
(前回:佐倉市議会発言削除事件③:「応答する討論」は禁止できるのか)
前回は、地方議会における「討論」の性質と、他の議員の討論に応答・反論する討論が、全国の議会や佐倉市議会でも実際に行われていることを紹介しました。

では、議長は地方自治法129条に基づく秩序維持権によって、このような討論を制限することができるのでしょうか。
地方自治法129条を今回の発言削除に適用できるのか
地方自治法129条は、議場の秩序を乱す議員に対し、議長が発言を制止したり、発言を取り消させたりすることなどを認めています。
複数の逐条解説や議会実務書を確認すると、この権限は議場の秩序を維持するための権限として説明されています。
具体例として挙げられているのも、大声による発言、長時間にわたる演説など議事進行を妨げる行為や、無礼な言葉、他人の私生活にわたる言論などです。
なお、本件について、被告である佐倉市は、答弁書において、「本件発言が特定議員の人格や評価を対象としたものではないことは認める」と明示しています。つまり、本件で問題とされているのは、他の議員に対する人格的な攻撃ではありません。被告が問題としているのは、先行する討論者の主張を取り上げ、それに批判的に応答・反論したという「討論の態様」そのものです。
一方、「先行する討論者の主張を批判的に引用し、それに応答・反論する」という討論の態様そのものを、129条による取消しの対象とするという説明は、私が調査した限りでは確認できませんでした。
そうすると、改めて本件の核心に戻ることになります。
議場秩序を維持するために与えられた129条の権限によって、討論制度が本来予定している応答・反論という言論のあり方そのものを制限することができるのでしょうか。
私は、本件ではこの点が問われていると考えています。
議会の自律権と司法審査
これに対して、「議会内部の発言の取扱いは、議会自身が判断すべき問題ではないか」という考え方もあります。
地方議会には、その運営について一定の自主性・自律性が認められています。
しかし、その自律性は無制限なのでしょうか。
この点について参考になるのが、中津川市議会事件の控訴審判決です。
この判決は、地方議会の自主性・自律性を認めつつも、議員の発言の権利・自由を侵害する場合には、「一般市民法秩序に関わるもの」として、司法審査の対象となり得るという考え方を示しています。
つまり、「議会内部の問題である」という理由だけで、当然に司法審査の対象外になるわけではありません。
もちろん、中津川市議会事件と本件では事案が異なります。
中津川市議会事件は、発声に障害のある議員について代読による発言が認められなかったことが問題となった事件であり、本件は、実際に行われた討論の一部が事後的に削除された事件です。
したがって、中津川市議会事件の判決によって、本件の結論が直ちに導かれるわけではありません。
しかし、地方議会の自律権と議員の発言の権利・自由が衝突したとき、どこまでを議会内部の問題として扱い、どこから司法審査の対象とするのかという点では、本件を考える上でも重要な判決であると考えています。
では、仮に発言の削除が司法審査の対象になるとして、発言を削除された議員には、具体的にどのような不利益が生じるのでしょうか。
次回は、この点を考えます。







コメント