黒坂岳央です。
先日、SNSである投稿が拡散された。イオンモールを歩く中年男性を無断撮影し、「ファッションがダサい」とコメントをつけて晒したものだ。投稿を指示する声もあったが、多くは反発を呼んで炎上した。
自分自身、休日に子供を連れていくまさに「イオンモールにおじさん本人」だ。当事者としてこの炎上について持論を述べたい。

Koji_Ishii/iStock
他人を盗撮して晒す行為が問題
炎上する意見の中にあったのは「他人を盗撮してSNSでインプ稼ぎをするな」という批判だ。これは服装以前の問題となる。
この写真が仮に実在人物の無断撮影で、盗撮写真をSNSに晒しているなら肖像権の侵害にあたる可能性がある。日本では明文化された盗撮禁止法の対象外になるケースも多いが、民事上のプライバシー侵害として争われた判例は存在する。
さらに問題はそこではなく、「ネタ」として消費する側の感覚だ。
中年男性はしばしば嘲笑の的になる。答えはシンプルで彼らは反撃しないからだ。炎上リスクがゼロの相手を選んでネットリンチしているのだ。この悪意を「ユーモア」と呼ぶのは無理がある。弱い者いじめの構造と本質的に変わらない。炎上した原因としてこの点は大きい。
休日パパがダサい理由
自分自身、休日に子連れで出かけるときはかなりダサい格好になる。晒された本人は襟付きの服だが、自分はもっとダサいし子供のクラスメイトの経営者でも医師をする父親も同じくらいダサい。おそらくこれは地域を問わず、大体、休日パパはあまりカッコいい姿をしていない事が多い。それには理由がある。
子連れでイオンモールを歩く日の服装に求められる条件は、汚れてもいい、動きやすい、洗濯しやすい、安いの4点だ。子供にジュースをこぼされる確率もあるし、公園で遊べば砂や泥がつく可能性もある。子供としっかりと付き合うパパほど、ブランド物なんて着ることはできず、どうしても格好はダサくなる。
またそうした人たちも、元々ダサいファッションだったわけではない。おそらく、独身時代には服や美容にも気を使っていた人もいるだろう。自分も20代の時はイキった服にお金を使っていた時期もあり、大変人目を気にしていた。
だが、子供がいるとファッションにかけるコストの優先度は下に落ちる。ファッションに使っていた月数万円は、子供の習い事・教育費・住宅ローンに移行するのが普通だ。
さらに、既婚中年男性の多くはモテ市場から自発的に退出している。異性からの評価を最大化するための服装投資は、目的を失った支出になるからだ。
筆者自身、子供ができた時点で「モテ」なんて言葉は脳内に出てくることはなくなった。逆に既婚者で子供がいるのに、赤の他人からモテなんて意識する人がいるなら、そっちの方が遥かに問題だろう。
世の中はダサい服で歩いているおじさんが、家族のために住宅ローンを返済し、子供の大学の仕送りをしていたりする。外見で人の良し悪しを評価することの限界がここにある。
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「イオンモールおじさんがダサい」と笑っているSNSユーザーの多くは、20代独身・都市部在住・SNS高頻度層だろう。だが今おじさんを笑う彼らは10年後、同じ立場に立つ。
子供ができ、住宅ローンを抱え、週末にイオンモールへ行く。その時に気づく。イオンモールおじさんは別に何も失っていないことに。笑っている側が、まだ持っていないものを彼らが持っているだけだ。
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