AIで文系ってオワコンになるの?と思った時に読む話

城 繁幸

最近、AIによってこれから文系人材が余剰するという話があちこちで話題になっていますね。

【参考リンク】文系人材80万人、AI時代に「余剰」 減る事務職、企業は理系スキル重視

文系人材80万人、AI時代に「余剰」 減る事務職、企業は理系スキル重視 - 日本経済新聞
文系学生が就職難になるかもしれない。足元では少子化と産業界の人手不足で学生優位の「売り手市場」だが、経済産業省は3月に2040年には大卒・院卒の文系人材が約80万人余るとの推計を出した。人工知能(AI)やロボットの普及で理系人材は不足が見込...

実際に文系採用枠の削減を始めた企業も現れています。

「26年の中途採用については、前年実績比4%増の280人を計画する。事務系・技術系は6割減らすものの、工場などで生産を担当する技能系は3割増やす」

【参考リンク】クボタ新卒採用4割減の280人へ 27年入社、人員充足で抑制

クボタ新卒採用4割減の280人へ 27年入社、人員充足で抑制 - 日本経済新聞
クボタは3日、2027年4月入社の新卒採用について、26年4月入社予定と比べ38%減の280人とする計画を発表した。大卒や高卒などを含む。直近3年間は全体で450〜500人程度を採用していた。人員が充足してきたことから採用を抑制し、特に大学...

このまま文系人材、そして文系学部はAIによって淘汰されていくのでしょうか。そして、その時に評価の上がる専攻とは何なのでしょうか。

いい機会なのでまとめておきましょう。

日本は「AIリストラ」ではなく「ジョブ型リストラ」

ところで勘の鋭い人なら、ある疑問を抱いていることでしょう。

「AIで先行する米国では、むしろ理系人材の置き換えが率先して進んでいる。なぜ日本では文系の削減が先なのか」

そう、実は“AIリストラ”の本場アメリカでは、コンピュータサイエンスなどの理系人材の削減が先行しているんですね。

「ニューヨーク連邦準備銀行のデータによると、大卒以上の22~27歳人口の4月の失業率は5.8%と、全体の4.0%より1.8ポイント高く、差は過去最大になった。

専攻別では「コンピューターサイエンス」「コンピューター工学」の若者の失業率がそれぞれ6.1%と7.5%で、「哲学」の3.2%などより高かった」

【参考リンク】米国の大卒、「就職氷河期」 AIが新人の仕事代替

米国の大卒、「就職氷河期」 AIが新人の仕事代替:時事ドットコム
【ニューヨーク時事】米国で大卒の若者が「就職氷河期」のような状況に陥っている。特に経済成長を引っ張ってきたIT大手を中心に採用が冷え込んでいるためだ。生成AI(人工知能)が新入社員の仕事を代替するようになり、マイクロソフトやグーグルなど一流...

理系が切られる米国と、文系から切られる日本。この違いはどこから来るんでしょうか。

それは、それぞれの人員削減の理由がまったく異なるからです。

米国は元々ジョブ型雇用なので、職務内容と紐づいた専攻、スキルの人材を即戦力ベースで採用しています。

だからAIで置き換えられた仕事を担当していた人材が即リストラ→それがたまたまエンジニア等の理系出身者が多かった、というわけです。

と書くとなんだか文系学部出身者が評価されている印象を持つ人も多いかもしれませんが、もともとリストラがニュースになるような企業では文系出身者は(人数という意味でも給与金額という意味でも)大して存在感は無かっただけの話です。

一方、わが国は世界に冠たる終身雇用≒年功序列制度の国なので、職務内容と専攻が全然紐づいていません。

っていうか配属されるまで何の仕事をやらせるか決まっていないケースが大半ですし、配属後も会社都合で営業から人事、総務までぐるぐるローテーションさせられます。

定年まで雇わねばならない以上、そうやってこなせる業務の幅広いゼネラリストにした方が便利ですから。

だからこそ、採用選考では「具体的なスキル」ではなく「何をやらせてもそつなくこなせそうなポテンシャルの有無」を判断されることになります。

結果、日本企業は具体的に何かができるわけではないけれど、偏差値の高い大学出身の人材(その多くは文系)を大量に抱え込んでいたわけです。

ただ、数年前から各社ともに年功序列からジョブ型雇用へシフトを開始し、職務内容と賃金の紐づけをすすめています。

具体的に言えば、社内に滞留している「具体的に何かができるわけではない高偏差値の人材」を「年齢にかかわらず凄い仕事している人材」と「年のわりに大した仕事してない人材」に割り振り、前者の賃金を底上げし、後者の賃金を削るプロセスを進めているわけです。

だったら入り口の段階で「ちゃんと専門性や即戦力性がある人材」だけ採って、ポテンシャルしかない人材は採用見送りした方が合理的じゃない?となるのは当然の流れでしょう。

そう、いま日本で起こっている文系採用枠の縮小はこれなんですね。それは年功序列からジョブ型雇用へ見直しが進む中で当然起きるべくして起こった現象であり、AI云々とは直接的には関係ない話でしょう。

「AI導入に伴う採用や人員配置の方針」について、「人員削減などに取り組む」17%に対し、「特に影響はない」「影響を及ぼす段階ではない」「人員増加に取り組む」(!)で計77%という数字は、その事実を端的に示していると言えるでしょう。

日本企業はまだ「AIで人を減らす」ステージにはほど遠いということです。

【参考リンク】日本企業3割が「AI導入のため人員増」、世界の潮流とズレ あずさ調査

日本企業3割が「AI導入のため人員増」、世界の潮流とズレ あずさ調査 - 日本経済新聞
日本では人工知能(AI)導入に伴って従業員を減らす企業より、増やす企業が多い――。あずさ監査法人の独自調査でこんな結果が出た。AI活用促進のためにデジタルトランスフォーメーション(DX)人材が必要という。米国ではAIの業務効率化で人員削減が...

ですので「AIで文系がオワコンになるぞ」というのは時期尚早だというのが筆者のスタンスです。まあ減ることは減るんでしょうけど、理学部だって工学部だって将来的には分からないというべきでしょう。

オワコンになるのが確実なのは文系事務職であり、その後にAIが浸透しきった後にどの学問が評価され何が切り捨てられるかは、今のところはまだなんとも言えないんじゃないでしょうか。

以降、
レール無き世界で、我々は何を学ぶべきか
AIは日本企業を再生するか、それとも「失われた30年 第2ラウンド」となるか

※詳細はメルマガにて(夜間飛行)

Q:「新卒採用がダメダメなのですがこれってうちだけなんでしょうか?」
→A:「大手も枠いっぱいは採れないしやっぱり一定数はすぐ辞めますね」

Q:「第二の就職氷河期は到来するでしょうか?」
→A:「筆者は来ないと見ています」

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’sLabo」2026年5月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。

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