「5月22日」は名探偵シャーロック・ホームズの生みの親アーサー・コナン・ドイルが生まれた日で、「シャーロック・ホームズ・デー」と呼ばれている。アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Arthur Ignatius Conan Doyle)は1859年5月22日、スコットランドのエディンバラで生まれた。シャーロック・ホームズなどの本を書く前はわずかな期間だが眼科医だった。1902年に「サー(ナイト)の爵位が授与された。1930年7月7日、71歳で亡くなった。

シャーロック・ホームズのシルエット(「The Sherlock Holmes」Book、DKから)
日本でも多数のシャーロック・ホームズ・ファンがいるし、ホームズ関連の情報は既によく知られている。ドイルは短編「最後の事件」でホームズを崖から落として殺し、シャーロック・ホームズ・シリーズを終える考えだったが、読者の猛抗議や巨額の執筆料の提示を受け、後に復活させた話は良く知られている。シャーロック・ホームズが死んだことを知った多くの読者は当時、腕に喪章を付けて、その死を追悼したといわれている。
当方は欧州に居住してからシャーロック・ホームズの探偵物に関心を持ち出した遅すぎたファンの一人だ。海外に住むようになって、BBCのシャーロックホームズ(2010年)やホームズがニューヨークで活躍するCBSTVシリーズ「エレメンタリー」(2012年)などを楽しく観た。
年を取るにつれて、眠りにつくのが容易ではないこともあって、直近はもっぱらオーディオブックでシャーロック・ホームズの物語を楽しんでいる。そしていつの間にが眠ってしまうことが多い。だから、「海軍条約文書」や「ボヘミアの醜聞」などは何十回も聞いている。
最近では、「ヤング・シャーロック」(全8話)が3月、放映された。TV用シリーズ(ガイ・リッチー監督)だが、ベーカー街の冷静沈着な名探偵時代ではなく、オックスフォード大学に通う青年シャーロックの話だ。もちろん、ドイルの作品ではないが、シャーロックと父親の関係、そして将来のライバルとなるジェームズ・モリアーティが登場する。続編が制作中という。
シャーロック・ホームズに関連したエピソードは多い。シャーロック・ホームズのモデルはエディンバラ大学医学部時代の恩師、ジョセフ・ベル教授といわれている。教授は患者の観察から病気だけでなく、職業や経歴まで言い当てる天才的な観察眼の持ち主だったという。
短編「ボヘミアの醜聞」の中で、ホームズはワトソンに「君は、この部屋へ上がってくる階段が何段あるか知っているか」と聞くと、ワトソンは答えられない。ホームズは「君は見ている(see)が、観察(observe)していないのだ」という有名な台詞を言う。そのシーンにはベル教授の影がちらつく。眼科医だったドイルは「見る』と「観る」の違いに人以上に拘るわけだ。
英国の推理作家アガサ・クリスティ(1890~1976年)の名探偵小説の主人公エルキュール・ポワロは難解な事件を事実の積み重ねから論理的な思考で解決していく。一方、シャーロック・ホームズは独自の科学的推理(アブダクション)と観察眼で難事件を解決する。その事件解決へのプロセスには違いがあるが、観察を重視する点では同じだ。シャーロック・ホームズは「マインドパレス」(記憶の宮殿)という言葉をよく使う一方、ポワロは「小さな灰色の脳細胞」という言葉が口癖となっている(「バイデン米大統領の『マインドパレス』」2024年2月10日参考)。

伝記を読むと、息子を25歳という若さで亡くしたドイルは再び息子と話したいと、晩年には心霊主義に傾斜していく。ドイル自身はその前から心霊には強い関心を持っていたが、息子の死が大きな影響を与えたといわれている。
興味深い点は、19世紀後半から20世紀初頭にかけ、心霊や幽霊に関心を持つ作家が多いことだ。スウェ―デンの国民的作家ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(1849年~1912年)は幽霊を捕まえようとしてガラス瓶を持って墓場を徘徊した話は有名だ。当時、映画や蓄音機が出てきてばかりの時代で、亡くなった人の姿や声が見、聞けることから、多くの人々は死後の世界に関心が高まっていた。フランツ・カフカも当時、映画が好きで頻繁に映画館に通っていた。ちなみに、カフカは日記の中で「シャーロック・ホームズのように観察する」といった表現を記している。
今年7月でドイル没後96年だ。2030年には没後100年を迎える。その時にはシャーロック・ホームズが再び世界的に登場するだろう。「わが巨人軍は永久に不滅です」といった長嶋茂雄氏に倣って言うならば、「シャーロック・ホームズは永久に不滅です」。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年5月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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