映画「エタニティ」が教えてくれた人生の幸福

出口里佐です。

旅先へ向かう飛行機の中では、普段なら観ないような映画を選ぶことがあります。今回、フランクフルトへ向かうJAL便で、もう1本、何気なく選んだのが『エタニティ』でした。

舞台は死後の世界。主人公の女性は、人生を共に歩んだ夫と、若くして戦死した最初の夫に再会します。そして、「永遠を誰と過ごすのか」という究極の選択を迫られるのです。

設定だけ聞けばファンタジーですが、観終わった後に残るのは、「人生とは何か」という重い問いでした。

私は、この映画を観ながら、一つのことに気づきました。

人は長い年月を会わずにいると、その人自身ではなく、「記憶の中のその人」を愛するようになるのではないか、ということです。

若くして亡くなった最初の夫は、主人公の中で永遠に若いままです。二人で家庭を築くことも、子育てをすることもなく、恋の最も美しい時間だけが切り取られています。

もちろん、67年間も待ち続けてくれたという設定には胸を打たれます。しかし同時に、「少し重いかもしれない」と感じたのも正直なところでした。

それに対して、人生を共に歩んだ夫との関係は違います。

子どもを育て、孫や曾孫に囲まれ、喜びも悲しみも、何気ない日常も分かち合ってきた65年間があります。

毎日がドラマだったわけではありません。時には喧嘩もし、退屈な日もあったでしょう。それでも離れることなく歩んできた年月そのものが、二人の愛を形づくっています。

映画の終盤、主人公は危険を承知で、長年連れ添った夫のもとへ向かう決断をします。

その場面を見ながら、彼女が選んだのは夫だけではなく、「その夫と生きてきた自分の人生」そのものだったのだと思いました。

もし、この映画を観た人が皆、同じ選択をするでしょうか。

おそらく答えは人それぞれです。

けれど、主人公が迷いながらも最後に選んだ道を見て、私は「この女性は、本当に幸福な人生を送ってきたのだな」と感じました。

人は人生の終わりに、「もう一度この人と生きたい」と思える相手がいることほど幸せなことはないのかもしれません。

映画は恋愛を描いているようでいて、実は「あなたは自分の人生を肯定できますか」と問いかけている作品でした。

ヨーロッパへ向かう機内で観た一本の映画が、旅の始まりに、人生について静かに考える時間を与えてくれました。

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