
結論から書く。あなたが毎朝飲んでいるその黄色いカプセル、原料は石油かもしれません。
いや、脅しじゃなくて。ほんとに。
先週、Xで「サプリ 意味ない」がなんかトレンドっぽく流れてきて、リプ欄が地獄だった。「効かないのは飲み方が悪い」「エビデンスがー」。もういいよ。効く効かないの前に、あなたが飲んでるそれ、何から作られてるか見た?という話をしたい。
『飲んではいけないサプリメント 飲んでもいいサプリメント』(石黒 伸 著)三笠書房
外来で週に3回は聞かれる。「先生、これ飲んだ方がいいですか」。3回。多い週は5回。答えはいつも同じで、「何を飲むかより、どんなものを、どれだけ飲むかですよ」。だいたい、ぽかんとされる。だろうね。求められてるのは「はい」か「いいえ」だもの。
先週も70代の男性が、薬局のレジ袋をがさがさやりながらボトルを6本、デスクに並べた。締めて9000円ちょっと。「これで元気になるって、ジムの人が」。ジムの人。
裏返す。原材料名の欄。……全部、合成だった。
リンゴの話をさせてください(脱線します)
リンゴの抗酸化力のうち、ビタミンCが担ってる割合って、実はほんのわずかなんです。ごくわずか。「ビタミンCたっぷりのリンゴ」みたいなコピーを見るたび、いやそこじゃないと画面に向かって言ってる。誰も聞いてない。妻にも言われる、また始まったと。
残りは何が働いてるのか。皮のポリフェノール。名前もついてないような微量成分。要するにチームなんですよ。エース1人じゃなくて、無名の選手が11人いて、その連携で成立してる。
で、合成サプリってのは、その11人からエース1人だけ抜いてきて——しかも本人じゃなくて、別の工場で作った偽物にユニフォームだけ着せて、それを高濃度に固めたもの。
「同じ成分が入っています」。嘘じゃない。嘘じゃないんだけど、その成分“しか”入ってないとは、どこにも書いてない。書かない。書くわけない。
例の脂溶性ビタミン。名前は伏せますが、ドラッグストアの、あの棚の、アレです。
安いやつの大半が合成型で、原料は石油由来。それを化学的につなぎ合わせて作る。天然型は植物油から絞る。同じ名前で隣同士に並んでて、値段は倍ちがう。出発点が別物。
見分け方はラベルの一文字。一文字ですよ。知ってれば3秒、知らなきゃ一生わからない。この差はでかい。
しかもこの栄養素、そもそも一つの物質じゃない。4つの型があって、それぞれ2系統、合計8種類。食事から摂ると8人が絶妙な比率で混ざって互いを補い合う。ついでに言うと、普段の食事で主役を張ってるのは、サプリで有名なあの型じゃないほう。この事実、意外と医者も知らない。
そこへ、8人のうち1人だけを毎日大量に、10年送り込む。どうなるか。別の型が押し出される。炎症を抑える係が、追い出される。抜けた穴を残った1人が埋めてくれるかというと、埋めない。ポジション違うんだから。
1種類足しただけで、チームが崩壊する。
90年代のあれ
もう一個いやな話。緑黄色野菜に多い、体内でビタミンAに変わる色素成分。野菜で摂る分には何の問題もない。ニンジン食って肺がんになった人はいない。
なのに90年代の2つの大規模試験で、喫煙者が合成品を高用量で摂った群は、肺がんリスクがかえって上がった。当時、界隈がひっくり返った。「体にいい抗酸化物質」が牙を剥いたわけです。
非喫煙者で同じ結果が出たわけではない。市販品の量も少なく抑えられてる。ただそれ、裏返すと期待するほど効かないってことでもあって。効かないか、条件次第で害か。どっちだよ。
全否定はしてません。医療の管理下では目的を絞って単体高用量を使うし、合成でも分子レベルで天然と同一のものだってある。そこは公平に書いておく(公平にしたくないけど)。
怖いのは、安いからという理由だけで、疑問も持たずに10年飲み続けること。あの9000円の男性に、私は結局ほとんど何も言えなかった。3分の診察で言い切れる話じゃない。だからこうして書いてる。
選ぶなら、単体高用量じゃなく複数の型が揃ったものを、適量で。安さだけで決めない。
それだけです。それだけなんだけど、できてる人、ほんとに少ない。
※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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