リンチではしゃぎ、煽るのは「後ろ暗い人」である:河野真太郎氏の場合

執筆の邪魔もいい加減にしてほしいと思うのだが、いちど “やらかし癖” がついた人たちはどこまでも止まらない。そう、日本一の炎上言論人の集まりである「オープンレターズ」のことだ。

同レターは日本のキャンセルカルチャー、かつネットリンチの代名詞だが、その関係者が自らを棚に上げて「道徳を説き出した」として、再度着火する兆しがある。やれやれという他はない。

オープンレター総まとめ: Yes, Their Brains are OPENed|與那覇潤の論説Bistro
足かけ3年に及ぶ「オープンレター秘録」の連載が完結し、ぶじ書籍化も決まったわけだが、関心を持つ方が今後参照しやすいように、全論考を1か所にまとめたページを設けておく。 2021年に発生したオープンレター問題が「そもそもなにか」は、noteを...

2021年4月に鳴り物入りで登場し、1年後に逃亡したオープンレターの呼びかけ人である河野真太郎氏と、署名者の朱喜哲氏とが、ヘッダーのイベントをするのだそうだ。まず事実関係は、上下のリンクで確認されたい。

署名者検索 for オープンレター | #againstc
「オープンレター 女性差別的な文化を脱するために」への署名者を検索できるツール(このツールが名を騙られたかもしれない人,あるいはオープンレター署名者についてもっと知りたい人の手助けとなることを願って已まない)

これに対して「さすがにひどいんじゃないの?」と、朱氏と共著のある荒木優太氏が呼びかけている。ちなみにぼくは、荒木さんとは去年対談したし、朱さんとは一度だけ共演したことがある。

2026.6.26
「鍵アカで炎上」の経緯はこちら

こうした批判が寄せられるのも、朱氏が社会倫理を扱うアメリカ哲学の研究者だからだ。オープンレター問題の “第一人者” として、私は荒木氏の指摘が妥当だと思うが、それはお二人で論争すればいい話だから措いておく。

「正義」の反対は「別の正義」なのか 「屁理屈」の横行に抗う哲学者:朝日新聞
近ごろ世間ではやるもの、フェイクニュースに特殊詐欺、「公正」「正義」がさっぱり通じぬこの世の中、どうすりゃ渡っていけるのよ、とほほと途方に暮れてたところ、西の方にはいるらしい、「公正」「正義」を〝乗…

企業内哲学者と呼べるような人も最近増えつつあるんです。なぜビジネスの世界で哲学者が必要とされているのか? 巨大テック企業を筆頭に、倫理が差別化戦略、マーケティングの武器として使われ始めているのです。『私たちは高い倫理観を持っています。安心してデータを預けてください』と」

朱喜哲氏、2025.4.17
(強調は引用者)

本人も「企業内哲学者」である朱氏が、ふだんメディアでここまで言っている以上、社会の共生についてイベントで対話する相手を、低い倫理観で選ぶことなどありえない。それは自明だろう。

では、この度共演する「オープンレター呼びかけ人」の河野真太郎氏とは、どういう人か。

オープンレターを主導したのが、日本ではコロナ禍での自粛と連動して広まったトランスジェンダリズムの最過激派(TRA)だったことは、これまでも一次資料に基づき、論証している。河野氏も彼らと行動を共にしてきた。

オープンレター秘録② 「コロナの副作用」が日本のトランス問題を生んだ|與那覇潤の論説Bistro
連載の1回目で、私はかつて一世を風靡し、いまや「バカな学者」の代名詞となっているオープンレター(2021年4月)が、事実上はTRAの別動隊であることを、初期から把握していたと述べた。 TRA(Trans Rights Activists)と...

TRAの識者や活動家は「お前は女性の味方といいつつ、実は “トランス女性” を排除している!」といった分断をフェミニズムに持ち込み、意に沿わない相手を差別者呼ばわりしてきた。そのとき用いる蔑称がTERFだった。

オープンレターの約1年前、論文でこのTERFという語がもたらす問題を整理しただけで、「ならお前も差別者!」というバッシングに遭った千田有紀氏は先日、その真相を明らかにしている。そこに河野氏の名前が出てくる

で、私の論文が根拠なく叩かれたら、普通の研究者なら読んですぐめちゃくちゃ、意味不明でまったく私の論文を読めてもいないとわかる「ゆな」さんの私批判のblogを持ち上げて早々にバッシングに加わり逃亡。千田に原稿を依頼したのは誰だって犯人探しになったら困ると思ったんでしょう。
(中 略)
でまた、再び『現代思想』の「フェミニズム」特集で、座談会で私の悪口をいう

千田有紀氏、2026.5.29

要するに、自分が友人(大学院以来!)に寄稿を頼んでおきながら、掲載後に炎上するや手のひらを返し、むしろ叩く側に回り率先して殴ることで「あの人とボクは無関係です!」とPRしていたわけだ。ふつうに考えて、倫理観が低い

そもそもぼくは、かねてレターの署名者につき、

オープンレターは甦える: 予言されていたフジテレビ・キャンセル|與那覇潤の論説Bistro
中居正広氏のスキャンダルに端を発するキャンセルが、止まらない。 率直に「なんで?」と感じた人が多いと思うが、笑福亭鶴瓶氏が、スシローのCMとNHK(BS)の放送をキャンセルされた。想像される理由は事件の前に、疑惑のフジテレビ・プロデューサー...

