ブルガリアとウクライナ間で無人機騒動

戦争が長くなると敵国との関係だけではなく、同盟国との間でもいがみ合いや争いが生まれてくるものだ。ロシア軍が2022年2月24日、ウクライナに侵攻して以来、戦争は5年目に突入しているが、キーウ政府はウクライナを支援してきた同盟国との関係で問題が出てきている。同盟国の支援疲れ、ウクライナの戦争疲れ、といった側面もあるが、戦場以外の問題や誤射など技術的ミスが外交関係を刺々しくさせている。

無人機対策の重要性を訴えるルーメン・ラデフ首相、ブルガリア首相府公式サイトから

ロシア軍がウクライナに侵攻した時、避難するウクライナ国民を最も多く受け入れたのはポーランドだった。ポーランド人は歴史的に反ロシア的傾向が強いが、国民は国境の駅に到着したウクライナ避難民を温かく迎え入れてきた。その後、ポーランドの農民からウクライナ産農産物の輸出問題で一時期不満の声が聞かれたことがあった。

そして今年5月末、ウクライナのゼレンスキー大統領が、ロシアと戦う自国の精鋭特殊部隊に対し、ウクライナ蜂起軍(UPA)の英雄にちなんだ名誉称号を授与する大統領令に署名して以来、ウクライナとポーランド両国の歴史認識を巡る外交問題が表面化した。

ウクライナ蜂起軍(UPA)は、1942年に設立され1950年代まで活動したウクライナ民族主義者組織(OUN)の傘下組織だ。UPAは第二次世界大戦中、現在のウクライナでポーランド人虐殺を行った組織だ。ウクライナ大統領が自軍の部隊にUPAの称号を授与したと報じられると、ポーランドのナブロツキ大統領は「虐殺者を英雄視している」として、ゼレンスキー氏に授与した最高勲章(白鷲勲章)の剥奪を決定するなど、両国間で外交摩擦が生まれたことはまだ記憶に新しい。

そして今度はウクライナの攻撃無人機がブルガリア領内で爆発するという事件が発生した。爆発物を積載したドローンは8日、欧州連合(EU)および北大西洋条約機構(NATO)加盟国の隣国ルーマニアとの国境付近で爆発した。爆発は、トルコとウクライナを結ぶ「トランス・バルカン・ガスパイプライン」のコンプレッサー・ステーション(圧縮機所)から約1000メートルの地点で発生した。負傷者は出なかった。ブルガリアのラデフ首相によると、ドローンは黒海に近いカルダム近郊のヒマワリ畑に墜落した。ブルガリア国防省は8日、「残骸の初期調査の結果、当該機体がウクライナ軍によって頻繁に使用されている種類のドローンであった」と発表した。

ブルガリア国内の戦略的に重要なガスパイプライン付近で、ウクライナ製とみられるドローンが爆発したことを受け、ソフィアとキーウの間で外交的な摩擦が生じてきた。ブルガリア側が初期調査に着手する一方、ウクライナ側も事態の解明に協力する姿勢を示した。ペトロヴァ外務次官は10日、駐ブルガリア・ウクライナ大使を呼び出し、会談を行う予定だ。

キーウ側は、意図的にブルガリアへ向けて機体を飛ばしたことを否定しつつ、ソフィア側との共同調査に対して、全面的に応じると表明した。キーウのウクライナ外務省報道官は、「ウクライナ軍が意図的にブルガリアへ向けて何らかの機体を差し向けたことはない、と断言する」と述べた。ただし、同報道官は、当該ドローンが実際にウクライナ製であるかどうかについては明言を避けた。一方、ブルガリア国防省は、「現時点では、これが意図的な事案であったことを示す兆候はない」と発表し、事案の早期鎮静化に努めている。

ラデフ首相によると、ドローンには「相当量」の爆発物が積載されていた。安全保障閣僚会議の緊急会合後、同首相は「ドローンを捕捉し無力化することは大きな課題となっている」と述べ、監視体制の強化、さらにドローンの探知および迎撃措置を講じるため、国境地帯へ軍隊が派遣される予定という。

ちなみに、ドイツ東部ライプツィヒ・ハレ空港で5日未明、ライプツィヒ・ハレ空港の「南滑走路」で、空港職員が正体不明のドローン(UAV)を発見した。そのドローンには爆弾が搭載されていたが、起爆装置が故障していたため幸い爆破せずに大惨事を免れたが、国民に大きなショックを与えている。連邦検察が重要インフラに対する「重大な攻撃」としてテロ容疑で捜査を開始したばかりだ。

ドイツや東欧のNATO加盟国でドローンに関連する事案が相次いでいる。ロシアによる対ウクライナ侵攻の開始以来、ルーマニアでは自国領空をドローンが飛行したり、領内に墜落したりする事例が複数確認されている。

ウクライナ製ドローンがNATO加盟国内で爆発し、被害が出た場合、欧州諸国のウクライナ支援にも影響を与えることは必至だ。ウクライナとNATO諸国間に亀裂が生じる危険性すら排除できない。そうなれば、ロシア側の思うつぼとなる。

ゼレンスキー大統領 ウクライナ政府HPより

ウクライナ戦争では、無人機は戦況を変えるゲームチェンジャーとなってきた。単に「敵を倒せるから」ではなく、1機わずか数千ドル(数十万円)の自爆ドローンや、ウクライナ国産の低コスト長距離ドローン(Blyskavkaなど)が、数億円~数十億円のロシア軍の戦車、装甲車、防空システム、さらには後方の製油所を破壊できるからだ。

ドローンは今後も大きな役割を担っていくだろう。ただし、ドイツ東部ライプツィヒ・ハレ空港で発見された「正体不明」の爆弾搭載無人機が示すように、数千ドルのドローンは取り返しのつかない大惨事を起こす危険性を有していることを忘れてはならない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年8月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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