中部電力の問題は日本企業の組織疲弊の表れか?:組織一体論がすでに形骸化

中部電力で起きた浜岡原発の耐震データ不正問題に関して14日に調査委員会の報告書が公表され、合わせて社長、会長の辞任を発表しました。この手の事件は頻繁に起きているのでもはや多くの方にとってまたか、ぐらいのものでしかないと思います。

中部電力 浜岡原子力発電所 Wikipediaより

では何時まで経っても改善しない日本のデータ改ざんの癖はどうして起きるのでしょうか?中部電力の場合は経営陣による叱責が要因とされます。原子力規制委員会は第三者機関としての立場なのですが、許可を下ろすという姿勢が強く、東電の柏崎刈羽原発の再稼働に関しても何年も苦しめてきたある意味、悪代官の様相すらあります。何故か、といえば規制委員会は自ら作り上げた理論に基づき「完璧を期す」為であり、その無理難題を電力会社に押し付ける構図があるからでしょう。

中電の問題に関して言えばもちろん、同社の組織とコミュニケーションに根源的なイシューがあったことは否めません。ただ、規制委員会とのコミュニケーションの在り方にも問題があったと推察していますが、そんなことは誰も指摘するわけがなく、中電の中で問題を処理させた気がしないでもありません。

では規制委員会は間違っていたのでしょうか?例えて言えば、専門家集団が理論的な「安全の純度」を高めるため、あらゆる可能性をそこに取り込むことで規制委員会の規制スピードが速度超過で誰もついてこられない独走状態にあったとしたらどうでしょうか?もちろん、規制委員会は「これの何が悪い?」というはずです。私は他に知恵はなかったのか、と思うのです。もっと違う切り口です。

日本の組織はヒエラルキー型で三角形をしています。通常は会社の社長なり経営陣と称するところが三角形のトップですが、今回の場合は規制委員会です。いずれにせよ、そこから経営陣を介して現場に厳しい指令が飛ぶわけです。「〇〇日までに絶対に達成せよ」と。現場は「できないよな」なのですが、中電の場合は「この理論、おかしくねぇ?こういうやり方をやれば問題ないと思うよ」という独自思想を生み出したわけです。これが発覚し、「これ、何なの?」というドラマのような話が展開されたのが基本的な顛末です。

では今までさまざまな企業で不正や隠蔽事件が起きてきたことを振り返ると私には「無理難題」というところに行きつくのです。無理難題を押し付けられた現場の責任者は現場のチームから激しい突き上げがあり、一方、会社側からは絶対的なプレッシャーを与えられる状態にあります。想像するにそのアンコである管理職は夜も寝られない日々を過ごしていたと思います。

ではどうすればよかったのでしょうか?例えば中電の場合は原子力規制委員会から現場で一緒にチームとして作業する人材を派遣するといったアイディアはあったかもしれません。(第三者機関ができるわけないという発想はいったん横において欲しいのです。)通常、そういう組織から現場に降りてくれば「あいつはスパイに違いない」という意識が強くなりがちです。そうではなく、一緒にチームアップする、そして風通しを良くすることでよどんだ空気を入れ替えるぐらいの新しい組織論を生み出せれば良かったかもしれません。

ニデックにしろビッグモーターにしろどこも指令型で上から目線、かつ体育会型スパルタ系です。これは日本の組織においてヒエラルキーが一段上がるごとに現場の実務から少しずつ遠ざかり、課長、部長になると現場のことは全く掌握で来ておらず、部下のチームリーダーや係長に指示をするだけの伝言ゲーム化している点が問題かもしれません。組織によってはこの叱責や厳しいノルマに対して従順に頑張るところもありますが、指示する側はそれが達成できればより過激な要求を求めやすくなりやすいもの。現場は真綿で首を絞められているようなものであり、ゆでガエルとも言え、忖度もやむを得ず、になるのです。

特に90年代以降は個の時代になり、個性がそれに伴うようになってきています。つまり、80年代までの組織一体論はすでに形骸化しているのですが、いまだにそれにメスをいれようとしないのが問題が全く収まらない理由であろうと考えています。

お前の言うような組織論は可能なのか、と言われるかもしれません。私が勤めていたゼネコンが倒産した後、私は銀行の支配下にある海外不動産管理会社にしばらく在籍していました。そこには我々社員と共に銀行からの派遣で中堅が数名いて一緒に机を並べ、一緒に飯を食い、酒を交わしながら一つのチームとして一つのタスクを完遂したことがあります。あの時、彼らを現場に降りてきたスパイという意識はなく、一緒に汗を流せるのだ、という嬉しさを感じた思い出があります。

組織論の昇華は出来ないことはありません。やる気があるか、踏み出せるかの問題だと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年9月15日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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