サッカー界の「キング」が、また時計の針を止めた。
J3福島ユナイテッドFCのFW三浦知良選手が8月19日、天皇杯1回戦の大山サッカークラブ戦にキャプテンとして先発出場し、2本のPKを決めた。59歳5カ月24日での得点は天皇杯本戦の最年長得点記録。福島は7-0で大勝し、2回戦へ進んだ。
59歳のカズが2ゴール
カズは前半12分、味方が倒されて得たPKを決めて先制点。さらに後半10分には、自ら獲得したPKを再び成功させた。58分までプレーし、2得点を残してピッチを退いた。
59歳の選手が全国大会に先発するだけでも異例だが、キャプテンマークを巻き、実際に2点を取ったのだから驚くしかない。
しかも、カズが天皇杯本戦で得点するのはヴィッセル神戸時代の2003年以来、実に23年ぶりだった。
Jリーガーの平均引退年齢は26歳
カズの異例さは、一般的なJリーガーと比べればさらに際立つ。
日本プロサッカー選手会のデータによると、Jリーグ選手の平均引退年齢は26.0歳とされる。ただし、契約満了などで一度クラブを離れる選手や、早い段階で別のキャリアへ移る選手も含まれるため、プロキャリアを全うした選手の実質的な引退年齢はおおむね30~32歳程度とみられる。
それでもカズは59歳だ。
普通の選手がユニホームを脱ぐ年齢から、さらに30年近くプロとしてプレーしている。「ベテラン」という言葉では、もはや説明できない領域に入っている。
「若手の枠を奪っている」という批判
もちろん、カズの現役続行には以前から批判もある。
代表的なのは、「若い選手の出場機会を奪っているのではないか」というものだ。限られた選手登録枠やベンチ入り枠の一つを59歳の選手が使えば、その分だけ若手が経験を積む機会を失うという指摘である。
また、「純粋な戦力というより、カズという名前による集客や話題作りを期待した起用ではないか」という見方も根強い。2025年に現役続行を表明した際にも、「若い選手からすればたまらないのではないか」「ブランディングのために枠を使っている」といった批判がSNSで出ていた。
競技面だけを考えれば、年齢によるスピードや運動量の低下は避けられない。J3で90分間、高い強度を維持してシーズンを戦えるのかという疑問が出るのは当然だろう。
今回の相手は都道府県代表であり、2得点はいずれもPKだった。この1試合だけで「59歳でもJ3で主力として十分に通用する」と結論づけることもできない。
それでも「客寄せパンダ」だけでは説明できない
一方で、カズを単純に「客寄せパンダ」と切り捨てるのもフェアではない。
かつて鈴鹿でカズとプレーした元選手は、毎日のトレーニングや食事管理、長時間にわたる身体のケアを続け、練習では先頭に立って走り、誰よりも声を出していたと証言している。チーム内でも「なぜカズが試合に出るのか」という雰囲気ではなく、むしろ得点してほしいと考えていたという。
カズの現役生活を支えているのは知名度だけではない。59歳になってもプロの練習についていける身体を維持するには、常識外れの節制と準備が必要だ。
さらにプロスポーツは、純粋な競技だけで成り立つ世界でもない。観客を呼び、スポンサーを集め、メディアに取り上げられることもプロ選手の価値である。カズが出場すればスタジアムへの注目度は上がる。その経済的価値まで含めてクラブが契約を判断すること自体は、不自然ではない。
結局は「結果」が問われる
とはいえ、努力していることや集客力があることだけで、無条件に出場が正当化されるわけでもない。
実際、カズを擁護した元チームメイトの発言に対しても、「プロなら結果がすべて」「本当に1点が欲しい場面でカズが出てきて納得できるのか」という反論が出ている。
ここがカズ論争の核心だろう。
競技力だけで評価すれば厳しい。しかし、プロスポーツ選手の商品価値まで含めれば依然として突出している。そして最後に問われるのは、ピッチに立ったとき何ができるかだ。
その意味で今回の2ゴールは大きい。
PKとはいえ、最初の1本は0-0からの先制点だった。チームからキッカーを任され、プレッシャーのかかる場面で2本とも決めた。「話題性しかない」という批判に対して、少なくともこの日は結果で答えた格好になった。実際、SNSでも「結果で黙らせる」「生きる伝説」といった評価が相次いだ。
還暦まであと半年
1967年2月26日生まれのカズは、2027年2月に60歳を迎える。
若手の機会を奪っているのか。それとも、59歳でも契約を勝ち取り、観客を呼び、結果まで残すプロフェッショナルなのか。
おそらく、その両面があるのだろう。
カズが出場する限り、「実力なのか、話題性なのか」という議論はこれからも続く。しかし、それもまたカズがプロサッカー界で価値を持ち続けている証拠なのかもしれない。
59歳で天皇杯に先発し、2ゴール。
普通のJリーガー(Jリーガーになれた時点で普通ではない)が引退してから約30年後の年齢で、まだ公式戦のスコアボードに名前を刻んでいる。
キング・カズは、賛否そのものを力に変えながら、還暦へ向かって走り続けている。







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