米国とイランの戦闘終結に向けた覚書が署名された。戦争が終わることは歓迎すべきだが、問題はその中身である。最大の焦点は、イラン復興・経済開発のために少なくとも3000億ドル(48兆円)という巨額の資金を用意する構想だ。

「米国は10セントも出さない」とトランプは言う
これは単なる停戦文書ではない。ロイターによれば、米イランの枠組み合意には、イラン向け投資を促す3000億ドル規模の民間基金が盛り込まれ、半分以上の資金についてすでにコミットメントがあるという。しかも、投資分野はエネルギー、物流、製造業、輸送などに及ぶとされる。(Reuters)
トランプ大統領は「米国は10セントも出さない」と述べ、米国民の税金でイランに資金を出すわけではないと強調している。バンス副大統領も、イランが核計画の解体や濃縮ウランの処分、厳格な査察を受け入れた場合に限り、湾岸諸国などが支える基金にアクセスできるという趣旨の説明をしている。
アルジャジーラが報じた覚書の文言では、米国が「地域のパートナーとともに」イランの復興と経済開発のために少なくとも3000億ドルの計画を策定するとされている。実施方法は今後60日間の交渉に委ねられており、必要な制裁免除や許認可を米国が与えることも盛り込まれている。(Al Jazeera)
「民間基金」なら問題ないのか
米国政府の説明は、要するに「これは賠償金ではない」「政府支出ではない」「民間投資だ」というものだ。ロイターも、基金は政府資金や補助金を含まない民間投資ビークルであり、凍結資産の解除交渉とは別物だと報じている。
だが、国際政治でいう「民間投資」は、しばしば純粋な民間リスクだけでは終わらない。たとえば、政府系金融機関による融資、輸出信用、投資保険、債務保証、制裁免除、税制優遇、インフラ案件への公的支援が組み合わされれば、表向きは民間投資でも、損失の一部は最終的に公的部門へ回る。
日本企業の名前も出ている
見逃せないのは、日本との関係である。ロイターは関係筋の話として、韓国、日本、シンガポール、マレーシア、米国の企業がコミットメントを行ったと報じている。ただし、企業名や具体的な金額は明らかにされていない。(Reuters)
ここから「日本政府が48兆円の一部を払う」ということはできないが、日本は中東原油に依存しており、ホルムズ海峡の安定は死活問題である。米国が「同盟国も応分の役割を果たせ」と言い出せば、日本政府が完全に無関係でいられるとは限らない。
復興支援か、事実上の手切れ金か
イラン側は当初、戦争被害の補償として米国に4000億ドルを求めたが、米国側はこれを拒否し、その代替として復興・開発基金の構想が浮上したという。(Reuters)
この経緯を見ると、3000億ドル基金は、単なる投資案件ではなく、戦争終結のための政治的な手切れ金に近い性格を持つ。名称は「復興開発基金」でも、実質的にはイランに停戦と核協議を受け入れさせるための経済的誘因である。
その意味で、一定の経済的インセンティブを使って戦争を止めること自体は、外交手段として否定できないが、問題はその費用とリスクが誰に転嫁されるかである。
日本にとって重要なのは、まず透明性である。政府系金融機関、JBIC、NEXI、JICA、あるいは政府保証付きの融資や保険が使われる可能性はあるのか。米国から日本政府に負担要請は来ているのか。これらは国会で明らかにすべきだ。







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