米国の民主党で、2028年大統領選をめぐる議論が早くも始まっている。
そのなかで、ここ数カ月で急速に存在感を高めているのが、ジョージア州選出の上院議員ジョン・オソフだ。

ジョン・オソフ上院議員SNSより
オソフは2021年、ジョージア州の上院選で勝利した。かつては共和党の牙城だったジョージアを激戦州へと変えた民主党の新世代を象徴する政治家である。
現在の最大の課題は、2026年中間選挙での再選だ。ジョージア州は2024年大統領選でトランプが勝利した州であり、オソフは今回の中間選挙で再選を目指す民主党現職上院議員として、共和党から最大の標的とされている。にもかかわらず、足元では民主党側に追い風が吹いている。
7月中旬にAARPが実施した世論調査では、オソフの支持率は52%で、共和党のマイク・コリンズ下院議員の43%を9ポイント上回った。別の調査でもオソフがリードしており、Cook Political Reportもジョージア州上院選を民主党「やや優勢」と評価している。
つまり、オソフにとって2026年は単なる再選選挙ではない。
トランプが勝利した南部の州で、民主党が現職議員を守り抜けるのか。この問いへの答えが、オソフの2028年に向けた評価を大きく左右することになる。
「中道派が支持できる進歩派」
オソフが注目される最大の理由は、その政治的位置にある。
現在の民主党では、党内左派、いわゆる進歩派の影響力が強まっている。2026年の予備選でも、各地で進歩派候補が存在感を増しており、民主党が以前より左寄りになっているとの指摘は少なくない。
しかし、左傾化すればするほど、民主党には別の問題が生じる。
全国選挙で勝つためには、ニューヨークやカリフォルニアの大都市圏だけでなく、ジョージア、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンといった激戦州の有権者を取り込まなければならないからだ。
ここでオソフの存在が面白くなる。
彼は民主党の主流派から見れば十分にリベラルであり、トランプへの批判も明確だ。一方で、民主社会主義を掲げるような急進左派の候補でもない。
そして何より、共和党の強いジョージア州で選挙を戦い、勝利してきた経験を持つ。
マシュー・イグレシアスが「The Obama of 2028?」と題した論考で示したのも、まさにこの可能性だった。民主党に必要なのは、中道派と進歩派のどちらか一方ではなく、「進歩派が支持できる中道寄りの候補」なのではないか。
オソフは、その条件に比較的近い。中道派にとっては、激戦州で勝てる若い候補だ。進歩派にとっては、急進左派そのものではなくとも、トランプへの対抗軸として受け入れやすい候補である。
だからこそ、民主党内の異なる勢力から、それぞれ異なる理由で期待される。
それでも2028年は「まだ先」なのか
もっとも、ここで注意すべきなのは、オソフ自身が2028年大統領選への出馬を否定していることだ。本人にとって現在の最優先課題は、あくまで2026年の上院選である。
むしろ、ここにオソフの現在の政治的立場の面白さがある。
大統領候補として名前が挙がり始めているにもかかわらず、本人は大統領選を目指すのではなく、トランプが勝利したジョージア州で自らの議席を守ろうとしている。
これは、2028年を考えるうえでも重要な試金石になる。
もしオソフが2026年に再選されれば、トランプ時代の南部で民主党が勝利できることを改めて示すことになる。逆に敗北すれば、「南部で勝てる民主党候補」という彼の最大の政治的資産に疑問符が付く。
したがって、2028年の大統領候補としてオソフを見るのであれば、まず見るべきは2026年11月のジョージア州上院選なのである。
民主党は「南部の民主党員」を忘れていない
ここで興味深いのが、オソフが南部出身であることだ。
現在のアメリカ政治を見れば、南部は共和党の牙城である。しかし、これは歴史的には比較的新しい現象である。
かつての南部は「Solid South」と呼ばれ、民主党の強固な地盤だった。公民権運動を経て南部の共和党化が進むと、民主党は大統領選で南部の票を失っていった。
それでも民主党が党勢を立て直そうとした際、南部出身の候補者が重要な役割を果たしてきた。その代表例が、ジョージア州出身のジミー・カーターである。
1976年、民主党の大統領候補となったカーターは、南部出身という地理的・文化的背景を武器に、共和党への反発が強まっていた南部で幅広い支持を獲得した。ウォーターゲート事件後の「ワシントンの外から来た政治家」というイメージも奏功し、カーターは大統領選に勝利した。
その後、南部で民主党の凋落は進んだ。しかし1992年、今度はアーカンソー州知事ビル・クリントンが登場する。クリントンもまた南部出身の民主党員だった。1992年の選挙でクリントンは南部の複数州を獲得し、1980年代に共和党が優位を築いた地域で民主党の競争力を取り戻した。
つまり民主党には、党の全国的な魅力が低下したとき、南部出身の候補者によって新しい選挙連合を作り直すという歴史がある。
もちろん、現在の南部は1970年代や1990年代とはまったく違う。ジョージア州はもはや民主党の地盤ではない。だからこそ、オソフの存在が重要になる。
彼は「南部の民主党員」でありながら、かつての南部民主党のような保守的民主党員ではない。むしろ、現代の民主党の価値観を維持しながら、共和党の強い地域で選挙を戦うことのできる政治家なのである。
「次のオバマ」なのか
オソフをめぐる現在の熱狂には、2008年のバラク・オバマを想起させる部分もある。
若い。
全国的にはまだ新しい存在である。
演説がうまい。
そして、党内の複数の勢力から「この人物なら勝てるのではないか」と期待されている。実際、オソフを「2028年のオバマ」と重ねる議論もすでに登場しているが、現段階でオソフを「次のオバマ」と呼ぶのは早すぎる。
むしろ重要なのは、オソフ個人が2028年に出馬するかどうかではない。民主党が今後、どのような候補者を必要とするのかという問題である。
民主党は「左か中道か」を超えられるか
現在の民主党が抱える問題は、単純な「左派対中道派」の対立ではない。
進歩派の政策を支持する有権者を失えば、民主党は党内の活力を失う。しかし、進歩派のメッセージだけでは、共和党が強い地域で勝利することは難しい。
必要なのは、その両者をつなぐ政治家である。オソフが注目されるのは、その可能性を持っているからだ。ジョージア州で選挙に勝てる。民主党のリベラルな有権者にも受け入れられる。
しかし、全国的な民主党の左傾化をそのまま体現する候補でもない。
もし2026年にジョージア州で再選を果たせば、オソフは単なる「若手上院議員」から一段上の政治的存在になる可能性がある。
そして、民主党が再び「沿岸部の大都市だけの政党」ではなく、南部や中西部を含む全国政党として再構築されるのであれば、その象徴となる候補者は、ニューヨークやカリフォルニアではなく、ジョージアから現れるのかもしれない。
カーター、クリントンに続く「南部の民主党大統領候補」。その候補者がオソフになるかどうかは、まだ分からない。しかし少なくとも、2028年の民主党を考えるうえで、彼を無視することは難しくなっている。







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