
(前回:佐倉市議会発言削除事件②:地方議会の発言取消しは裁判所で争えるのか)
佐倉市議会発言削除事件について訴訟が進む中、被告である佐倉市側の主張も明らかになり、争点がかなり整理されてきました。
そこで今回は、この事件を通じて浮かび上がった「地方議会の討論をどこまで制限できるのか」という問題について考えてみたいと思います。
本件訴訟の発端は、私が佐倉市議会本会議で行った討論のうち、直前の討論者の発言内容を批判的に引用した部分が、議長権限によって削除されたことでした。
この経緯については、これまでの記事で紹介しています。
被告である佐倉市は、本件の措置について、地方自治法129条に基づく議長の秩序維持権の範囲内であると主張しています。
これを受けて、今回私が裁判所に提出した準備書面では、本件についてより詳細な反論を行いました。
その核心を一つの問いにまとめると、次のようになります。
地方自治法129条に基づく議長の秩序維持権によって、「応答・反論する討論」そのものを禁止することができるのか。
私は、できないと考えています。
では、なぜそう考えるのか。
本件は佐倉市議会だけにとどまる問題ではなく、全国の地方議会にも敷衍して検討し得る問題だと考えるため、今回提出した準備書面の内容をもとに、その概要を紹介します。
「討論」とは何か
地方議会における「討論」とは、議案について議員が自己の賛否とその理由を述べ、他の議員を自己の意見に賛同させるために行う言論です。
そして現在では、多くの地方議会で会議録がインターネット上に公開され、本会議の映像も配信されています。
そのため討論は、議場にいる他の議員を説得するだけでなく、市民が「この議員は、なぜこの議案に賛成・反対したのか」を確認するための公的な記録としての意味も持つようになっています。
ここで重要なのは、討論とは単に、あらかじめ用意した賛成・反対の意見を順番に読み上げる制度なのか、という点です。
応答・反論型の討論は、本当に禁止されているのか
地方議会で広く参考にされている逐条解説や議会実務書を調べると、討論について、賛成者と反対者が互いの意見を反駁・反論し、他の議員を自己の意見に賛同させるために行う言論である、という趣旨の説明が確認できます。
つまり、討論には本来、他者の意見を受け、それに反論するという性質が含まれていると考えることができます。
もちろん、どのような発言でも許されるという意味ではありません。
議場の秩序を乱す行為や、無礼な言葉、他人の私生活にわたる言論などについては、地方自治法や会議規則による制約があります。
しかし、それとは別に、「直前の討論者の主張を取り上げ、それに応答・反論した」ということ自体を禁止する根拠が存在するのか。
これが、本件の大きな争点です。
実際の議会ではどうなのか
そこで、実際の議会ではどのような討論が行われているのかについても調査しました。
国会をはじめ、都道府県議会、政令指定都市、中核市、一般市などを調べると、先行する討論者の主張に言及し、それに反論したり、別の評価を示したりする討論は、地域や議会規模、時期を問わず確認することができます。
そして、今回調査した範囲では、「先行討論への応答・反論である」という態様それ自体を理由として、発言取消しなどの対象とされた事例は確認できませんでした。
佐倉市議会についても同様です。
過去の会議録を調査すると、他議員の討論内容に言及し、それに応答・反論する討論が複数確認できますが、調査した範囲では、その態様自体が問題とされた事例は確認できませんでした。
このことからも、「他の議員の討論に応答してはならない」というルールが、地方議会において一般的に確立した討論原則であるとは考えにくいのではないでしょうか。
では、それにもかかわらず、議長は地方自治法129条を根拠として、このような討論を制限することができるのでしょうか。
次回は、本件の中心となっている地方自治法129条と議長の秩序維持権について考えます。







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