「ホスピス」呼称を規制し、悪質なホスピス型住宅業者を一掃せよ

近年目立って増えた「ホスピス型住宅」の大手各社が、こぞって巨額の診療報酬不正請求をしていたことが明るみに出たのは記憶に新しい。

「ドアの隙間からチラ見」しただけで30分以上訪問したことにしたり、1人なのに2人で訪問したことにしたりと、もはや詐欺のレベルの不正が常態化し、さらに指示されていたという。

そのためか、訪問看護診療報酬は数年前の5倍にまで膨れ上がった。超高齢化とはいえ異常である。

にもかかわらず、いまだに各社とも事業を継続している。求人も出し放しである。これは事件が知られて応募がないのか、それとも懲りずに新規施設を増設しているのか?

そして何より、上場しているそれらの会社がいまだに放置・看過されていることは、悪徳業者を市場が看過しているに等しい。道義的、倫理的に極めてよろしくない。

我が国の株式市場は「儲かれば悪徳でも詐欺でもオッケー」なのか!?

「ホスピス型」の実態は何なのか

「ホスピス型」と言うが、実態は外部サービス利用型のサービス付き高齢者住宅、シニア向けアパートでしかない。

そこに訪問看護ステーションとヘルパーステーションがセットで併設され、入居したらそれらを押し売りされるも同然である。施設内にあるのだから訪問とは名ばかりで、実質は有料老人ホームだ。

そして、難病や末期、看取り対応をうたうが、それは重症だとほとんど無制限に訪問できる医療保険の訪問看護を押し売りできるからだ。

しかし、難病や末期の苦痛緩和、ホスピス緩和ケアに精通したスタッフがいるかは、甚だ疑問だ。よくもまあ羊頭狗肉したものである。

特に、ある特定の難病対応をうたい、名にまで冠しているホスピス型住宅チェーンがある。ここも巨額の不正請求が明るみになっているが、最大手と双璧をなし、求人し続けている。

さて、その難病であるが、筆者がまさに専門であったが、難病だけに出会う機会は通常の医療機関ではほとんどない。つまり、教科書程度にしか学ぶ機会がない看護師がほとんどである。

ところが、その難病をきちんとケアするためには、疾病の知識は当然ながら、きめ細かな病状観察と服薬支援が極めて重要になる。

神経の障害により体の動きが鈍くなるが、上手に薬を使うと、良い医師にかかれば20年、自立生活を保てるとまで言われて久しい。発症年齢が60代近辺なので、実質、寿命近くまで自立し得ることになる。

ただし、文字通り「さじ加減」できること、そのための看護師からの情報が生命線である。

と、分かっている看護師が、その業者のホームに一体何人いるのだろうか?

確かに偉そうな専門医を顧問にしてはいるが、その医師がすべての入居者を診察・治療するわけではない。ただの飾りだ。

人工呼吸器の管理は誰にでもできるのか

それとは別の、さらに過酷な有名な難病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)にも対応すると各社ともいうが、その終末期は人工呼吸器になる。本当にそれを管理・ケアできるのか?

筆者はちょうど東北大震災の時、藤沢で訪問看護ステーションを立ち上げたところで、早々に人工呼吸器の患者を訪問看護していた。のだが、ある日の移動中に緊急電話が鳴り、呼吸器のアラームが鳴り続けているという。が、幸い本人は特段変化がないと。

とはいえ、アラームが鳴るのは異常だから、ちょうど事務所に戻りかけだったので、進路変更し、そのお宅に向かった。

ぱっと見、本人にも機械にも何も異常はない。が、点検し、いくつか調整しても止まらない。

普通はそこで、病院なら臨床工学技士を呼ぶ。在宅なら業者を呼ぶところだが、筆者は文字通り血眼で端から端までもう一度点検した。

すると、数mmだが呼吸器の管に亀裂があり、空気漏れしていた。気づかなければ、何かのはずみで亀裂が広がり、呼吸が苦しくなる。下手をすると呼吸できなくなるおそれすらあった。

さて、そこで終わりではない。不具合がある管をそのままにはできないので、交換しなければならない。

病院なら2人、3人がかりで安全を期する作業だ。が、訪問在宅、しかも筆者の訪問看護ステーションに呼吸器管理をまともにできる看護師は筆者しかいなかった。から、1人でやるしかない。

まさに全集中の呼吸で交換し、事なきを得た。

これは、そう簡単に看護師なら誰でもできることでは、多分ない。

本来のホスピスは「看取り医療ケアの最高峰」

そもそもホスピス緩和ケアとは、「苦痛緩和」を的確になすことである。

特に末期がんの痛みや、例えば体表面に露出してしまった手遅れのがん組織などのケアは、専門的かつ丁寧なケア、さらにメンタルなケアまで必要になる。

さらにいうと、永年のホスピスケア者には「がんだけがホスピス緩和ケア対象ではない。すべての死苦はホスピス緩和ケアすべき」という発想もあり、千葉の「花の谷クリニック」のように、あえて一般病床として緩和ケア病床としていないホスピス施設も存在する。

筆者も訪れたことがあるが、整った環境にさまざまな工夫、何より志高いリーダーがいた。

本来のホスピスとは、医療制度的には緩和ケア病棟(PCU)であり、手厚いケア体制と教育体制が制度として要求・保障された「看取り医療ケアの最高峰」である。

その緩和ケア病床は、敷居の高さゆえ、全国で1万床足らずしかない。

また、そのスタッフを指導すべき立場となる「がん専門看護師」は修士資格者だが、全国でわずか1,172名、所定の研修(半年)による緩和ケア認定看護師でも2,332名、がん性疼痛ケア認定看護師が677名にすぎない。

これらは、その教育・研修の経済的・時間的負担から、ほとんどが大病院に偏在するとみられる。

筆者ですら、その負担の大きさから資格取得できず、しかし幸いにも我が国のホスピス緩和ケアのリーダーである方々と出会い、日本赤十字社医療センター緩和ケア研究会で20年近く、毎月の学びの場を得た。

しかし、これはまさに天恵であり、お誘いしても続いてくる人はいなかった。それほど、専門的な修練とは厳しい。

安易にホスピスなどと語る、いや、騙られては困るのだ。

「ホスピス」の呼称を許可制にすべきだ

いわゆる景表法「不当景品類及び不当表示防止法」では、事実と異なる商品・サービス等の表示や、紛らわしい、誤解を招くような表示は禁止されている。

その点でホスピス型住宅は、ホスピスとは名ばかりのインチキ、しかも診療報酬・介護報酬詐欺であり、刑事罰に相当することはもちろん、景表法等の消費者保護の観点でも違法ではないか。

国は速やかに実態調査し、きちんと緩和ケア病床、せめて在宅ホスピス活動をきちんとしている訪問看護ステーションや訪問医のレベルでないなら、法制化し、ホスピスという呼称をやめさせるべきだ。

そして、ホスピスや緩和ケアの呼称は、その内実に応じた許可制とするべきだ。

【参考】

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