欧州連合(EU)が加盟国内の不法アフガニスタン人の強制送還問題を協議するためにアフガンのイスラム過激派政権タリバンの代表5人にピザを発給したことが明らかになると、欧州議会内で23日、激しい批判の声が高まっている。例えば、欧州議会の社会民主党代表アンドレアス・シーダー議員は「タリバンをブリュッセルに受け入れることは、タリバン政権を公認することを意味する」として「重大な過ち」と批判している。

カフ・ヘラート鉄道の商業移転の拡大と運行開発でイラン側とアフガン側が協議、2026年6月23日、アフガニスタン政府公式サイトから
それに対し、欧州委員会の報道官は「23日のタリバン代表との会合はあくまでも技術レベルの協議だった」と指摘、不法滞在のアフガン人の本国送還に関するものであり、タリバン政府を公認するものではないと説明した。一方、タリバン側は「今回の訪問は歴史的であり、実りがあるものだった」と高く評価している。タリバンは目下、特に外交的孤立と難民問題の緩和を期待して、米国および欧州との関係改善を模索している。
欧州委員会は5月、オーストリアを含むEUおよびシェンゲン協定加盟国20カ国の要請を受けてタリバン代表を招待したことがある。ちなみに、オーストリア当局は以前からタリバンとの接触を維持している。主な連絡ルートは内務省と連邦移民・難民局(BFA)だ。オーストリアは長期の中断を経て、2025年にアフガニスタンへの強制送還を再開した。
今後の手続きについて協議するため、BFA代表とタリバン政権代表団はウィーンで会談している。社会民主党(SPO)と「緑の党」は当時、この会談を強く批判した。「緑の党」は「オーストリアがタリバンに門戸を開くことは極めて危険だ」と警告。内務省は、アフガニスタンへの犯罪者強制送還を実施するためには、アフガン政府とBFAとの協議と協力が必要だと説明し、会談を正当化した経緯がある。
外交関係が途絶えているため、アフガニスタンへの強制送還は近年事実上不可能となっている。加盟国は、重大な犯罪を犯し、安全保障上のリスクをもたらす可能性のある人物を送還する方法を模索してきた。欧州委員会は現在、この目的の実現に向けて取り組んでいるわけだ。
それに対して、人権団体もEUに対し、計画を断念するよう求めた。アムネスティ・インターナショナルは、「アフガニスタンは決して安全な帰還国とはみなせない。国連の様々な機関が繰り返し確認しているように、この国への強制送還は、送還される人々の命を危険にさらす」と警告を発している。
ちなみに、 欧州に殺到する移民・難民対策の一環として欧州連合(EU)の欧州委員会は昨年4月16日、難民申請手続きを迅速に処理するために「安全な出身国リスト」を作成した。同リストに掲載されている国としては、コソボ、バングラデシュ、コロンビア、エジプト、インド、モロッコ、チュニジアが入っている。上記のリストに掲載された国から難民申請があった場合、加盟国は迅速に審査して送還などの対応を判断できる。欧州委員会は加盟国からの要求に応じた対応と説明している。
興味深い点は、かつて軍事衝突が頻発し、戦争寸前までだったタリバンとイランの関係だ。スンニ派イスラム主義運動の代表を自称するタリバンと、シーア派の盟主イランの聖職者体制は今日、根深い宗派間の敵意を抑え、現実的な政治力と相互の必要性に基づいた関係構築に腐心してきたのだ。
中東、そして中央アジアと南アジア全域においては、宗教はしばしば修辞的に表現される一方で、意思決定は政治的利益によって左右される。2021年にタリバンが政権に復帰した際、イランは国境を完全に閉ざさなかった数少ない国の一つだった。テヘランはタリバン政権を正式に承認しないが、関係は断絶せずに維持してきた。
イランは、経済崩壊、国際的孤立、政治的不安定に直面するアフガニスタンにはリスクと機会の両方が存在することを理解し、排除ではなく関与を選択している。制裁、資産凍結、外交的孤立によって制約を受けたタリバンは、近隣諸国に頼らざるを得なくなった。長い国境を接し、燃料、電力、輸送ルート、そして地域における影響力を持つイランは、タリバンにとって実質的なパートナーとなってきているのだ。
最近の米国とイスラエルによるイランへの攻撃後、カブールとテヘランの関係は緊密化してきた。ワシントン、イスラエル、そしてアラブ世界の一部からの圧力に直面し、テヘランはタリバンとの協力関係を失うのを避けようとしてきた。イランとアフガニスタンは900キロメートル近くにわたる国境を接しており、難民流入、麻薬密輸、密輸、水資源紛争といった問題は、継続的な関与なしには解決不可能だ。「アフガニスタンはイランにとって良い市場であり、イランはアフガニスタンにとって良い物資供給源だ」という相互依存の関係が強くなってきた。
タリバンはイランが現政権を正式に承認することを期待している一方、テヘランは国家承認を交渉材料としてタリバンとの関係維持を模索しているわけだ。
<参考資料>
アフガニスタンにおけるタリバン政権の発足前後の政治的動向は、米軍の撤退に伴う親米政権の崩壊と、タリバンの急速な復権のプロセスに要約される。バイデン前米大統領が駐留米軍の完全撤退を表明し、2021年5月から本格的な撤退が始まった。20年間にわたり米国が支援してきたアフガニスタン合法政府(ガニ政権)は、長年の汚職や部族間の不和により国民の信頼を失っており、極めて脆弱な統治体制だった。 米軍の撤退が進むにつれ、タリバンは地方都市から急速に支配地域を拡大し、首都カブールに侵攻し、ガニ大統領が国外へ亡命したことで旧政権は事実上崩壊し、タリバンが権力を掌握した。そして2021年9月、タリバンは最高指導者ハイバトゥラー・アクンザダ師のもとで「アフガニスタン・イスラム首長国」の暫定政府を発足させた。
厳格なイスラム法の適用: 当初は融和姿勢を見せていたものの、次第に極端なイスラム法解釈に基づく統治を強化。特に女性に対して「中等・高等教育の禁止」「就労制限」「外出時の服装規定」など、人権を著しく抑圧する政策を次々と導入していった。国際社会の多くは女性抑圧政策などを理由にタリバン暫定政権を正当な政府として承認していない。海外資産の凍結や経済制裁の影響により、国内では物価高騰、失業、深刻な飢餓などの人道危機が現在も続いている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







コメント