日本は永遠に「デフレ脱却」できないのか?

7月27日の記者会見で、高市早苗首相は日本経済の現状について、初めてインフレだと認めた。「経済学的に物価上昇それ自体をインフレと呼ぶのであれば、今はインフレの状況にあると思います」と述べたのだ。

「消費者物価は基調として上昇し、GDPデフレーターも上昇しているため、物価が持続的に下落するという意味でのデフレの状況ではない」と説明したが、「デフレ脱却」はしていないという。

物価は上がっているが、デフレ脱却していない?

足元の統計を見れば、日本がデフレ状態にないことは明らかだ。2026年6月の全国消費者物価指数は、総合で前年同月比1.7%上昇、生鮮食品を除く総合で1.6%上昇、生鮮食品とエネルギーを除く総合でも1.7%上昇した。物価は一時的に上がったのではなく、幅広い品目で前年を上回っている。

2025年度のGDPデフレーターも前年比3.3%上昇し、企業物価指数に至っては7.1%である。賃金面でも変化が見られる。厚生労働省の毎月勤労統計では、2026年に入って実質賃金が前年同月比でプラスを維持しており、5月もプラスとなった。「賃金が下がり、物価も下がる」というデフレスパイラルとは逆方向に動いている。

しかし政府はデフレ脱却を、「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」と定義している。つまり将来も二度とデフレに戻らないと保証できなければ、デフレ脱却とは呼ばないのだ。

「二度と戻らない」は証明できない

世界的な景気後退、原油価格の暴落、金融危機、大規模災害、感染症の流行などが起きれば、消費者物価が一時的にマイナスになる可能性はいつでもあるが、将来のあらゆるリスクを排除しないと宣言しないというなら、デフレ脱却宣言は永遠に出せない。

日銀はすでに植田総裁が国会で「インフレだ」と認めている。問題は基調的インフレ率が物価安定目標の2%に達しているかどうかで、インフレであることを否定する経済学者はいない。

「デフレ脱却宣言」は、法的な効果を持つものではない。政府が経済情勢について公式見解を示す政治的な儀式にすぎない。問題は宣言の有無ではなく、政府が現状に合った政策を採っているかどうかである。

インフレの火に油を注ぐ「高圧経済」

高市首相は「行き過ぎた緊縮志向」という言葉を今回も使った。これは緊縮財政ではなく、民間も緊縮的で需要不足だという意味だが、統計的には間違いである。内閣府が推計した2026年1~3月期の需給ギャップはプラス0.5%となった。

需要超過のとき「成長投資」をしても、GDPは増えない。インフレで名目成長率が上がるだけだ。高市氏は、この点を一貫して誤解している。これはMMTの会田卓司氏が提唱する「高圧経済」論だが、バイデン政権が「インフレ抑制法」(IRA)と称してやった財政バラマキで、アメリカは大インフレになった。

インフレ抑制法がインフレの火に油を注いだ

IRAについては経済学者がその効果を検証したが、供給力の増加より物価上昇のほうが速く、物価を調整するために金利が上昇して供給力は下がったと評価されている。政府支出を増やせば名目GDPは増えるが、潜在成長率は上がらないのだ。

高市首相はこれを勘違いしているが、長期の潜在成長率は生産性を上げないと増えない。この短期と長期の混同が、高市政権の一貫した欠陥である。MMTは不完全雇用の理論であり、完全雇用のとき拡張的な財政政策は、インフレ・円安の火に油を注ぐだけだ。今の高市政権は、それをまさに証明している。

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