アルプスの小国オーストリアの第2都市グラーツで28日、市議会選挙の投開票が実施され、5年前の前回の選挙で第1党に大躍進して話題を呼んだ共産党(KPO)が得票率約35.8%で前回比で約7%増で与党の座を堅持した。

グラーツ市議会選挙でトップを維持した共産党のカール党首、オーストリア共産党公式サイトから
共産党政権が誕生する前まではグラーツ市(人口約30万人)を君臨してきた中道保守派の「国民党」は今回約25.2%で前回比で0.8ポイント微減で第2党。環境保護党の「緑の党」は約15.0%で前回比で2.4ポイント得票率を落とした。極右政党「自由党」は12.0%で1.4ポイント増、リベラル派党「ネオス」は約4.9%(0.5ポインド減)だった。今回の選挙で最悪の結果だったのは社会民主党で得票率約5.6%で前回比で3.9ポイント減と大きく票を失った。
オーストリアは現在、国民党、社民党、ネオスの3党から成る連立政権だ。そのストッカー政権の与党の一員である社民党が選挙の度に票を失ってきた。グラーツ市議会選はあくまでもローカルなレベルだが、連邦レベルへの影響も無視できず、バブラー社民党党首への批判の声が改めて高まることが予想される。なお、有権者数は225,883人で、投票率は53.4%(2021年の投票率は54%)だった。
話をKPOの大躍進に戻る。冷戦時代、東西両欧州の架け橋的な地位にあったオーストリアではソ連・東欧共産圏から200万人以上の亡命者が殺到してきた。国民は共産政権が如何に非人道的な政権であるかを思想ではなく、実生活を通じて肌で感じてきた。隣国の「ハンガリー動乱」(1956年)や「プラハの春」(1968年)を身近に目撃してきたオーストリア国民は共産党には警戒心が強い。だから、冷戦後、共産党が連邦レベルで議席を獲得するチャンスはこれまでなかった。唯一、例外はグラーツだ。同党は過去16年間、市議会で議席を獲得してきた、5年前のグラーツ市議会選で共産党出身の市長誕生は欧州全土に大きく報道された。
共産党に投票した有権者の動向分析によると、2021年の選挙でKPOに投票した有権者の59%が今回も同党に投票したほか、緑の党や社民党の支持層からも票を獲得した。しかし、KPOが新たに獲得した票の中で最も大きな割合(19%)を占めたのは、前回の選挙では投票しなかった人々だ。世論調査によると、カール市長の共産党は、他のどの政党よりもはるかに多くの選挙棄権者を動員している。
選挙ウオッチャーによるとまた、「有権者はKPOに投票したというより、筆頭候補者で現市長のエルケ・カール市長に票を投じたのだ」と分析している。カール党首は2013年以後、その政治活動が注目されてきた。同党の社会活動は良く知られ、勤勉、謙虚をモットーに、給料の一部を困窮者に献金するなど、救済活動を積極的に行ってきた。同党は弱者救済としてソーシャルカードや預金フォンドの設置などを主張してきた。
カール市長にとって、前回の選挙で市長の座に就き、5年後の選挙で再選できたということは、過去5年間の実績が有権者に評価されたことになるだけに、その政治的意味合いは大きい。
ただし、グラーツ市共産党の大躍進は他の州選挙、国政レベルの選挙までには影響を与えていない。共産党は前回の国民議会選挙(2024年9月29日実施)では得票率は2.39%に留まった。議席獲得に必要な「4%の壁」を超えることが出来なかった。
いずれにしても、オーストリア南部シュタイアーマルク州の州都グラーツの共産党の飛躍は国民が政治に何を期待しているかを再考させる機会ともなっている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年6月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







コメント