イラン軍がホルムズ海峡「再封鎖」を宣言:どうしても戦争をやめたくないイスラエル

イラン軍事当局は20日、米国やイスラエルが米イラン間の覚書合意に違反したとして、ホルムズ海峡の封鎖を宣言した。イスラエルによるレバノン南部への攻撃継続を主な理由に挙げ、米国側が合意の第一条項を実施していないと非難した。この動きは、6月中旬に署名されたばかりの停戦・交渉合意を揺るがすもので、中東情勢と世界のエネルギー供給に再び緊張をもたらしている。

  • イラン側は革命防衛隊や中央司令部を通じて声明を出し、「米国とイスラエルの公然とした悪意と合意違反に対し、ホルムズ海峡を封鎖する」と表明した。
  • レバノンでのイスラエル軍の停戦違反を直接の引き金とし、米国がイスラエルを抑えられていない点を批判した。イラン国営メディアやFars通信がこれを報じ、通過を試みる船舶への攻撃警告も含めた。
  • 米国側は即座にこれを否定した。米中央軍(CENTCOM)は「ホルムズ海峡の商業船舶交通は増加しており、自由な航行を確保している」と発表。
  • 20日には55隻の商船が通過し、1700万バレル以上の石油が輸送されたと具体的な数字を挙げた。トランプ大統領は「海峡は開放されており、トール(通航料)は課さない」と強調し、米国が「中東の守護者」として役割を果たす可能性に言及した。
  • JDバンス副大統領も「過去24時間で1600万バレルの石油が通過した。戦前並みの水準に戻りつつあり、封鎖の兆候はない」と述べ、スイスでの米イラン交渉継続を前提に楽観的な見方を示した。
  • 米国はイラン側の封鎖主張を「受け入れられない」とし、航行の自由を堅持する姿勢を明確にした。
  • 海外メディアの報道はイラン側の宣言と米側の否定を併記する形で進んだ。「イランがレバノン攻撃を理由に再封鎖を宣言」「しかし米国は交通継続を確認」と伝え、合意の脆弱性を指摘している。
  • 18日にトランプ大統領とイラン大統領ペゼシュキアンが署名した覚書では、ホルムズ海峡の再開と米国による海上封鎖解除が主要項目だった。
  • イスラエルがレバノン南部で攻撃を継続したことでイラン側がこれを違反とみなした形だ。石油価格は一時上昇傾向を示し、船舶運航会社やエネルギー市場に警戒感が広がった。

この事態は、米イラン間の最近の覚書が依然として不安定で、レバノン情勢やイスラエルの行動が合意全体を左右しやすい構造を浮き彫りにした。今後のスイスなどでの交渉進展や、両国・イスラエルの動きが世界のエネルギー安定と中東和平に直結する展開となりそうだ。

FarzadFrames/iStock

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コメント

  1. 早川蒼真 より:

    率直に言って「この状態でよくもまあ停戦交渉しようと思えたよね」というのが感想です。わずか10日ほどの間、これだけ激しい戦闘と応酬が続いていたわけですから、合意がすぐに揺らぐのも当然と言わざるを得ません。 もちろん、戦争はどこかで止めなければなりません。だから停戦交渉そのものを否定するつもりはありません。しかし今回の流れを見ると、「停戦」と言いながら現場では攻撃と報復が止まっておらず、これでは合意文書に署名しても、その紙が乾く前に破られるのではないかと疑われても仕方ありません。この短期間に起きたことの推移を振り返るだけでも、今回の交渉がいかに無理のあるタイミングだったかが浮き彫りになります。 ◆6月10日:レバノン南部での激化 イスラエルがレバノン南部で空爆を行い、レバノン側情報筋によれば少なくとも13人が死亡。ヒズボラも南部のイスラエル軍への攻撃を主張し、激しい戦闘が続いていました。停戦に向かう空気というより、むしろ戦闘が拡大しているように見えます。 ◆6月11日:米イランの応酬と湾岸への波及 6月9日の米軍ヘリ(アパッチ)撃墜が確認された後、米国とイランの応酬は10〜11日にかけて再び激化しました。トランプ大統領はホルムズ海峡周辺への対応を警告し、イランも地域の米軍基地へミサイル・ドローン攻撃で応酬したとされます。この間、6月11日にはバーレーンで迎撃されたイラン製ドローンの破片が落下し、11歳の少女が軽傷を負い、住宅や車両にも被害が出ています。もはやイスラエル、イラン、ヒズボラだけの問題ではなく、湾岸諸国や民間人にまで危険が及ぶ段階です。 ◆6月14日:ベイルート南郊ダヒエへの攻撃 ヒズボラがイスラエル北部のコミュニティへ3発の発射体を撃ち込むなどした(南レバノンのイスラエル軍へのミサイル・ドローン攻撃も報じられた)のに対し、イスラエルはこれを既存の停止合意や停戦努力に反する攻撃とみなしてダヒエのヒズボラ標的を攻撃、レバノン側で3人(あるいは国営通信で2人死亡・4人負傷とも)の死傷者が出ました。トランプ大統領が「この朝のベイルート攻撃は起きるべきではなかった」と批判するほどの泥沼状態でした。和平合意が近いとされる局面で首都近郊を攻撃すれば、相手側に「本気で止める気があるのか」と疑われて当然です。 ◆6月16日:沈静化しないレバノン戦線 イスラエルのドローン攻撃がレバノン南部のメイファドゥーンやショウキンなどの車両を標的にし、少なくとも4人が死亡。ドローンやミサイル、砲撃が絶えず、レバノン戦線は全く沈静化していませんでした。 ◆6月19日:あまりに危うい「停戦合意」とその代償 米当局者によれば、同日午後4時からの停戦合意が発表されました。ここだけ見れば前進であり、戦闘を止める合意ができたこと自体は評価すべきです。しかし、その停戦の前後だけで、レバノン保健省によれば未明以降少なくとも47人が死亡、イスラエル側も南レバノンで兵士4人が死亡するという、大規模な死傷者が発生する異常事態の中での幕開けでした。「停戦に向かっている」というより、「停戦前にできるだけ攻撃しておく」という危険な発想に見えてしまいます。 ◆6月20日:翌日には再び深刻な対立へ 案の定、翌日にはイラン革命防衛隊がホルムズ海峡の閉鎖を宣言し、船舶へ接近警告を出しました。米中央軍は「海峡は開いており商船通航は続いている」と反論し、主張は真っ向から対立。「イランは閉鎖を主張し、米国は実効的閉鎖ではないと見る」という、極めて危うい状態です。さらにヒズボラは一晩で南レバノンのイスラエル軍へ50発超の発射体を撃ったとされ、アリ・アルタヘル丘陵付近での地上交戦も主張、イスラエルも空爆で応じるという、停戦とは名ばかりの状況に逆戻りしています。 結論 停戦とは、単に「紙に署名すること」ではありません。現場で撃たないこと、報復の連鎖を止めることで、初めて意味を持ちます。これだけの流血と報復の連鎖が止まっていないタイムラインの中で、形ばかり「和平の合意」へと押し進めたところで、意味があまりないと思えてしまいます。 イランの「再封鎖」宣言もイスラエルの攻撃継続も、起きるべくして起きた結果でしょう。最初から「交渉が成立するような空気感」は1ミリもなかった、と言わざるを得ません。