韓国株式市場の崩壊は半導体バブルの終わりを告げる「炭鉱のカナリア」

韓国総合株価指数(KOSPI)は7月28日15時12分時点で5996.50となり、わずか1カ月で28.57%下落した。28日の韓国市場では、KOSPIが一時10%前後急落し、プログラム売買を停止する「サイドカー」が発動された。サムスン電子とSKハイニックスがそろって10%前後下落し、市場全体を押し下げた。(Reuters)

これは韓国固有の株式バブルが崩れただけなのか。それとも、世界的なAIバブルの終わりを知らせる「炭鉱のカナリア」なのだろうか。

韓国株は「AI相場の凝縮版」だった

今回の暴落を理解するには、韓国株式市場が普通の市場ではなくなっていたことを押さえる必要がある。KOSPIは、サムスン電子とSKハイニックスという半導体大手2社への依存度が極端に高い。両社だけで指数の4割から過半を占める。つまりKOSPIは、韓国経済全体を映す指数というより、AI半導体指数に近づいていた。

AIデータセンターの建設ラッシュによって、HBM(広帯域メモリ)やDRAMの価格が上昇し、SKハイニックスなどの利益は急拡大した。投資家はこの成長が何年も続くと考え、半導体株を買い上げた。

しかし市場はそこで止まらなかった。2026年5月には、サムスン電子やSKハイニックスの値動きを増幅させる個別株レバレッジETFが韓国市場に登場した。これらの商品は一時、KOSPIの売買代金の約2割を占めた。上昇局面では株価をさらに押し上げるが、下落局面では機械的な売りを誘発し、暴落を加速させる。(Barron’s)

韓国の個人投資家による信用取引残高も、6月下旬には過去最高に近い29兆8000億ウォンに達した。上昇相場を前提に借金で株を買った投資家が、値下がりによって追証と強制売却に追い込まれている。(Reuters)

要するに、韓国株は「AI」「半導体」「個人投資家」「レバレッジ」という、相場を不安定にする要素をすべて詰め込んだ市場だったのだ

中国半導体という新たな脅威

今回の下落には、単なる利益確定売りでは済まない事情もある。中国のメモリー半導体大手、長鑫存儲技術(CXMT)が株式市場に上場し、初日に株価が急騰した。

中国企業がDRAMや半導体製造装置で急速に技術力を高めているとの見方も広がり、サムスン電子やSKハイニックスが享受してきた高い利益率が維持できないのではないかという懸念が浮上した。(Reuters)

これまでAI半導体市場では、「需要が供給を永久に上回る」という前提が株価に織り込まれていた。しかし、中国企業が生産能力を拡大すれば、メモリー半導体は再び供給過剰に陥る可能性がある。半導体はもともと、需要不足と設備過剰を繰り返す典型的な循環産業だ。AIという新しい名前が付いても、その構造が消えたわけではない。

AI投資の循環取引にも疑問符

もう一つの問題は、AIデータセンターへの巨額投資が本当に採算に合うのかという疑問である。半導体企業がAI企業に出資し、AI企業がその資金で半導体を購入する。クラウド企業がデータセンターを建設し、その設備をAI企業に貸し出す。さらに半導体企業が、AI企業のデータセンター契約を保証する。

こうした取引が増えれば、見かけ上は半導体需要も売上高も伸びる。しかし、最終的にAIサービスから十分な現金収入が生まれなければ、業界内で循環取引しているだけになる。

Nvidiaが、OpenAI向けの巨大データセンター計画に約2500億ドル規模の信用補完を検討しているとの報道も、投資家の警戒を強めた。半導体メーカーが自ら顧客の資金調達を支えなければならないとすれば、需要の自立性に疑問が生じるからだ。

ドットコムバブル末期にも、通信機器メーカーが通信会社に融資し、その資金で自社製品を買わせる「ベンダーファイナンス」が広がった。売上高は増えているように見えても、最終需要が伴わなければ、取引は長続きしない。

暴落は韓国だけで終わるのか

韓国市場が特に激しく下落したのは、半導体株への集中とレバレッジETFという特殊事情があるからだ。

したがって、KOSPIが3割下落したからといって、ただちに世界金融危機が始まるとは限らない。韓国株は上昇局面でも世界の主要市場を大きく上回っていたため、その反動が大きくなっている面もある。

しかし、今回の売りは韓国だけにとどまっていない。日本の日経平均は28日に4%を超えて下落し、キオクシアホールディングスは大幅安となった。台湾株も約4%下落し、米国でもNvidiaなどAI関連株が売られている。(フィナンシャル・タイムズ)

つまり、韓国固有の投機相場が崩れたというより、世界共通の「AIならどれほど高くても買ってよい」という前提が揺らいでいる。

カナリアはすでに鳴いている

現段階では、韓国株の暴落をリーマン・ショックの再来と呼ぶのは早い。株価が暴落することと、銀行や企業の資金繰りが止まり、金融システム全体が機能不全に陥ることは別の問題だ。今後は韓国ウォン、社債市場、金融機関の信用状況、データセンター向け融資などに混乱が広がるかを見極める必要がある。

ただ炭鉱のカナリアは、炭鉱そのものが崩壊してから鳴くのではない。目に見えない異変を、最初に知らせる存在である。

韓国株式市場が示しているのは、AI需要が消滅したということではない。AI投資の成長率を過大評価し、半導体株に資金を集中させ、さらに借金とレバレッジ商品で株価を押し上げた市場は、わずかな疑念だけでも崩壊するという事実だ。

韓国のカナリアは、すでに激しく鳴いている。問題は、米国や日本の投資家がその警告を聞こうとするかどうかである。

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