NHK「医療費の負担増 “受け入れられない68%”」食い尽くされる現役世代

NHKの世論調査で、医療費の負担増を「受け入れられない」とする回答が68%に上ったと報じられ、高市政権への批判が広がっている。だが、医療保険制度の問題は「負担増は嫌だ」という感情論だけでは解けない。後期高齢者医療費の大きな部分は、現役世代の支援金によって支えられており、負担を先送りすれば、結局は働く世代が高齢者医療に食い尽くされる構造が続くことになる。

NHKの問題設定と報道姿勢には、制度の本質をぼかしている疑問も残る。NHKニュースの投稿として、医療費負担増を「受け入れられない68%」とする調査結果が拡散している。

  • NHKの報道を受け、「軍事費を優先して医療を削るのか」「消費税減税の公約はどうなったのか」「高額療養費制度の見直しは命に関わる」といった高市政権批判が相次いだ。とくに、がん患者や難病患者にとって高額療養費制度は生活を支える命綱であり、負担上限の引き上げは治療継続への不安に直結するとの声が目立った。
  • 一方で、NHKの報じ方には疑問もある。「財政破綻を防ぐために保険料などの負担が増えることを受け入れられるか」という聞き方では、負担増そのものへの拒否感だけが強調される。「保険料と財政破綻は関係ない」「本来は後期高齢者支援金を知っているかと聞くべきだ」といった批判も出ている。
  • 問題の核心は、医療費を誰が負担しているのかという点にある。厚生労働省は、今回の医療保険制度改革について、現役世代を中心とする保険料負担の上昇を抑えつつ、制度の持続可能性と納得感を維持するための給付と負担の見直しだと説明している。
  • 後期高齢者医療制度では、75歳以上の医療費のうち、窓口負担を除いた約4割が現役世代の健保組合などからの支援金で賄われている。つまり、高齢者本人の負担を抑えれば抑えるほど、その不足分は現役世代の保険料に回りやすい構造になっている。
  • 健保組合の負担はすでに限界に近い。健保連関連の集計では、2026年度の健保組合にかかる後期高齢者支援金と前期高齢者納付金の合計は約4兆円規模と見込まれている。これは企業で働く現役世代の保険料から、高齢者医療へ巨額の「仕送り」が続いていることを意味する。
  • 高額療養費制度の見直しについては、反対論にも一定の根拠がある。公明党側からは、重い病気の患者にとって制度は「命綱」であり、具体的な引き上げ額の提示が遅く、患者側との協議が不十分だったとの批判も出ている。また、政府資料では給付費削減の一部に受診抑制の影響が見込まれているとの指摘もある。
  • ただし、患者負担への配慮と、制度全体の持続可能性は別問題である。重病患者への急激な負担増を避ける工夫は必要だが、高齢者医療費全体を現役世代に押し付け続けることもまた不公平である。現役世代の賃金が伸びても、社会保険料で吸い上げられれば、手取りは増えず、子育てや消費にも回らない。
  • 世論調査では医療費負担増への拒否感が強い一方、高市内閣そのものへの支持は高水準を維持している。JNNの最新調査では、高市内閣の支持率は前回から2.7ポイント上昇し、74.2%となった。不支持率は24.3%だった。医療費改革への不満と、内閣全体への評価が必ずしも一致していないことも見逃せない。
  • 社会保障の給付水準が現役世代の保険料負担を上回って増え続け、その差額が赤字国債によって将来世代へ先送りされているとの指摘は以前からある。少子高齢化が進むなかで、給付を維持したまま負担だけを拒む議論は、結局、若者と将来世代にツケを回すことになる。

医療費の負担増に不安が広がるのは当然である。とくに重い病気の患者に対して、制度変更の説明や配慮が不十分であれば、政府批判が強まるのも無理はない。しかし、NHKの調査結果をもって「負担増はすべて悪」と単純化するのは危うい。高齢者医療の負担を見直さなければ、現役世代の保険料はさらに膨らみ、社会保障そのものへの信頼が崩れていくであろう。

NHK放送センター Wikipediaより

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