借金をするために、借金をする人はいない。銀行にローンを申し込む人は、必ずローンで実現しなければならない資金使途をもっているのである。しかも、どうしても現時点で資金使途を実現しなければならないのに手元資金が不足しているという状況のもとでなければ、ローンは利用されない。
なぜなら、ローンを利用する以上は、家計上、ローンの弁済計画がたてられるはずで、その同じ計画に従って資金を積立てることもできるわけだから、使途の実現が将来時点でもよければ、ローンの金利という余計な費用を払う必要はないからである。逆にいえば、ローンが事業として成立するのは、資金の不足を補完して、使途の実現を前倒すことの対価として、喩えれば顧客が時間を買う対価として、顧客から金利を徴収できるからなのである。

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ローンを利用するのと全く逆の状況、即ち、資金は既に準備されているのに、使途の実現は将来時点にあるという状況があり得る。そこで活躍するはずの金融機能こそ、金融庁のいう資産形成、普通の用語でいえば投資であって、それが事業として成立するのは、手元資金を投資運用して、使途の実現を後倒すことの対価として、喩えれば顧客が時間を売る対価として、顧客に投資収益を還元し、それに対して適正な手数料を顧客から徴収できるからである。
つまり、金融機能を利用することの意味は、ローンを用いて資金使途の実現を前倒せば、早く効用を得る利益のために金利という費用を払い、逆に資産形成によって資金使途の実現を後倒せば、遅く効用を得る不利益の補償として投資収益という利益を得ることになる。要は、金融機能とは、資金使途を実現する時期の調整にほかならず、その時間調整が金利という費用を生み、投資収益という利益を生むのである。
このように、ローンと資産形成との間には、資金使途実現の時期について、前か後かという差しかないのだから、資金使途のないローンがあり得ない以上は、資金使途のない資産形成もあり得ないことになる。故にローンについては必ず資金使途が問題にされるわけだが、資産形成については必ずしも資金使途が問題にされないのは、なぜなのか。
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森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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