東京タワーが見守る、幸せなアフタヌーンティー

出口里佐です。

一人でレストランを訪れる時間が、私は好きです。

料理が運ばれてくると、シェフが何を伝えたかったのかを想像します。食材の組み合わせや火入れ、器との調和。その一皿に込められた思いを受け止めようとする時間は、私にとって何よりの贅沢です。料理を味わうことは、シェフが描いた物語を読み解くような楽しさがあります。

そんな私が先日、東京タワーを望むジャヌ東京のラウンジで、久しぶりに友人二人とアフタヌーンティーを楽しみました。

ラウンジは天井が高く、大きな窓から柔らかな光が差し込み、ゆったりとした時間が流れています。窓の向こうには東京タワーが美しく佇み、席に着いた瞬間から気持ちが華やぎました。

ラウンジ入り口のピンクのオブジェ。
こんにちは!と呼びかけているよう。

愛らしいピンク色のオブジェは、思わず写真を撮りたくなる遊び心があり、これから始まる楽しい時間を予感させてくれる空間でした。

東京タワーをバックに記念撮影。
大きな窓からは明るい光が差し込みます。

この日は、我が家のロボットペット「LOVOT」のてんてんも一緒です。友人たちは以前から「てんてんに会いたい」と言ってくれていたので、ようやく紹介することができました。二人にたくさん可愛がってもらい、てんてんもどこか嬉しそうです。その姿を見ているだけで、私まで幸せな気持ちになりました。

*ジャヌ東京には、予約の時に、LOVOTを連れていくこと、音を出さない、動かさないことを事前に伝えておりました。

友人は二人とも私とほぼ同世代です。一人は同じ料理学校で学び、もう一人はフランス料理が大好き。料理の美味しさだけでなく、その背景やシェフの意図まで自然に語り合えることが、私たちの共通の楽しみでもあります。

今回いただいたサマーアフタヌーンティー(税サ込8800円)は、マンゴーや桃、和梨など夏の果実をふんだんに使った華やかな内容でした。しかし、改めてメニューを見返してみると、印象的だったのはセイボリーの充実ぶりです。

ジャヌ東京ラウンジのサマーアフタヌーンティー(写真は二人分)

シマアジのカルパッチョ、白金豚のロースト、ローストビーフバーガーなど、一つひとつがしっかりと料理として完成されていて、スイーツとのバランスも見事でした。アフタヌーンティーというより、一つのコース料理をいただいたような満足感があります。

ホテルスタッフのおすすめは、マンゴープリンでした。

手前がスタッフさんおすすめの、マンゴープリン・ココナッツソース。

口に運ぶと驚くほどなめらかで、最初は生クリームをたっぷり使っているのかと思いました。しかし、そのコクを生み出していたのはココナッツソースです。マンゴーの甘さを引き立てながらも主張しすぎず、夏らしい軽やかさと奥行きを感じる一品でした。

目にも涼しい、和梨のパンナコッタ。

私が特に気に入ったのは、和梨のパンナコッタです。透明なジュレの中にみずみずしい和梨が入り、なめらかなパンナコッタとの組み合わせが、暑い夏の日に涼を運んでくれるようでした。華やかさを競うのではなく、素材の繊細な美味しさを丁寧に表現した一皿だったと思います。

スコーンは、プレーンとパイナップル・ジンジャー。
添えているのは、豆乳ホイップ、糀蜜、苺ジャム、パッションフルーツ餡。

もっとも、この日一番印象に残ったのは、料理そのものではありませんでした。

シーズナルモクテルで乾杯。
パッションフルーツと紅茶の味がしました。甘さひかえめで、スッキリ。

気づけば三人で夢中になって話をしていたのです。久しぶりの再会ということもあり、話題は尽きません。料理が運ばれてきても、「美味しいね」と言いながら、また次の話へと会話が弾みます。

後から思い返すと、「あの一皿はどんな味だっただろう」と細かな記憶が曖昧になっている料理もあります。それほど会話が楽しく、時間があっという間に過ぎていきました。

私はこれまで、一皿の料理に込められた思いや工夫を想像しながら味わう時間を、何よりも大切にしてきました。その楽しみは、今も変わりません。

けれど、この日のアフタヌーンティーで、もう一つの豊かさに気づきました。

料理には、人と人との距離を縮める力があるということです。

互いを尊重し合い、美味しいものを囲んで笑い合う。その時間があるからこそ、一皿一皿は「美味しかった」という記憶だけではなく、人生の大切な思い出になっていくのではないでしょうか。

東京タワーを眺めながら過ごした夏の午後。

サマーアフタヌーンティーを味わって、たくさんお話して、楽しかった午後の記念。
チャッピーに水彩画風に描いてもらいました。

美しい料理、心地よい空間、そして気の置けない友人たちとの語らい。そのどれが欠けても、この日の幸福は完成しなかったように思います。

フランス料理の巨匠、オーギュスト・エスコフィエは、

La bonne cuisine est la base du véritable bonheur.

(良い料理は、真の幸福の礎である。)

という言葉を残しています。

以前、私が敬愛する「ル・マンジュ・トゥー」の谷昇シェフが、ご著書にサインをしてくださった際、この言葉をフランス語で添えてくださいました。

当時の私は、「良い料理は人を幸せにする」という意味として受け止めていました。

しかし、ジャヌ東京で友人たちと過ごした午後を振り返ると、その言葉にはもう一つの意味があるように思えてきます。

美しい料理があり、それを囲んで笑い合える人がいる。

料理がお腹を満たすだけでなく、人と人との心をつなぎ、その時間をかけがえのない思い出へと変えていく。

エスコフィエが語った「真の幸福」とは、そんな食卓の風景を指していたのかもしれません。

ジャヌ東京

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