資産形成の真の目的は経済の持続的成長だ

投資についての一般的な理解では、投資とは、リスク、即ち損失の可能性を受け入れることで、リターン、即ち期待損失を上回る期待利益の可能性を享受することとされていて、投資教育と呼ばれる領域では、このリスクとリターンとの関係を上手に設計することについて、例えば、分散投資であるとか、長期投資であるとか、様々な技術論が展開されているわけである。しかし、こうした投資教育においては、技術的なことが問題にされているだけで、投資の目的は何かについて論じるところはない。これでは、投資をゲームにするだけである。

ゲームではない資産形成、真の資産形成には、目的が必要であり、その目的は豊かな消費以外にはあり得ない。このことを金融界で初めて明らかにしたのは、ほかでもない金融庁である。金融庁は、資産形成の主たる目的を国民の豊かな老後生活に定め、その普及を熱心に図っているのだが、老後生活に焦点を絞っているのは、公的年金改革との関連で、国民の自助努力を促すことが政府の最重点課題だからである。

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では、なぜ金融行政において豊かな消費が問題になるのか。金融庁の行政目的は金融機能の高度化だが、金融機能の高度化のための高度化は無意味だから、金融庁は究極の行政目的を金融機能の高度化を通じた経済の持続的成長の実現においているわけである。では、経済成長の動因は何かといえば、消費の拡大であり、消費の拡大の動因は国民が豊かさを追求することなのだから、金融行政の目的の連鎖をたどれば、最終的には資産形成を通じた豊かな消費の実現にたどり着くのである。

当然のことながら、経済成長が目的なら、資産形成による消費の前倒し効果よりも、ローンを通じた消費の前倒し効果のほうが大きい。しかし、ローンによる消費の効用は、豊かに消費することではなくて、早く消費することだから、需要を前倒す効果があるものの、経済成長が後続してこない限りは持続可能性がなく、いわば自転車操業のようなものになる。

金融庁が行政目的に掲げるのは単なる経済成長ではなく、持続可能性のある経済成長である。経済の持続的成長のためには、経済成長が資本市場の活況をもたらし、それが資産形成を通じた資産増殖につながり、それが更に消費拡大による経済成長につながるという好循環の実現が必要なのであって、故に、資産形成が重視されるのである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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