ウィーンの日差しがテヘランより強い訳

「ウィーンで仕事をするようになってからは必ずサングラスを持参しているのよ」という。イランのテヘランでドイツ語を教えてきた女性が最近、ウィーン勤務となった。「テヘランでは暑くてもサングラスが必要ではなかったが、ウィーンでは太陽の日差しが眩しいからサングラスが必要だわ」という。

テヘラン FarzadFrames/iStock

気温ではウィーンよりテヘランの方が平均的に高いが、太陽の日差しはウィーンのように眩しくはないという。その違いについて「テヘランではスモックがあって日差しが抑えられるからではないかしら」と述べていた。イラン女性の話によると、「ウィーンではスモックがないので太陽の日差しが人間に直接あたる感じがするのよ」というわけだ。

ちなみに、テヘランは北側を高い山脈に囲まれた盆地のような地形をしており、排気ガスが溜まりやすい世界有数の大気汚染都市だ。ただし、発生する時期によって原因が異なる、スモックが最もひどいシーズンは11月から2月にかけて。6月は冬ほど街全体が真っ白なスモッグに包まれる日は多くはないが、日中の日差しが強い時間帯はオゾン濃度が高くなり、喉や目に刺激を感じることがあるという。

アラブニュースによると、テヘランの6月は日中の最高気温が31℃~35℃に達する本格的な夏であり、非常に乾燥していて雨はほとんど降らない。スモック(大気汚染)は、最も深刻な冬場に比べると6月は幾分和らぐという。

ところで、地理・気候のデータ を比較すると、実際にはテヘランのほうがウィーンよりも遥かに強い太陽光線が降り注いでいる。テヘランは北緯35度(日本の京都と同緯度)で、標高は約1,200m以上の高地だ。一方、ウィーンは北緯48度(北海道よりも北)で、標高は約170mの平地だ。太陽に近いテヘランのほうが、本来の紫外線(UV)の強さは格段に上だ。UVインデックス(紫外線指数)を見ると、夏のテヘランでは最高レベルの「11+(極めて強い)」に達する一方、ウィーンの場合、強くても「7~8(強い~非常に強い)」程度だ。

テヘランから来た女性 が「ウィーンの日差しが眩しい」と感じた理由について、人工知能(AI)に質問したところ、「イラン女性がウィーンのほうが日差しが強く、サングラスが必要と感じたのは、環境と文化の決定的な違いがあるのではないか」と、興味深い分析をしていた。

先ず、建物の色と街の反射率(アルベド効果)だ。ウイーンの場合、街並みが白や薄いベージュ、パステルカラーの歴史的建造物で統一されている。これが太陽光を鏡のように反射するため、街全体がレフ板のようになり、目に入る光の量が非常に多く眩しく感じる。一方、テヘランの場合、多くの建物が茶色いレンガや砂色のコンクリート、乾燥した土の色をしている。。これらの色は光を吸収しやすいため、地面や壁からの照り返し(眩しさ)がウィーンより抑えられるというのだ。

そして、欧州(ウィーン)では、色素の薄い目の人が多いこともあり、子供からお年寄りまで日常的にサングラスを着用する。また、カフェのテラス席など屋外で過ごす時間が長いため、サングラスが必須アイテムとなっている。一方、テヘランではファッションや宗教的な背景、あるいは日中の酷暑を避けて室内にこもる習慣から、日常的にサングラスをかける人が欧州ほど多くはない。すなわち、サングラスに対する文化的違いもあるというのだ。

AIは「科学的にはテヘランのほうが日差し(紫外線)は強いのが事実だが、ウィーンの白い街並みによる激しい照り返しと屋外中心のライフスタイルを経験したイラン女性が、『ウィーンのほうが目が眩むほど日差しが強く感じられ、サングラスが必要になった』」というのは、感覚として100%正しい」と結論を下していた。

ここ数日、ウィーンの気温は35度前後。ポルトガルやフランスの一部で44度を超えたというニュースが流れている。高齢者の間には死者も出ている。路上や建築現場で仕事をしている労働者にとって、仕事は命がけだ。政治家の間では猛暑対策のために外出禁止(ロックダウン)を施行すべきだ、という声が出ているほどだ。

主要局の看板ニュースは、連日トップニュースで猛暑の脅威を報じている。かつて画面を占拠していたウクライナやイランの戦火の記憶すら、この圧倒的な熱波にかき消されようとしている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント