低調だった「こどもの日」の少子化報道

金子 勇

HappyKids/iStock

親子や夫婦に関連する事件の報道

4月の終りから5月6日までの連休中は、マスコミにおいて親子や夫婦に関連する事件の報道が多かったように感じる。

まずは京都府南丹市の小学5年生の男子殺害の容疑で養子縁組の父親が逮捕された。3月23日以来の連日の報道で、事態を憂慮しながらも国民のすべてが男子の生存を祈っていたのに、大変残念な結果に終わった。

北海道旭川市の旭山動物園では、従業員がその妻を動物用の死体焼却炉で2時間焼いたとして、死体損壊容疑で捕まった。「こどもの日」には札幌市で母親が6歳の息子を殺害した容疑で逮捕された。

いずれも春秋に富み、前途ある若い方が不遇な死を迎えられたことになる。

なぜ、親が子どもを、そして夫が妻を殺害しなくてならないのか。「縮減社会」の到来により、「ハムレット」のなかでのセリフ “The time is out of joint.”(世の中狂っている)が目立つようになったのか。

児童虐待死の検証報告からの提言

少子化や高齢化の現象それに札幌市での児童虐待死の事案を検証して、背景にある「抜け殻家族」(empty shell family)の問題の研究に従事してきた一人として、全国にある14000交番のうち2割に「子ども交番」の新設を提起して、児童相談所と警察機能の融合を主張したことがある(金子、2020)。

少子化の動向の中でせっかく誕生した生命をいかにまもり育てるか。「住むに甲斐ある世」(漱石『草枕』)に触発されて、社会学の側から「児童虐待予防」9項目を提起したことがある(同上:187-188)。

しかし、学界も行政もマスコミからもまったく無反応であった。自らの学問の無力さを痛感し反省するとともに、心から哀悼の意を表したい。

「こどもの日」の新聞による少子化報道

さて、3月中旬に刊行した『少子化と縮減社会』(東京大学出版会)の第5章で、25年近く続けている「こどもの日」の私なりの恒例行事を紹介した。それは全国紙(朝日、読売、日経、毎日)とブロック紙(札幌在住なので北海道新聞、「こどもの日」に神戸に住んでいた時は神戸新聞、福岡に滞在していたら西日本新聞)を購入して、「少子化関連の記事」を比較することであった。

北海道大学や神戸学院大学で社会学の講義をしていた時には、5紙の記事を切り抜きA3の用紙にコピーして、教室で受講生に配布し、最新の少子化論の資料として活用した。

5紙ともに個性があり、手元に残る10年分のコピー資料を点検すると、いくつかの特徴が新聞ごとに指摘できる(金子、2026:112-119)。

本年もまた同じように5紙を比較した。表1は、文字数とグラフの有無、そして記事の同一性と掲載面についてまとめたものである。

新聞名 文字数 グラフの有無 その他 掲載箇所
朝日 462字 第1面
毎日 675字 第1面
日経 484字 第19面
読売 504字 第1面
北海道 726字 第1面

表1 「こどもの日」の新聞による少子化記事の特徴
(注)★は記事が同一であることを示す

全く同じ記事が二社

そうすると、本年も北海道新聞と毎日新聞では全く同じ記事が675字分あり、★で示した。ただし北海道新聞が50字程度多かった。

従来の経験でも、神戸新聞でも西日本新聞の場合でも毎日新聞との記事の同一性は変わらなかった。これは拙著第5章で詳しく説明したが、いずれも共同通信社からの提供記事を両社ともにそのまま借用したのではないかという疑問につながる。この証明は部外者にはもちろんできない。

プリントを配布して講義で説明すると、学生たちは最初に驚き、次第にあきれて、講義の終了時の感想になると、「新聞記事は記者が取材して書くものだと思っていたのに、官庁(この場合は総務省)が要約版の資料を記者クラブで配布して、新聞各社のほとんどが加盟している共同通信社がそれを使った作成記事を配信して、各新聞社の判断ないしは慣行により、それをそのまま利用することがあることを知って、ショックを受けた」とまとめることが多かった。

グラフを加えるのも二社

第5章での知見との比較でいえば、今回も朝日新聞は総務省発表に基づく「こどもの日」の署名入り記事ではあるが、グラフはなく、文字数は他社に比べて少ない。毎日新聞と北海道新聞はほぼ毎年同一記事であり、それは変わらなかった。

一方、読売新聞は必ず独自の折れ線グラフと棒グラフを付加して記事を掲載する。日経新聞は本年の記事ではグラフを掲載したが、毎年ではない。

本年も含めて最近数年の「こどもの日」の少子化関連の報道では、このような従来からの新聞社特有の姿勢は変わらず、文字数にも大きな異同はなく、500字~700字程度で収まった。

さらにいえば、各紙とも例年の掲載箇所は第1面であり、日経の19面を除けば4紙ともに第1面であった。

過去最低となった子ども数と子ども比率

新聞報道姿勢の比較は以上の通りであるが、報道内容では各紙とも2026年4月1日現在の子ども数が史上空前の1329万人に落ち込んだことを見出しで強調している。そのうえで、子ども数の減少が45年間連続していること、および子ども比率の減少は52年間続いていて、総人口に占める割合が10.8%にまで低下して、ともに1950年以降の75年間で最低記録を更新したことを紹介している。

