皇位継承をめぐる国会論議が、また迷走している。衆参両院の正副議長が示した「取りまとめ案」は、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案と、旧11宮家の男系男子を養子として皇族に迎える案の2案を「いずれも了」とし、政府に法制化を求める内容だ。6月10日には、これを「立法府の総意」として取りまとめたとされる。
注目される天皇陛下の発言
ここで注目されるのが、天皇陛下の記者会見での発言だ。陛下はオランダ、ベルギー訪問前の会見で、制度に関わる事項については言及を控えるとしたうえで、皇族数確保の議論について「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と述べられた。(宮内庁)
自称「保守」とか、多くの「右」と言われる人たちは、陛下による、政治への関与にならないギリギリの線での思いの発露に、感じるところがないのですかね?
pic.twitter.com/U2xHgBpTBz— 枝野幸男 弁護士 (@edanoyukio0531) June 13, 2026
これは政治的発言ではない。むしろ憲法上の立場を踏まえ、制度論への直接の関与を慎重に避けた発言だが、「国民の理解が得られるものとなることを望んでおります」という言葉は重い。
もし陛下が今回の案を「了」とされたのなら、これで「国民の理解が得られるものと思っております」とコメントされただろう。この言葉は、今の案では国民の理解が得られないのではないか、という危惧を暗示している。
なぜ直系の愛子様を差し置いて、わざわざ民間の旧宮家から養子を取るのか。しかもその養子には皇籍はあっても皇位継承権はない。その子には継承権があると森議長が口をすべらせたが、批判を受けて訂正し、法案には皇位継承について書き込まないことを確認した。
何のための「皇族数の確保」なのか
これではいったい何のために養子を取るのかわからない。皇室制度は、憲法第1条が定めるように「日本国民の総意」にもとづくので、国会が「総意」と称しただけで、国民的理解が形成されたことにはならない。
共産党は、男系男子を「不動の原則」とする内容は憲法の精神に反するとして反対している。立憲民主党も、旧宮家養子案については、退位特例法の附帯決議に「養子」の文字はなかったとして疑問を呈している。
そもそも今回の取りまとめ案は、皇位継承そのものではなく皇族数の確保策だという建前をとっている。だが旧宮家の男系男子を皇族の養子に迎えれば、その子孫に皇位継承資格を認めるかどうかという問題は避けて通れない。皇族数の確保と皇位継承を切り離しているように見せながら、実は女系天皇を阻止する制度設計なのだ。
国会側の動きは妙に拙速である。6月8日に取りまとめ案を示し、10日に「総意」とする。女性皇族の配偶者や子の身分、旧宮家養子案の対象、年齢、手続き、本人の意思確認、国民の受け止めなど、制度の核心部分には未整理の論点が多い。これで「静かな環境で議論した」といえるのだろうか。
今ごろから「与党で制度設計を詰める」という高市首相
さらに議論を複雑にしているのが維新の発言だ。藤田共同代表は、高市首相から「まず与党で制度設計の細かい部分まで詰めてほしい」という趣旨の発言が出たという。これに野党側が反発している。
皇位継承や皇族数確保は、通常の政策課題とは異なり、国民統合の象徴である天皇制度に関わる問題である。そのため2年以上かけて両院で取りまとめる異例の手続きを踏んだのに、まず与党で制度設計を詰めるなら、今までの取りまとめは何だったのか。「与党で決めたら国会は追認せよ」ということなのか。
今回の国会論議で見えてきたのは、「安定的な皇位継承」をめざすはずの議論が、かえって不安定をもたらしている皮肉である。正副議長取りまとめ案は、各党の対立をいったん棚上げする政治的妥協にはなったかもしれないが、棚上げされた論点は消えない。むしろ法制化の段階でより大きな火種となる。
天皇陛下が求められたのは、制度の細部ではなく「国民の理解」である。国会が本当に「立法府の総意」を名乗るなら、まず必要なのは、数の論理で結論を急ぐことではない。国民に対して、なぜこの制度が必要なのか、どのような憲法上の整理をしたのか、皇室の将来像をどう考えるのかをオープンな場で説明することだ。







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