レヴィット報道官「突然の辞任」の謎:トランプは誰を残して逃げたのか

トランプ政権の「顔」として知られるキャロライン・レヴィット大統領報道官が、8月末で辞任することになった。そのタイミングがあまりにも突然で、いろんな憶測が飛んでいる。

機内食トラックで逃げた大統領

辞任発表の直前、トランプ大統領が7月のトルコ訪問から帰国する際、イランによる暗殺の脅威を避けるため、大統領専用機から機内食用のトラックに乗り込み、別の軍用機へ密かに移動していたことが明らかになった。

ワシントン・ポストによると、7月8日、トランプはアンカラでテレビカメラの前で旧型の大統領専用機に搭乗したが、数分後、反対側のドアに横付けされた機内食用トラックに側近らと乗り込み、近くに待機していた小型の米空軍C-32Aに移った。

旧型の大統領専用機はそのまま英国へ向かったが、そこに大統領はいなかった。記者団や一部のホワイトハウス職員は、トランプが同じ機内にいると思っていたという。

トランプは8月11日になってこの移動を認め、「シークレットサービスと軍が別の飛行機に乗ることを望んだ。私は彼らの言う通りにした」と説明した。大統領を守ること自体は当然である。実際、歴代政権でも深刻な脅威がある場合には囮の航空機を使った例があるが、今回、別の問題が浮上した。

ルビオ国務長官らは「おとり機」に残った

AP通信によると、マルコ・ルビオ国務長官とスコット・ベッセント財務長官は、トランプが別機へ移った後も旧型の大統領専用機に残った。米政府高官によれば、ルビオもベッセントも大統領の移動と脅威について知っていたという。

もちろん、大統領と閣僚では警護の優先順位が違う。そこに安全保障上の合理性はあるが、外から見るとかなり異様な光景である。

危険が迫るなか、大統領は機内食トラックに身を隠して別の飛行機へ移り、国務長官や財務長官、記者団や職員を乗せた飛行機が「おとり」になった。

今回の事件は、トランプ政権の危機管理だけでなく、危機の瞬間に誰が大統領の内側にいるのかを図らずも可視化した。

その直後にレヴィット報道官が辞任

この事実をワシントン・ポストが8月10日に報道し、トランプが11日に認めた翌12日、レヴィット報道官の退任が発表された。レヴィットは28歳で、史上最年少のホワイトハウス報道官としてトランプ政権を支えてきた。

公式な退任理由は家庭である。今年5月に第2子を出産し、最近職務に復帰したばかりだった。本人は、幼い2人の子供の母親であることと、報道官に要求される時間やエネルギーを両立することが難しいと説明している。トランプも決定を尊重するとし、退任後も「トップの外部顧問」の1人として活動するとしている。

したがって、レヴィットが今回の「脱出作戦」に反発して辞任したという証拠はないが、偶然にしては微妙なタイミングである。機内食トラックの中に、自分ではなくトランプの愛人ともいわれるナタリー・ハープが同行したことがショックだったともいわれる。

問われるのは「誰が守られ、誰が残されたのか」

今回の事件で興味深いのは、トランプが機内食トラックを使ったこと自体ではない。本当に暗殺の危険が迫っていたのであれば、大統領を秘密裏に別機へ移すのは合理的な判断だろう。

問題はホワイトハウスが当時、トランプが旧型の大統領専用機でトルコを出発したかのような説明を続けていたことだ。記者団だけでなく、多くの政府関係者にも大統領の実際の所在は伏せられていた。

こうした事実が暴露されれば、その説明を求められる最前線に立つのは大統領ではない。報道官である。政権にとって最も説明しづらい安全保障上の秘密が明るみに出た直後、政権の「顔」がホワイトハウスを去る。

偶然なのかもしれないが、政治の世界では、偶然であっても、そのタイミング自体がニュースになる。レヴィットの辞任以上に注目すべきなのは、この「機内食トラック脱出事件」によって露呈したトランプ政権内部の信頼関係である。

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