「さすが」と言われる自慢、「うざい」と言われる自慢

黒坂岳央です。

不思議なことに同じような内容でも、「さすが」と称賛される自慢と、「うざい」と眉をひそめられる自慢がある。この違いはなんだろうか。

本人は「自分はこんなに合理的に生きている」とスマートさをアピールしたつもりなのに、聞いている側には「ズルして得した自慢」「他人をバカにした自慢」に聞こえていることがある。

そして厄介なのは、本人にはその境界線が意外と見えていないことである。SNSでは良かれと思って言ったことが思わぬ炎上をすることがよくある。

両者を分けるものは何なのか。持論を述べたい。

LordHenriVoton/iStock

「さすが」と「うざい」を分けるもの

最初に結論から言うと、称賛されやすいのは「社会貢献につながる自慢」で、逆に反感を買いやすいのは「フリーライドに見える自慢」である。海外移住が非常に分かりやすい事例である。

たとえば大谷選手のように海外移住して、現地の人と勝負し、外貨を稼ぐアスリートや起業して勝負している人は大きく称賛される。大谷選手は懐の大きい人物なのでそんなことはしないが、仮に彼が結果を誇ることをしても否定する人は少ないだろう。

ここには「日本人のプライドを高めてくれる活躍」「稼いだ外貨の一部を日本経済に貢献する」という公益性があるためだ。彼らの活躍は日本と日本人に利益をもたらす活動として受け取られるので称賛される。

他にも起業して成功した、TOEIC満点を取ったという話も主張だけに留まらず、「こうやったらうまくいった」というノウハウも紐づいてくることが多い。

たとえば「50代から独学で英語を勉強してTOEICハイスコアをとった」となれば今、心細く頑張っている独学者に希望の光を照らす事例になる。こうした達成報告は意図せず、第3者に貢献しているものがあるので称賛されるのだ。

一方で「税金が高い日本を出て、税率の低い国に移住した」みたいなハック話は否定的に取られやすい。特に日本語で日本人相手に日本円を稼いで、そのお金で生活をしているとなれば「すごい」というより、「売国奴」みたいな見られ方をすることもある。

それ自体にまったく違法性はないし、日本は税負担が大きいという問題提起は説得力がある。だが、日本の富を海外に流出させ、円安の一助になっている事実は否定できない。「確かにスマートかもしれないが、わざわざ自慢げにいうことか?」という印象を持たれるのである。

「黙っておいた方がいい話」は確実にある

別に違法でないなら誰が何をやっても自由なわけだが、胸を張っていえるものではない、黙って静かにするべきことはある。

たとえば過剰な節約、節税自慢は反感を買いやすい。テクニックの公開は無駄な支出の削減として受け取られるが、「税金なんて払ったら負け。経費を使いまくってこれだけ減らした」ここまでいうと「挑発」に聞こえてしまう。

最近では「夜の仕事」もそうだ。「コスパいいから」という動機で働く人もおり、違法ではなくリスクも取っているので好きにしたらいいと思っている。自分はそうしたサービスを人生で一度も利用したことがないし、全く興味がない。

ただ昨今は過剰な承認欲求から「安い給料で普通に働いている人はバカ。若さを売って大きく稼がないと損」といった挑発に聞こえる投稿が流れてくると、人によっては心がざわつくだろう。そうなると「人に自慢できるような仕事なのかよ」と反撃される。

こうなると、仕事の是非ではなく、お互いの生き方を侮辱し合うだけになる。極めて無益な争いに落ちる。

自慢しない方がいいことはあるのだ。

同じ事実でも「言い方」でここまで変わる

筆者自身、記事や動画を出しているので実体験を主張のサポートにすることがある。その際、100%誰からも反感がないようには難しい。だが、無用な反感を増やさないために気をつけていることがある。そのコツをシェアしたい。

1つ目は「主張と自分の感想をわける」ということだ。たとえば「東京に住むなら経済的合理性の計算はする価値は高い。東京は生活コストが高く、ある程度の収入や東京でなければ得られない仕事上のメリットがない人にとって、住む経済合理性は低くなりやすい」と主張したことがある。

自分はその根拠として家賃や平均年収などのデータを示し、さらに筆者自身が東京に住んで感じたことを紹介した。もちろん、この主張に反対する人はいるだろう。「東京にはお金では測れない魅力がある」という反発は当然想定しないといけない。

だが、ここから一歩踏み込んで、「低収入なのに東京に住み続ける人は愚かだ。損益分岐点も計算できないマネーリテラシーの低い人たち」と言ってしまうと、話はまったく変わってしまう。

前者が「東京に住むという選択」の合理性を論じているのに対し、後者はその選択をした人間まで評価しているからだ。

2つ目は、自分を上げるために他人を下げない。これは油断するとついラインを踏み越えてしまうので注意が必要だ。

「会社員なんてコスパ悪い」というと敵を作るので、「自分は独立の方が性格に合っていた」という方が良い。また、「日本は税金高すぎて住む奴は情弱」ではなく、「自分の仕事では海外居住のメリットが大きい」とする。

自分のやっていることが正しく、それをしない人は非合理的などというと「うざい自慢」になるので注意が必要である。

◇

うざい自慢は「本人が知性だと信じていることをデリカシーなしに見せつけた時に起きる。筆者は「言わない知性」もあると思っている。

世の中には、正論でも言わない方がいいことがある。節税や海外移住は自由である。だがそれをわざわざ「自分は(賢いので)こんなに負担を回避できた。まだ払っている(愚かな)人なんている?」というと炎上する。

「さすが」と言われる人と「うざい」と言われる人の差は、能力よりも「何を自慢しないか」に表れるのかもしれない。

 

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「Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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