープロ、描画ソフト、生成AI。日々道具は進歩する。どれを使おうが構わない。ただし、その動機は創造者たりうるものでなければならない。宇宙人の執筆をも認める星新一賞らしい総評だったと思う。

さて、妖怪川柳コンテストに話を戻そう。今回も力作揃いだ。

“ミャクミャクを 妖怪辞典で 探す父”
“のっぺらぼう 朝のママにも にてるかも”

「どう? 面白いでしょう?」。作者が家族に話す様子が目に浮かぶ。こちらまで嬉しくなってくる。このようなイベントが、無粋な行為で終了してしまうことが残念でならない。

【注釈】
※1 、※2 AI小説、星新一賞を席巻 人間と区別つかず「人力小説部門」も議論|日本経済新聞
3作品のうち、AIを積極的に活用している作品は2作品。残り1作品であるグランプリ受賞作「ゲノムの塔」(しゃみずい氏作)は、作中に登場する架空の病名などを考案するのにAIを活用した程度にとどまる。

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