
首相官邸HPより
総選挙前に野党の減税ポピュリズムにつられて、高市首相が突然「消費税の減税は私の悲願だった」と口走り、引っ込みがつかなくなりました。自民党内の慎重論を無視して、高市氏は「食料品の消費税率を27年4月から現行の8%から1%に引き下げ、中低所得層向け給付を加え、実質ゼロにする。2年後に税率をもとに戻す」と表明しました。
「私の悲願」だったら、2年間限定ではなく、恒久化し、その他の商品・サービスの税率を引き上げる。それなら「悲願」の実現にはなる。「2年後には私が責任を持って税率をもとに戻す」ことと「悲願」の落差はあまりにも大きい。首相たる者は言葉の重みを意識していなければなりません。
1ドル=165円寸前にまで進んだ円安に対し、政府は為替介入したに違いなく、157円まで円高に反転しました。消費税減税が円安を引き起こすとみて、介入の準備をしていたと考えます。その効果は一瞬で、31日には160円の円安に戻ってしまいました。高市氏の財政拡張が円安の基本的な原因ですから、為替介入の効果が一時的なのは当然です。
ポピュリズム以前のアマチュア政治
高市政治はポピュリズムというより、それ以前の「アマチュア政治」としかいいようがありません。主要閣僚の経験もなく、首相になってしまい、しかもプロフェッショナル(高い専門性を持った識者、官僚)を押しのけ、「何事も自分が判断する」というスタイルで通しています。今回の消費税減税など、度重なる間違った政治の原因はここにあります。
震度7の熊本震災の発生は28日午後4時半でした。その日の午前、高市首相は「お盆を控えて夏の危機管理に万全を期す」よう閣僚に指示しました。恐らく水の事故防止などを想定していたのでしょう。わずか数時間後の大震災の発生です。次元の異なる危機への対応こそ必要なのです。
「震災発生→財政出動→市場の反応」こそ緊急調査を
2010年以降だけでも、震度7は、東日本大震災(11年3月)、熊本地震(16年4月)、北海道地震(18年9月)、能登半島地震(24年1月)、今回の熊本地震(26年7月)と5回を数えます。地震が多発する周期に入っている。
高市首相は緊急調査チームの派遣を直ちに決めました。今回の熊本震災は、イオンモールの爆発事故、道路・橋・港湾などインフラの破損、サプライチェーンの寸断など、地域一帯の経済、産業、社会的被害の規模は大きい。首都直下型、東南海など「30年以内に起きる確率は70%」という大震災のことを思えば、さらに影響は大きい。そのことに気が付いてほしかった。
緊急調査をする対象が目先のことばかりになっている。震災発生、財政支援、市場の反応(為替、金利、国債の格付け)こそ調査、想定し、現在の金融財政政策に反映させておくべきなのです。
消費税減税の撤回の機会を逃した
私はその瞬間、「地震発生に鑑み、消費税減税の実施は様子を見る」という決断を高市首相がすることを期待しました。無理な期待でした。「災害多発国であるため、平時にこそ財政規律を徹底しておく」という基本を考えることを首相はしない。物価上昇が続き、インフレ景気が起きているのに、金利は据え置き、財政は膨張させるという真逆のことをやっています。
28年夏に参院選、30年2月に衆院の満期終了という政治の山が待ち構えているのに、「2年後には私が責任を持って確実に消費税率をもとに戻す」ことはできるのだろうか。税率を戻そうとすれば、駆け込み需要、買い急ぎが増える。税率が戻った後は、その反動で景気は下降する。世界的な高インフレの時代に入っている時に、国民生活に苦痛を与える「税率を戻す=増税する」ことができるのだろうか。
まして高市氏が2年後も首相・自民党総裁であるかどうかは分からない。その時の首相らに責任を持って、税率引き上げを説得して歩いているのでしょうか。それが「責任をもって」の意味です。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年7月31日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。







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