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ピザのデリバリー。
なかなかおいしいですよね。
宅配ピザ業界は、ドミノ・ピザを筆頭にピザハットとピザーラの3大チェーンが圧倒的に寡占しています。
でも福岡だけは、福岡ローカルの「ピザクック」がシェア4〜5割を握っているのです。
日本経済新聞2026年6月2日付けの「沖縄・九州経済」版に、このピザクックがされています。面白い内容なので紹介します※1)。
まずピザの生地は、福岡市内のセントラルキッチンで一括して製造。生地を運べる距離に限るため、出店は九州北部が限界です。
その生地も、冷蔵庫で48時間以上寝かせて急速冷凍してもちもちした食感を実現。オーブン設定温度は各店舗の建物の大きさや空調によって1度単位で調整。
メニューも独自のこだわりがあります。4月には100回以上の試作を重ねて、博多名物・ごまさばやブリのカルパッチョを乗せた「博多海鮮スターフォー」を発売。
配送方法も工夫しています。「熱々男届け(あつあつおとどけ)」は、箱詰めした焼きたてのピザを熱した2枚の鉄製のプレートで挟み、布袋に入れて配送。70〜80度を維持できるように配達時間は遠くても30分まで。
一方で全食材を地元・九州産でまかなうので、原材料費は高くなります。親会社の食品卸・岩田産業グループコールディングとの一括調達でコストは抑えますが、原価率は、全体で4割、持ち帰りで5割。
価格は損益分岐点ギリギリで設定していますが、他チェーンよりも2割高。競合よりも高いのに、シェアトップです。
以上が日本経済新聞の概要です。
福岡に行ったら、ぜひ一度食べてみたいですね。
では、ピザクックはどのようにこうした宅配ピザ事業を実現したのでしょうか? 興味があったので調べてみました。
もともとピザクックは、福岡に根ざした業務用食品卸・岩田産業が1990年に事業譲渡を受けて始めた事業でした※2)。
順調に成長してFC7店舗、直営店10店舗の規模になった1997年、あるピザ宅配会社が九州に進出。この際に、社員の大規模な引き抜きをかけられました。20数人の社員が一緒に半分に減り、加盟していたFC店が全て移籍先に連れて行かれ、しかも裁判まで起こされました。
親会社である岩田産業の経営陣は、全員「事業売却&撤退しかない」という判断。
しかし売却先に足元を見られて、条件が二転三転。そこで責任者だった現・岩田産業グループ社長の岩田陽男さんは、自主再建の道を選びました。
しかし本部には女性事務員1人だけしか残っておらず、店舗は荒れ放題。岩田さんは、ピザクック本部に常駐して陣頭指揮を執りました。
残った社員を励ましながら、トイレ掃除など店の掃除に丹念に取り組み、販促チラシを作り、メニュー開発、事故処理対応、採用活動に奔走。
一方で、ライバルはピザクックのノウハウをそっくり真似て出店攻勢。業界では「福岡、宅配ピザ戦争が始まった」と見られていました。
この経験で、同社は店舗展開を「量より質」の方針に切り替え、FC経営は撤退。直営に転換しました。
2011年にはオリコンで「九州沖縄ピザ宅配顧客満足度1位」を2年連続で受賞。福岡県内のトップシェアを確立できました。
では、今後の展開はどのように考えているのでしょうか※3)。
同社では、県外への展開もそろそろ視野に入れようとしてます。同社は、1店舗あたりの商圏人口を3〜4万世帯と設定しています。現在、福岡県内以外では、佐賀市に1店舗あります。
一方で現在力を入れているのは、新業態であるテイクアウト併設店への転換です。車10台分の駐車場があるロードサイド店に転換することで、20〜30%の増収を見込んでいます。
一方で、出店ペースの加速やFC本格展開は考えていません。これは経営危機で、「会社の継続には、会社と社員の価値観の共有が重要だ」とわかったためです。
「量より質」と考える同社は、社内人材の育成に取り組むことで、価値観を共有したリーダーを育てて、直営店を任せることが必要だと考えています。
強い企業文化というものはこういうことから生まれるのですね。
ピザクックの挑戦を見ていると、戦略は机上ではなく、現場で現実と格闘し、試行錯誤をしながら紡ぎ出していくものであることを実感します。
【参考文献】
※1)『「ピザクック」出店再開 70度超、熱々お届け 福岡で3大チェーン圧倒』日本経済新聞 沖縄・九州版 2026.6.2
※2)『さらなる「成長と変革」掲げ第8次 中計スタート 岩田 陽男 岩田産業グループホールディングス会長兼CEO』 ふくおか経済 2025.6号
※3)『第7次中期計画で連結売上高450億円を目指す ㈱岩田産業グループホールディングス』 ふくおか経済 2022.12号
編集部より:この記事はマーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏のオフィシャルサイト(2026年6月9日のエントリー)より転載させていただきました。永井孝尚氏のメルマガのご登録はこちらから。







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