事件を起こし炎上した呉座勇一氏の交遊関係者(SNSをフォローする学者)が、一斉に「私まで燃やさないでください!」と逃げ出し、むしろオープンレターに署名して炎上を加速し煽る側に回りましたからねぇ。

拙note、2025.2.1

と記して、その名簿を公表し「実証」してきたが、まさかそもそもの呼びかけ人にまで同じ動機の者がいるとは、想像の斜め下を行っていた。

この人の “言い逃げ癖” は大層なもので、ぼく自身も被害に遭ったことがある。前にも紹介したとおり、ひと言も呉座氏を擁護していない拙稿が炎上したとき、「呉座を殴ってる方々にご不評だぞ!」と便乗して叩きにきたのが河野氏だ。

河野氏の所属は専修大学だが、(唯一の)大会の開催場所が同校だった点から鑑みるに、オープンレターを自己正当化する “研究会” が1回こっきりに終わってその後トンズラしている件でも、最も責任を負うべき人物である。

フェミニズム "ブーム" の現在地: 1年前のあの研究会、覚えていますか?|與那覇潤の論説Bistro
たぶん誰も覚えてないと思うが、今年の5月10日は「現代フェミニズム研究会」の発足1周年にあたる。2025年の同日に、専修大学で第1回が開催されて、産声を上げたのである。 ぼくもむかし学者をしてたのでわかるが、開かれた大会で多人数が発表するこ...

ボスや仲間になんらかの “弱み” を握られている後ろ暗い人ほど、暴力沙汰の際に自らの攻撃性を発揮して忠誠心をアピールし、「ボクに怒りを向けないでください!」と振るまう例が多いことは、経験的によく知られている。

自分が密告されないために密告し、リンチされないためにリンチする事例は、昭和史上の思想団体でよく見られた。逆に、かつてそこに属したという “負い目” を持つ転向者ほど、手段を選ばず古巣を叩くのもよくある話だ。

共産党化する日本?: 誰でもキャンセルできる「無敵の論法」の正体|與那覇潤の論説Bistro
今月はTVなど人目を惹く業界でも、SNSでの失言で仕事をなくす例が続き、「キャンセルカルチャーの猛威」がようやく国民の肌感覚になったようだ。3年前から議論を提起していたこの問題の第一人者としては、実に感慨をもよおす夏であった。 「炎上」と「...

むろんそうした「低い倫理観」に基づく行動は、矮小な人格とエゴがもたらすもので、党派の左右を問わないし、なんらの哲学も必要としない。

たとえば世相を震撼させた令和のリンチ殺人は、まだ被告の半数しか判決が出ていないが、 “いくら殴ってもいい” と見なした誰かに暴力を振るって仲間意識を満たすやり方と同じことを、ネットリンチの形で見かけるのはいまや毎日だ。

「今の答えでいいの?」裁判長が他の質問さえぎり…北海道暴行死裁判:朝日新聞
北海道江別市の公園で2024年10月、大学生の長谷知哉さん(当時20)が集団で暴行され死亡した事件で、強盗致死などの罪で起訴された男女6人のうち、川村葉音(はおと)被告(21)ら3人の裁判員裁判の判…

そうした行為の “主犯格” と並んで「共に生きる」ことの倫理を語る哲学とは、いったいなにか?

その問いから逃げた先に、令和の “人文主義” なるものなどあり得るのか?

少なくとも、説明責任は求められよう。殴られた側は、殴った者がいたことを決して忘れないし、社会もまた忘れることがあってはならない。

2026.6.26
まさにその通りですね。

参考記事:

河野真太郎の『正義はどこへ行くのか』? : 北村紗衣のオープンレター仲間|年間読書人
書評:河野真太郎『正義はどこへ行くのか 映画・アニメで読み解く「ヒーロー」』(集英社新書) 著者の河野真太郎は「フェミニズム」関連のライトな評論書で知られる英文学者である。だが、「Wikipedia」を見るかぎりでは、積極的に「フェミニスト...
やはり、令和人文主義の正体は "キャンセルカルチャー2.0" だった。|與那覇潤の論説Bistro
まるで80年前の日本のような焼け野原に終わった「令和人文主義」の炎上だったが、"戦争の反省" と同様、追及を中途半端にしてはならない。そこにはこの数年間の、人文学をダメにした潮流が詰まっているからだ。 第一にコロナ以降の混乱では、「人文学は...

編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2026年6月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。

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