大赤字で解散するクールジャパンの次は「ものがたり大国」:また電通と吉本の食い物か

経済産業省が、巨額の累積赤字を抱える「クールジャパン機構」を廃止する方向で調整に入ったが、そのニュースとほぼ同時に登場したのが、ものがたり大国5カ年計画である。

名前は変わったが、アニメやゲームなど日本のコンテンツを国策で海外に売り出すという発想は、どこかで見たことがある。クールジャパンの失敗を十分に総括しないまま、また同じような「官民一体」のプロジェクトが始まろうとしているのではないか。

540億円の赤字を残して退場するクールジャパン

クールジャパン機構は2013年、日本のアニメ、食、ファッションなどを海外に売り込むための官民ファンドとして発足したが、出資金1513億円のうち、累積赤字540億円で廃止が決まった。

クールジャパン機構と大手広告会社や芸能企業との関係の代表例が、吉本興業とNTTが進めた教育コンテンツ事業、ラフ&ピースマザーである。クールジャパン機構は最大100億円の支援を決め、実際に31億円を出資した。しかし海外展開は進まず、2023年に機構は全株式を譲渡して撤退した。

問題は、単に投資の「目利き」が悪かったことだけではない。コンテンツは、10のうち1つ当たったら大当たりというハイリスクの世界だ。民間が投資して、そのリスクを政府が負担する方式では「成功したら民間の勝ち、失敗したら政府の負け」になる。これが官民ファンドの最大の問題だった。

名前を変えて今度は「ものがたり大国」

ところが経産省は8月20日、「エンタメ・クリエイティブ産業戦略2026」を発表した。その副題が、意味不明な「ものがたり大国5カ年計画」である。

ゲーム、アニメ、マンガ、音楽、実写など日本発コンテンツの海外売上高を、2024年の6.1兆円から2033年には20兆円へ拡大するという。その中核となるのが「IP360」という支援制度だ。

新しいIP(知的財産権)の創出、大規模作品の製作、海外展開、流通プラットフォームなどを国が補助する。2026年度の関連予算は355億円規模とされ、国会でも「大規模・長期・戦略的な支援」が説明されている。

しかしクールジャパンの失敗について、誰の判断が間違っていたのか、どの案件がなぜ失敗したのか、その検証も責任追及も終わっていない。その横で、次の大型コンテンツ政策がもう走り始めているのだ。

人脈もつながっている。現在の「エンタメ・クリエイティブ産業政策研究会」で座長を務める中村伊知哉氏は、2013年のクールジャパン推進会議でもポップカルチャー分科会の議長を務め、2016年に吉本興業の社外取締役に就任した。「また電通や吉本の食い物にされるのではないか」という疑念が生まれるのは当然だろう。

必要なのは新しいキャッチコピーではなく失敗の検証

日本のアニメ、マンガ、ゲームに世界的な競争力があることは確かだが、ポケモン、マリオ、ドラゴンボール、鬼滅の刃などは、政府に育ててもらったから成功したわけではない。むしろ初期には、役所が見向きもしなかったから自由に表現できたのだ。

そこへ役所が「海外売上20兆円」という目標を掲げ、補助金を配り始めると、企業が消費者ではなく霞が関を見て仕事をし、役所に気に入られる品行方正な「ものがたり」を語るようになる。

必要なのは、政府が「次のポケモン」を選ぶことではない。海賊版対策、著作権処理の効率化、クリエイターの取引環境改善、海外での法的支援など、民間企業だけでは解決しにくい市場環境を整備することだ。

経産省がまず語るべき「ものがたり」は、日本のコンテンツ産業の明るい未来ではない。クールジャパンはなぜ失敗したのかという検証と、国民に対する説明の物語である。

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