何しろ、年少人口数が一番多かった1955年ではその総数が2980万人であったのに、本年はその45%の1329万人まで減ったのであるから、驚きは当然であろう。

2023年4月に政府はこども家庭庁を発足させて、少子化対策や児童虐待防止などの機能を強化する姿勢を示したが、それにより少子化関連予算が年間7兆円を超えても、その主たる目標達成には程遠いように思われる。

なぜならそれに先立つ40年間は、厚生労働省が「待機児童ゼロ」と「ワークライフバランス」を両輪とした「少子化対策」を熱心に行ってきた歴史があり、こども家庭庁はそのパラダイムから今でも自由になり切れていないからである。そのため、各方面で期待された「異次元の少子化対策」に踏み込めない。

幼くなるほど出生数が少ない

4月1日に発表された「総務省推計人口」結果のうち、いちばん気がかりなのは図1の傾向である。

図1 年齢3歳階級別こどもの数
(出典)総務省人口推計(2026年4月1日)

幼くなるほど出生数が少ないことに加えて、2024年68.6万人の実績(合計特殊出生率は1.15)とともに、4月30日の拙稿で引用した2025年67.1万人の予想(合計特殊出生率は1.13の予想)が合わさって、0~2歳の数は213万人にまで激減した。3年間で213万人ということは、3年平均が71万人になり、もはや「人口反転」どころではない。

「少子化と縮減社会」の再設計の問題
1. 縮減社会の到来2050年に向けて総務省ホームページ(2025年12月)の「我が国における総人口の推移」によれば、日本における2050年の総人口は9515万人まで減少し、現在よりも約3300万人(約25.5%)もの人口減が予測されている...

少子化は「縮減社会」の前提

このような事情を考慮して、私は拙著(金子、2026a)やその要約紹介を行った雑誌論文(金子、2026b)では、少子化研究はもはや「人口反転」を課題とするのではなく、24年後の2050年には3000万人の人口減少が、必ず日本社会で生じることを前提とした「縮減社会」への軟着陸の方法を模索しようと提言したが、拙著刊行後の40日後に既述したような「こどもの日」の新聞報道に接し、まったく同じような感慨にふけっている。

もう一つは国際比較のデータである。表2は世界で人口4000万人以上の38カ国において、国連が「こどもの割合」を低い順に公開しているものである。

表2 人口4000万人以上の国におけるこどもの割合
(出典)総務省統計局ホームページ(総務省推計人口、2026年5月4日)

少子化解釈には歴史的な配慮が必要

拙著では詳しく触れたが、今回の結果もまた歴史的配慮が必要な気がする。なぜなら、表3のようにまとめれば、80年前の旧枢軸国と旧連合国の間では、現在でも異なる人口構成が続いているからである。

旧枢軸国 旧連合国
国名 数値 国名 数値
日本 10.8 フランス 16.2
イタリア 11.7 イギリス 17.0
スペイン 12.6 ロシア 17.0
ドイツ 13.9 アメリカ 17.1

表3 旧枢軸国と旧連合国のこどもの割合(%)
(出典)総務省統計局ホームページ(総務省推計人口、2026年5月4日)
(注)スペインはどちらかといえば旧枢軸国寄りであったと判断した。

たとえば、日本では少子化対策でも「子育て支援金の支給」まではいいが、「人口増加を政策課題にする」と、必ず「軍国主義」批判がそれに対して下される雰囲気が残っている。

イタリアやドイツの事情は不明だが、かつてフランスで少子化対策の成功事例を研究していた際のパリ市庁でのヒアリングでは、2200年までにドイツに「追いつき追い越せ」をスローガンにして、「人口増加」を政策の一環に位置づけていたように思われる。それがうまくいけば、フランスがヨーロッパで最大の人口数を抱える国になるからである。第二次世界大戦の戦勝国フランスでは、「人口増加」政策に「軍国主義批判」はないのであろう。

アメリカでも少子化が進行

ただし『ニューズウィーク日本版』(2025年11月25日版)によれば、アメリカでさえも急激な少子化に見舞われていることが分かる。「23年のアメリカの合計特殊出生率は・・・・・・1.6と歴史的低水準とな・・・・・・った。若者が子どもを欲しがらなくなったわけではない。それよりも今の世代は、子どもを持つことが経済的に不可能だと考えている」(同上:21)。

なぜなら、「ほとんどの議員は未来を担う世代のために制度を見直すよりも、年金生活者を守ることに力を入れている」(同上:21)からである。

この傾向は日本でも同じであり、「結婚からの逃走」としての未婚率の上昇と並行して、「富の世代間格差の拡大」(同上:21)が深刻化していることも酷似している。

安易に北欧諸国と比較しない

また、今でも社会福祉系で多用される総人口500万人のノルウェーやフィンランドと日本との比較、1070万人のスウェーデンと日本との比較方法についても疑問がある。

なぜなら、社会システムの人口規模を無視したうえに、20%~25%の消費税率を取り込んだ高い国民負担率の国と消費税率が10%の日本を比べているからである。国連でさえも、4000万人以上の国に限定したこどもの割合の比較を行っている意味を学んでおきたい。

