産経新聞が2026年11月末をもって、東北6県で産経新聞とサンケイスポーツの発行を停止すると報じられた。長年続いてきた赤字の改善が見込めず、紙の新聞の印刷・輸送・配達から撤退する。ただし、取材拠点は維持する方針だという。

紙を運ぶコストが報道を圧迫する
紙の新聞には、用紙代、インク代、印刷機の維持費、輸送費、販売店への手数料がかかる。しかも、購読者が減っても東北の広い地域を毎朝カバーするための配送網は簡単には縮小できない。
日本新聞協会によると、2025年10月時点の新聞総発行部数は2486万8122部で、前年から6.6%減少した。1世帯当たりでは0.42部にすぎない。新聞を取っていない家庭の方が、すでに圧倒的多数である。
それでも新聞社は、最盛期につくられた印刷工場、販売店、戸別配達網を維持しようとしている。読者が減るほど1部当たりの配送コストは上がり、経営が悪化している。
アメリカでは「毎日印刷」が例外に
アメリカでは、日本より早く紙の新聞の縮小が進んだ。ノースウェスタン大学の調査によると、2025年時点で、全米の日刊紙のうち週7日印刷・配達している新聞は2割未満になった。多くの新聞が印刷日を週3日や週1日に減らし、ニュージャージー州のスター・レジャーなど、紙を廃止してデジタル専業に移行した有力紙も多い。
ニューヨーク・タイムズは、その象徴だ。2026年3月末のデジタルのみの購読者は1252万人だったのに対し、紙の購読者は56万人だった。購読者の約96%がデジタルである。もはや「新聞社」というより、ニュース、スポーツ、料理、ゲームなどを束ねたデジタル会員企業になっている。
2005年以降、地方紙の約40%が消滅し、約5000万人が十分な地域ニュースを得られない「ニュース砂漠」に住んでいる。それでも、赤字の紙を守るために報道機関そのものが消えるより、デジタルで取材網を縮小して残す方が合理的だろう。
日本の新聞は紙にこだわりすぎ
日本の新聞社、とりわけ読売新聞は、いまだに紙の購読を中心にデジタルサービスを設計している。日本新聞協会の調査では、朝日、毎日、日経、産経などがデジタル単独の有料プランを設けている一方、読売新聞オンラインの料金体系は「本紙購読料のみ」とされている。
読売のアプリでも、全サービスを利用できる「読者会員」は月ぎめで紙の新聞を購読している人に限られている。これはデジタル版を、独立した商品ではなく「紙を取り続けてもらうためのおまけ」と考えているということだ。
ニューヨーク・タイムズが世界中からデジタル購読者を集めているのに対し、日本の最大手紙は、配達区域の中で紙を買う読者を囲い込もうとしている。読売は地方紙を買収して、全国の輪転機を使おうとしているが、減収減益が続いている。
必要なのは紙ではなく報道である
紙の新聞にも利点はある。高齢者にとって読みやすく、災害時にも通信障害の影響を受けにくい。だから紙を直ちに全廃する必要はないが、全国一律に毎朝宅配する仕組みまで守り続ける必要はない。
インターネット時代に、こんなに紙媒体の残っている日本は先進国では珍しい。まだ高齢者が多いからだろうが、紙媒体が消えるのは時間の問題だ。取材拠点を残しながら不採算の配送網を整理するしかない。
日本の新聞社は全国すみずみまで支局を置き、毎日膨大な地方版を書くなど、無駄が多い。紙をなくせば印刷・販売などの要員は浮き、地方支局をなくせば記者も減らせる。紙を守るのではなく、ジャーナリズムを守る戦略を考えるべきだ。







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