
高市首相 首相官邸HPより
日本の政府総債務残高対GDP比率は、この5年間で大幅に低下した。コロナ禍ピーク だった2020年に258.4%だったのが、2025年には229.6%と、29%近く低下したのだ。
債務残高/GDP比が急低下したのは、分母に来る名目GDPが2020年度には554兆円だったのが2025年度には670兆円と、約116兆円も増加したからだ(年平均3.6%増)。
名目GDPが伸びると一緒に伸びるのが税収だ。インフレになると、企業の売上は押し上げられて消費税が増える。企業業績が伸びれば法人税も増える。個人の給料が物価上昇に追いつかなくても賃上げになれば所得税も増える。
こうして、2020年度には60.8兆円 だった税収は、2025年度には84.2兆円と、約23.4兆円も増加した。という訳で、この5年間、税収は名目GDPと一緒に順調に伸びてきた(グラフ参照)。

GDPや税収が大きく伸びたのは慶賀すべきと言いたいが、問題は中身だ。
名目GDPが伸びた要因を分解すると、年平均3.6%の成長のうち3.0%分が「物価上昇(GDPデフレーター)」によるもので、インフレの貢献度が約8割と圧倒的に大きいのだそうだ。逆に言うと、実質成長による貢献は約2割でしかなかった(チャッピー君の教示)。
単純に考えると、この5年間の税収増23.4兆円の8割、18.7兆円(年平均3.7兆円)はインフレによる税収増だったということになる。これが世に言う「インフレ税」、「インフレは(見えない)大衆増税を連れてくる」のだ。
「債務残高/GDP比を財政目標にする」という意味は、「国・地方の総債務残高対GDP比率の安定的低下を中核に位置付ける」(骨太の方針)だそうだ。
言外に「過去5年で比率が29%近くも減少したのは減りすぎ(緊縮財政)」と考えているようにも読める。
では、仮に「2020年度の債務残高/GDP比258.4%を2025年度まで10%低下させれば『安定的に低下させた』と言える」という考えを採ったら、債務残高はどこまで増やせた計算になるだろうか。
2020年の債務残高=554.0兆円(名目GDP)× 2.584 =1,431.5兆円
2025年の許容債務残高=670.0兆円(名目GDP)×(2.584ー0.1)=1,664.3兆円
差し引き債務残高を5年間で約233兆円増やした(年平均46兆円増やした、或いは毎年15兆円ずつ逓増させていった)としても、「債務残高/GDP比は安定的に低下させた」と言えた計算だ。
今後の物価上昇率はどうなるか。消費者物価は過去5年間で12%と大きく上昇した。今後も同じくらい上昇するとは限らないが、「沈静化」する気もしない。名目GDPはインフレによって、それなりに増えていくだろう。
こうして素人なりに「債務残高/GDP比率を財政目標にする」政府方針の含意を探ると、受ける印象は「財政節度は相当ユルユルになって(赤字)国債の発行も更に加速しそう」ということだ。
今後の財政支出増要因は、370兆円の投資計画(17分野・年10兆円の投資枠)、防衛費の大幅増額(GDP比3%〜3.5%へ)、物価・賃金上昇の「予算への自動反映」方針、社会保障関係費の増大、国債利払い費の増大…と目白押しで、私なんか頭がクラクラしそうだ。
高市総理がそのうえ飲食料品の消費税率を2年間引き下げを断行するのは、リフレ派の吹き込みで「財源はこんなにある」と自信を持っているからではないか。でも、インフレで名目GDPが増える陰では、大衆増税が一緒に付いてくるのです。(「それは減税すれば良い?」ヤメテー)
高市政権の「責任ある積極財政」を吟味するうえでは、成長戦略との兼ね合い(今後成長率がどれくらい伸ばせるか)を考えなければいけないが、それは時間があればまた考えることにする。
以上は素人考えなので、大きな誤りがあればご教示ください。
編集部より:この記事は現代中国研究家の津上俊哉氏のnote 2026年7月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は津上俊哉氏のnoteをご覧ください。







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