黒坂岳央です。
「WindowsユーザーはホテルのWi-Fiは使うな」。マイクロソフトがそんな緊急警告を発したとForbesが記事を掲載した。
ロシアのサイバー攻撃者によるものとされる新たなハッキングの脅威は、「世界中の旅行者を標的にしてマルウェアを送り込み、認証情報を窃取する」という
→Windowsユーザーは「ホテルのWi-Fiは使うな」マイクロソフトが緊急警告 https://t.co/qea0wDubxh
— Forbes JAPAN (@forbesjapan) August 2, 2026
筆者は以前、ホテルの無料Wi-Fiは使うなという記事を書いたことがある。一方で、少し前には日経新聞から「公衆Wi-Fiを恐れるのは時代遅れ」という趣旨の記事も出ていた。
時代遅れのセキュリティー神話「信じないように」、専門家が呼びかけhttps://t.co/JKN1Ait1DX
「公衆Wi-Fiは避けるべき」「パスワードは定期的に変更すべき」――。こうした6種類の通説を専門家らが公開書簡で否定。あなたはいくつ信じているでしょうか。
2026年1月 #読まれた記事
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) May 2, 2026
マイクロソフトは危ないといい、日経は大丈夫という。この二つの主張は一見矛盾しているように見えるが、実は対象にしている攻撃の種類がまったく違う。今回マイクロソフトが警告した攻撃を理解すれば、なぜ両方とも正しいのかがわかる。
結局、ホテルWi-Fiは使っていいのか?悪いのか?ほぼ毎月で仕事や旅行でホテルに泊まってネットを使う筆者の見解を述べたい。

何が良くて何がダメか
日経が指摘した「時代遅れ」の対象は、Wi-Fi上でパケットを盗聴してパスワードを抜き取るという昔ながらの攻撃だ。これは今もHTTPSで大幅に防げるようになった。同じWi-Fiに繋いだだけで通信内容が丸見えになる時代はとうに終わった。ここが日経の言う「気にするのは時代遅れ」という根拠だ。
一方で今回マイクロソフトが警告したのは、まったく別のレイヤーの攻撃だ。ロシア系ハッカー集団がホテルのネットワークやキャプティブポータルを侵害している。利用者がWi-Fiに繋いだ瞬間、偽のMicrosoftログイン画面やWindows Updateの画面が表示され、それを信じて操作してしまうと認証情報やマルウェアを奪われる。
これは盗聴ではなくフィッシングであり、暗号化技術では一切防げない。たとえVPNでも今回の攻撃の本丸であるフィッシングは防げない。攻撃者が狙っているのは通信内容ではなく、利用者自身の判断ミスだからだ。したがってやっていいこととダメなことは以下のように分かれる。
VPNが有効なのは通信の盗聴や改ざんに対してであり、今回の攻撃の本丸であるフィッシングには無力だ。攻撃者が用意した偽のログイン画面に、利用者自身が正規のIDとパスワードを入力してしまえば、暗号化された通信であろうがなかろうが関係ない。
デバイス認証コードを承認してしまえば、攻撃者はまさにその瞬間に正規のトークンを手に入れる。VPNのトンネルの中を正規の認証情報が流れていくだけの話だ。
では結局、何をやってよくて何をやっていいことは動画視聴、ニュース閲覧、SNSの読み込み、通常のWeb検索だ。これらは通信の中身を覗かれる話ではなく、暗号化で守られている。
一方でやってはいけないことはホテルのWi-Fiに繋いだ直後に表示される「サインインしてください」「アップデートが必要です」「コードを入力してください」といった指示に従うことである。証券口座や暗号資産取引所へのログイン、パスワード変更、法人向けMicrosoft 365のデバイスコード認証もここに含まれる。
つまり「Wi-Fiを使うかどうか」ではなく「Wi-Fi経由で表示された指示に従うかどうか」が生死を分ける。
結局、ホテルの無料Wi-Fiは使わない方が良い
技術的な対策を並べ立てるより、答えはシンプルだ。ホテルのWi-Fiを一切使わず、モバイル通信を使う。PCを使う人ならテザリングだ。
スマホのモバイル通信でインターネットを使う、これだけでこれだけでPCがホテルのネットワークに直接晒されるほぼ排除できる。キャリア回線を経由している限り、ホテル側のキャプティブポータルという攻撃の起点そのものが存在しなくなるからだ。
どうしても電波状況が悪くテザリングが機能しない場合は、iPhoneをWi-Fiに繋ぎ、そこからPCへテザリングする方法がある。iPhoneはサンドボックス構造でアプリ間の通信が制限されており、PCを直接繋ぐより攻撃面は小さい。これは以前の記事でも紹介したとおりだ。
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格式のあるホテルだから安全、という思い込みには根拠がない。ネットワークの設計とブランドの格は無関係であり、5つ星ホテルでも脆弱な構成は普通に存在する。今回の攻撃の標的も、
企業の役員や出張族、仕事のデータや証券口座を持つ層が中心と見られている。逆に言えば、守るべき資産が大きい人間ほど、対策を怠る余裕はない。
今回のマイクロソフトの呼びかけは、狙われているのは回線ではなく、利用者の判断だという一点を理解しているかどうかが、今回の話の本質である。
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「Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)






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