
years/iStock
令和8年5月、相模原市内の高校中退者ら複数人が闇バイト強盗殺人の疑いで逮捕された。強盗殺人は死刑か無期懲役である。少年がそんな重罪を犯すだけで衝撃的だが、その犯行の杜撰さ、また数百万円もらえると言われ信じて悪に走ったことを知り、さらに大きな衝撃を受けた。
闇バイトに誘い込まれる境界知能の若者たち
この少年らは、高校中退、ないしまともに登校していないとみられる状況、騙され方や犯行の杜撰さから、境界知能が疑われる。境界知能とは知能指数75から85、知的障害の手前で、一般的知能以下(知能指数の標準は100)を言う。人口の14%、7人に1人程度と考えられており、要は小・中学校のクラスに何人かいる、頭のあまり良くない子である。
問題は少年院入所者の3割が知的障害者か境界知能、知能指数100、つまり標準以下はなんと6割(女子に限ると8割)という。そのため境界知能は、少年犯罪の背景として近年注目されてきた。テストの点が悪くても親に養われていれば問題ないが、落第すれば留年する高校や、仕事がまともにできない職場では、社会適応できない。そして非行に誘い込まれる。
高額化する欲望とSNSの甘い誘い
一方でスマホやゲーム機など、欲求を満たす手段・道具は高度化し、高額化している。いやアベノミクスの大失敗で、異次元の円安と超物価高、ハンバーガーも缶ジュースもどんどん値上げ、金が要る、しかし稼げない。そこへSNSでチート級にでかく稼げると甘いささやき、闇バイトへの招待である。
境界知能は学業や仕事ができないだけではなく、社会生活に必要な判断やスキルの全てが足りなくなる。以前の職場近くのコンビニで、ダウン症と思われる大人がいつも2人で買い物に来ていたが、やっとこさっとこ、だった。今回の事件でも少年の1人を現場に置いて逃げ、すぐ逮捕、目立つ外車を使い、芋づる式に指示役まで捕まった。「頭が悪いやり口」である。
北海道で2件の、やはり少年少女による暴行殺人が裁判になっているが、これらも考えなしの粗暴な行為に、法廷証言もあやふやと報道されている。頭が悪い。まともに善悪の判断すらできない、まずいと思っても、ではどう収拾すればよいか分からない、結果として、強盗だけでなく居合わせた人や相手をオーバーキルしてしまう。知能が足りないと、そうなる。
境界知能を放置すれば貧困と犯罪につながる
さて、起きてしまったこと、やってしまったことは、司法に委ねるしかない。問題は、7人に1人もいる境界知能者をどうするか、特に少子化人口減社会で子どもたちをどう闇バイトから護るかである。
近年若い世代の収入格差やシングルマザー貧困が問題になっている。そして貧困は低学歴や不健康と関連しており、貧困の連鎖を起こすことが知られている。その背景に境界知能があることは、想像に難くない。
知能が低いから学歴が低くなり、学歴が低く、知能も低いから高収入、いや普通の仕事にも就けないから低収入。もしかすると人間関係もうまくいかない、それが離婚や仕事が続かない原因になり得る。低収入では本や習い事や塾、さらに旅行や芸術などの体験機会も得ることが難しく、遺伝的素因と言わずとも知的発達の機会を失う。
生物学の普遍的な法則に、パレートの法則がある。集団には必ず2割程度の不適格、不具合のある個体が生じる、というものだ。これは人間でも例外ではない。
現代社会生活に必要な知能という点で、知的障害約1%と精神障害約5%に境界知能14%を合わせると、ほぼ当てはまる。となれば社会や国は境界知能等であっても犯罪等に走らず、また能力の不足があってもそれなりに社会適応、社会生活、就労ができるよう、教育や福祉、職業訓練を整備する必要がある。
境界知能者を放置し犯罪者や生活保護受給者にしてしまうのか、教育訓練し労働力として自立させるか、である。
小中学校でこそ必要な闇バイト対策
今回の事件が示すように、危険なのは親と学校の保護が届きづらくなる中学卒業後である。言い換えれば境界知能、さらに闇バイト対策は、小中学校でなされる必要がある。
小学3年生にもなれば学業成績や日常生活の様子は、はっきり分かるから、境界知能が疑われたら知能検査をし、境界知能であれば重点的に指導できるようにするべきだ。知能に関わらず欲望や弱みにつけ込まれて闇バイト等の犯罪や非行に走る懸念はあるから、学年ごとに善悪道徳や犯罪に対する刑罰や社会的制裁、犯罪者の手口について全体指導を行い、地域や近隣でもし事件があれば、その都度注意を促すべきだ。
これは通常の教師の指導の範疇を超えるが、教育DXと言うなら、Webセミナーで警察や小児精神科の専門家の指導コンテンツを整備すればよい。道徳教育の延長線上に位置づけることは、十分可能だろう。
SNS規制と福祉的支援は社会防衛である
またSNSが闇バイトへの入り口になり、いじめにも悪用されるなら、世界各国や一部自治体のように、未成年のSNS利用規制条例や法制定もなすべきだ。
筆者は医療現場に30余年、保健師実働55,000人の中でも臨床勤務(数%未満)の貴重な立場にいて、言葉も話せない重度の知的障害者でもスマホで動画を見たり、いじったりするのを見てきている。しかし、いじれる・使えることが、安全に有意義に活用できることとは限らない。
境界知能者等、犯罪や悪から自分を護る知恵を授けられていない人が、社会に確実に2割いる。これを助け、守り、導くことは、文明国家・社会の福祉的義務であり、犯罪抑止、社会防衛として重要だ。
【参考】
- 強盗殺人に関与か、神奈川在住の16歳少年を新たに逮捕 栃木県警:朝日新聞
- 栃木強盗殺人巡り7人目逮捕の18歳、2番目逮捕の少年に川崎の少年を紹介容疑…2人とは知人関係 読売新聞
- 栃木強盗殺人、実行役の高校生「数百万円の報酬もらえる予定だった」…実際は受け取れなかったか 読売新聞
- 平成17年版 犯罪白書 (少年院)新入院者の特徴
- 少年院在院少年の特質に関する研究両年齢層ごとの比較
- 近年の少年非行 文部科学省資料
- 「助けの求め方が分からない」国内最大の少年院に密着 年々増加する「境界知能」の非行少年たち TBS NEWS DIG
- 罪の意識なく非行繰り返した19歳「人の心の痛みとかわかんないです」…IQは70台 難しい”境界知能”少年の矯正教育(TBS NEWS DIG Powered by JNN)
- 「小学生の問題だから簡単だよ」は禁句…少年院の教師が「これは算数ではなく数学」と強調するワケ
- ケーキの切れない非行少年たち
- 相模原市、中学生に「犯罪防止教育」実施へ 栃木強殺事件受け 毎日新聞
- 相模原市教委、闇バイト抑止へ教材作成 栃木強殺事件で生徒逮捕受け 神奈川新聞







コメント