米CNNは、イランとの戦争を通じて米軍が主要な迎撃ミサイルを大幅に消耗し、高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の迎撃ミサイルは約8割、パトリオット迎撃ミサイルも約半数を使い果たし、備蓄が「危険な水準」に達していると報じた。
もちろん、米国は依然として世界最強の軍事大国である。この報道だけをもって「米国の軍事的優位が終わった」と結論づけるのは早計だ。
しかし、このニュースが同盟国に突き付ける教訓は極めて重い。
それは、アメリカの抑止力は有限な資源であるという現実である。

トランプ大統領と高市首相 ホワイトハウスHPより 2026年3月19日
抑止力にも「在庫」がある
冷戦後、多くの同盟国は米軍の圧倒的な軍事力を所与のものとして考えてきた。
だが、ウクライナ支援、中東でのイランとの軍事衝突、そしてインド太平洋における中国への対応という複数正面の危機は、その前提を大きく揺さぶっている。
現代戦では、精密誘導兵器や迎撃ミサイルは高度な製造能力と長い生産期間を必要とする。大量消費が続けば、補充は容易ではない。
抑止力は抽象的な概念ではない。
それは工場の生産能力、サプライチェーン、弾薬庫の在庫に支えられた「有限の資源」である。
「アメリカが来てくれる」という発想は危うい
日本では安全保障を論じる際、「いざとなれば米軍が来る」という前提が暗黙のうちに置かれることが少なくない。
しかし、現実のワシントンは、欧州、中東、インド太平洋という三つの戦域を同時に管理しなければならない。
もし台湾海峡危機と中東危機が同時に発生した場合、米国は限られた迎撃ミサイルや長距離精密兵器を、どの戦域に優先的に配分するかという厳しい選択を迫られるだろう。
リアリズムの視点に立てば、国家はまず自国の利益を基準に資源を配分する。
これは同盟への裏切りではなく、戦略の基本原則である。
同盟国がすべきことは三つある
だからこそ、日本を含む同盟国は発想を転換する必要がある。
第一に、自助努力である。
長射程ミサイル、防空能力、弾薬備蓄、防衛産業の生産能力を強化し、「米軍が不足する部分」を補完できる体制を整えなければならない。
第二に、地域内の同盟国・同志国との連携を深めることだ。
日米同盟だけではなく、日豪、日韓、日比、さらにはNATO諸国との防衛産業協力や弾薬の共同生産・共同備蓄を進めることで、抑止力を面的に構築する必要がある。
第三に、米国に対して戦略的優先順位を明確にするよう求めることである。
米国は世界最大の軍事大国であっても、あらゆる地域で同時に圧倒的な戦力を維持することは難しくなっている。だからこそ、インド太平洋を最優先戦域と位置づけるのか、中東や欧州との間でどのように資源を配分するのかについて、同盟国が率直な戦略対話を行うことが重要である。
「依存」から「補完」へ
近年、ワシントンでは「同盟国はより多くの負担を担うべきだ」という議論が超党派で広がっている。
これはトランプ政権特有の主張ではない。限られた資源で中国との大国間競争に対応するという現実が、共和・民主両党に共通する認識となりつつあるからだ。
日本が目指すべきなのは、「米国に守ってもらう国」ではない。
米国の抑止力を補完し、インド太平洋全体の安定を支える同盟国へと進化することである。
有限な抑止力を前提に戦略を組み立てよ
今回のミサイル不足は、一時的な兵站上の問題として片付けるべきではない。
むしろ、二十一世紀の同盟のあり方を考え直す契機である。
同盟国は、米国の抑止力を「無限に供給される公共財」ではなく、「希少で戦略的に配分される資源」と認識しなければならない。
その現実を受け入れたとき、日本に求められる答えは明確である。自助努力を強化し、地域内の安全保障ネットワークを厚くし、そして米国には世界戦略の優先順位を明確に示すよう求めることだ。
「アメリカが助けてくれるか」を問う時代は終わりつつある。
これから問われるのは、「日本はアメリカの抑止力をどれだけ補完できるのか」である。







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