ニデック社長辞任で5600億円の赤字:永守氏は闇将軍として復活?

モーター大手ニデックの経営混乱が、いよいよ深刻になってきた。同社は9月29日、岸田光哉社長兼CEOが辞任し、後任に戒田理夫専務執行役員兼CTOが就任すると発表した。翌日に公表された2026年3月期決算では最終損益は5646億円の赤字に転落した。

朝日新聞

「赤字は悪」が生んだ巨額赤字

皮肉なのは、この会社が長年「赤字は悪」と叩き込まれてきたことである。第三者委員会は、創業者の永守重信氏の強力なリーダーシップのもと、達成困難な業績目標がトップダウンで割り当てられ、営業利益目標を達成するための強烈なプレッシャーが会計不正の背景にあったと認定した。

評価損や固定資産の減損を避け、本来費用にすべきものを資産に振り替える。つまり、出すべき赤字を先送りしてきた結果、そのツケが一気に表面化したのだ。

今回計上された減損6321億円のうち、車載事業関連が2311億円、家電・商業・産業用が3351億円に達する。会社がそれまで示していた追加減損の検討対象は約2500億円だったから、実際の損失は想定をはるかに超えた。

なぜ岸田社長が辞めるのか

さらに不可解なのが岸田氏の退場である。ニデックは辞任の理由について、過年度決算を訂正する過程で、岸田氏に財務報告上「必ずしも適切とは言いかねる言動」が確認されたと説明している。

しかし第三者委員会の最終報告書は、岸田氏が今回発覚した不正会計を指示、命令、容認した事実は認められなかったとしている。それどころか、岸田氏は「レガシー負債」を処理する構造改革を永守氏に繰り返し提案していたと評価している。

一方で委員会は、今回の不正会計について「永守氏が最大の責任を負うべきだ」とまで指摘した。その岸田氏が辞任し、今年2月に名誉会長まで辞任した永守氏は会社の表舞台から姿を消している。

後任社長は「永守人脈」

そこで気になるのが、後任の戒田理夫氏である。彼は1979年にリード電子(現ニデックアドバンステクノロジー)へ入社した生え抜きで、現在70歳。ニデック再生委員会の副委員長も務め、永守財団の評議員にも名を連ねている。

現在のニデック取締役会は、6月時点で13人中10人が社外取締役という構成で、形式上は創業者から距離を置いたガバナンス体制になっているが、再建を進めていた外部出身の岸田氏が突然退場し、後任には永守氏と長年接点を持つ古参幹部が就いたとなれば、「永守氏は本当にニデックから去ったのか」という疑問が出るのは当然だろう。

「永守商店」に戻るのか

ニデックは会計不正だけでなく、品質不正でも844件の不適切行為が認定されている。東証からは特別注意銘柄に指定されており、内部管理体制の改善が不十分と判断されれば上場維持にもかかわる。

ニデックをここまで大きくしたのは、間違いなく永守氏だが、今回の第三者委員会報告が示したのは、その強烈なトップダウン経営こそが、不正を生み出す企業風土とも表裏一体だったという事実である。

永守氏が表舞台を去ったあとも、その人脈と企業文化が経営を動かし続けるのであれば、名誉会長という肩書を外しただけでは意味がない。ニデックの試金石は「永守重信がいなくても経営できる会社」になれるかどうかである。

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