投資対象の安さに着目する保守主義の原則

資産形成とは、勤労期間中に、老後の豊かな生活のための原資を計画的に積み立て、積み立てた資産を長期の視点で運用することであるから、投資目的は、その初期段階では、資産価値の増殖となり、時間が経過して退職年齢が近づくにつれて、そこに資産価値を保全する要素が加わり、老後生活が開始される段階では、資産価値の保全になる。

こうした投資目的の変化は、資産配分の遷移に具体化されるわけで、例えば、株式への配分比率は、資産形成の初期には高く、資産取り崩しの始まるときには極めて低くなるはずである。では、さて、いかにして、段階的に資産配分を変化させ得るのか。仮に、投資判断として、適時適宜に資産配分を変更するとしたら、それは、程度の差こそあれ、投機的要素を含むものとなり、よくも悪くも投資の成果に大きな影響を与えるであろう。

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投資においては、資産配分の変更のほかに、資金異動への対応策という問題もある。例えば、家計においては、退職一時金の受け取り、不動産等の売却、遺産相続、保険金の受け取りなどの様々な理由のもとで、大きな金額の収入があり得るが、それを投資に振り向けるときには、長期積立、即ち、投資時期の時間分散という手法が使えないのだから、資金異動の影響には特別な注意が必要となるわけだ。とはいっても、現実には、投資の対象と時期を決めるのは難しいことで、実際には、預金に資金が滞留しやすいわけである。

しかし、より簡単に考えて、投資を思い立ったときに、一番安いと思えるものに投資すればいいではないか。そして、投資したものが安くなくなったら、別の安いものに乗り換えていけばいいので、乗り換えを段階的に行えば、投資対象が複数化して、自然に資産配分ができるわけである。こうして、資産配分は、意図をもって決めれば投機的になるのに対して、投資においては、安さの追求の結果として、自然に決まるものなのである。

では、安さとは何か。常識的に考えれば、安さは利回りの高さである。利回りは、資産が創造する利息配当金等を資産価格で除したもので、価格が低いほど、創造される現金が大きいほど、高くなるから、投資対象の現在における価値の指標になる。つまり、利回りを重視することは、投資対象の価値の変動、即ち価格の変動を見込まないことであって、そこに投資の保守主義があるのである。それに対して、価格変動を見込んで資産配分を変更すれば、投機的要素の混入は避け得ないのである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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