子ども人口最少記録への対応として「ワークファミリーバランス」政策

このような背景や問題点の指摘は本年の「こどもの日」の5紙には皆無であった。

もし、50年間を超えてこども比率の減少が続くことを憂いて5紙が対案を考えるとすると、たとえば『ニューズウィーク日本版』に見る次の記事の内容になるのではなかろうか。

「われわれは若者に子供を産めと言う一方で、若者がマイホームを購入したり、稼ぎのいい仕事に就いたり、家族を養ったりするのを困難にしてきた」(同上:21)。

私は今回の新著で、これらの克服に「ワークファミリーバランス」の拡大解釈を提起した(金子、2026:270)。なぜなら「ワークライフバランス」では既婚者のワークとライフへの支援が濃厚な反面、「結婚や家族から逃走」する単身者のワークとライフ支援が完全に後回しだったからである。

婚外子率が低い日本の最優先事項

婚外子率が2%程度の日本での最優先事項は、単身者が多い非正規雇用者の「働き方改革」と同じく、結婚を希望する非正規雇用者がファミリーを作れて、若い世代全体が「生活安定」と「将来展望」をもてる政策こそが「縮減社会」への軟着陸への正道であろう。

アンダークラスを重点支援

2025年に橋本が三大都市圏調査によって日本社会の7階級をまとめた表4を使うと、「単身者=非正規雇用者」は「結婚からの逃走者」でもあり、しかも「アンダークラス」にそのまま該当する。

階級 割合
資本家階級 3.8%
新中間階級 30.8%
旧中間階級 9.9%
正規労働者階級 26.3%
パート主婦 11.8%
アンダークラス 13.4%
失業者・無業者 4.1%

表4 三大都市圏調査による7階級の内訳
(注)橋本分類を7階級として金子が再計算した。
(出典)橋本、2025:28.

橋本の推計によればその数は日本全体では890万人であり、比率的には13.4%になる。この層の未婚率が特に高いので、「結婚からの逃走者」のうち8割程度が「結婚」を希望していることを受けて、「ワークファミリーバランス政策」によりファミリー形成を支援することが、「異次元の少子化対策」にもつながると考えられる。

もちろんこのアンダークラス向けの政策として「正規雇用」化がある程度成功しても、2050年に向けてはもはや日本社会全体の「人口反転」にはなり得ない。しかし、「結婚」により「家族からの逃走」がなくなれば、この層もまた「生活安定」と「未来展望」が現在よりは得られるはずである。

結婚コーホート分析

それには結婚コーホート分析が不可欠となる。幸い、60年の研究史をもつ日本のSSM調査(社会階層と社会移動調査)の成果が使えるから、表5に基づいて学歴を柱としたコーホート分析をまとめておこう。

表5 結婚に際しての夫学歴と妻学歴
(出典)白波瀬(2011:327)

1969年以前の分析結果では、夫の高学歴と妻の高学歴の結合度が高く、同時に夫の低学歴と妻の低学歴間にも同じような結合度が高かった。この学歴が同じといういわば「同類婚」の傾向は、1970-1985年でも1985-2005年でも基本的には認められるが、2005年では夫が中学歴でも妻は必ずしも中学歴だけではなく、低学歴も高学歴も増えており、夫が高学歴の場合の妻の学歴の分布とは著しい差異が認められる。

「ライフファミリーバランス」政策の推進

このようなSSM調査結果もまた「結婚からの逃走」を止めて、「ライフファミリーバランス」での「ファミリー形成支援」にも十分活用できる。

橋本の調査により低学歴が多いとされたアンダークラスの「結婚からの逃走」だけではなく、原因は真逆とはいえ、新中間階級に所属するはずの高学歴層の専門職男女でも「結婚からの逃走」は認められるので、今後の「異次元の少子化対策」ではこの種の学術的成果への配慮もほしい。

このような姿勢がなければ、今後24年で12300万人が9000万人に縮減する社会へのスムーズな軟着陸は困難であろう。

こども家庭庁や厚生労働省それに内閣府を超えて、政財界、マスコミ界、学界レベルでの危機意識の共有が望まれる。

【参照文献】

  • 橋本健二,2025,『新しい階級社会』講談社.
  • 金子勇,2020,『「脱け殻家族」が生む児童虐待』ミネルヴァ書房.
  • 金子勇,2022,『児童虐待という病理』Kindle版(内容は2020年版と同一)。
  • 金子勇,2023,『社会資本主義』ミネルヴァ書房.
  • 金子勇,2026a,『少子化と縮減社会』東京大学出版会.
  • 金子勇,2026b,「社会資本主義における『ワークファミリーバランス』」『UP』No.643 東京大学出版会:7-13.
  • 白波瀬佐和子,2011,「少子化社会の階層構造」石田浩・近藤博之・中尾啓子編『現代の階層社会2 階層と移動の構造』東京大学出版会:317-333.

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント