永守重信氏が創業したニデック(旧日本電産)の上場維持の可能性が取りざたされています。この問題についてさらっとおさらいしながら今後どうなるか、その可能性を探ってみたいと思います。

永守会長(当時) ニデックHPより
事の発端は25年6月にイタリア海外子会社の案件で、中国製をイタリア製と偽り、アメリカに輸出し関税を逃れるために不正な原産地証明を出した事件でした。ここから中国関連会社に問題の焦点が移り、そこでも問題が発覚しましたが、とどのつまりは本社がそれに関与していたことが露呈します。それは驚くべき程と言ってよく、まるでニデック社は全身ガンで侵されているような病状でありました。
ここで持ち上がったのが永守重信氏の経営者としての手腕。ご承知の通り氏は極めてストックで数字に厳しく、体育会系のようなスパルタ感もありました。自分にできるなら他人にもできるという意識があり、独特のスタイルで2兆円規模の企業にまで成長させたのでありました。が、当然、歪があり、そこに小さな穴が開いたことをきっかけに一気に出てしまった、これがその顛末であります。
よくあるのが一人の経営者がその指揮権を握り続けると知らぬ間に腐敗が起きる、という点です。
私が勤めて倒産したゼネコンもある意味そっくりな体質だったと思います。特に私はその中で実務をやり、中枢情報を得られる立場にもあったこともあり、その尋常ではない数々の問題は墓場まで持っていかざるを得ないものもあります。それ以外にも私が知っている事案はそれなりにありますが、全社レベルだと相当ひどい状態だったと思います。特に決算対策は普通ではありませんでした。決算期になると経理部門が決算一次締めをトップに提出、それをみてトップは「鉛筆を舐める」のです。そして「利益は〇〇億円にしろ」と天の声が経理部長を通じて下界に伝わります。すると全社、一斉に調整が始まるのです。
私はそれを見て経理の数字はこんなに簡単に動くのか、と驚いたものです。年によっては決算二次締めでも満足せず、三次に及ぶ時もありました。なぜトップはそこまで経理の数字にこだわるのか、といえば1つは見栄、1つは外部資金調達において成長しているように見せる必要があったのでしょう。特に見栄は第三者というより買収した子会社などを含め、関連者に絶対的な信頼関係に基づく組織の構築が必須であったのです。
ここで注目べきは経理部門が暗躍の中心である点です。天の声は本社経理から各支店、及び国内外子会社に伝わります。「あともう少しひねり出せ」と。ある意味、テクニカルな処理を求められるので全社的な対策ではなりません。手口を披露するわけにはいかないのですが、1つだけ例を出します。建設会社の祖業である工事現場の所長に懇願が行くことが多いのであります。そのやり口は「過検収」です。これは現場で業者からの請求を過大に上げさせ、出来高を膨らませ、その上で応分の利益を計上するのです。平たく言えば一種の「水増し請求」。長期の工事は進行基準で経理処理しますので決算期をまたぐ場合これは使えた手段なのです。
ニデックのケースも似たような処理があったように見えるのです。つまり買収に次ぐ買収で74社も手に入れたのです。これは買収した企業を本社に吸収しない限り、同数だけ子会社があり、同数だけ経理の処理があるのです。これが不正の温床になりやすいのです。数字は作れるのです。
これに対して監査法人の監査はある意味徹底しています。毎年どんどん厳しくなっていくと言ってよいでしょう。理由は監査報告書に対する責任所在であります。第三者がそれを見ることでその数字を信じるのです。仮にその数字に不正、隠蔽があれば数字の根拠を根底から覆されるわけです。よってニデックの場合、完全なる形に戻さない限り監査法人が首を縦に振らないわけです。
今回岸田氏が社長を辞任しました。発表当初様々なうわさが出ましたが、私が見る限り、数字の見方が甘く、結果として6321億円という巨額の減損を計上せざるを得なかった点が責任の所在だろうと思います。氏の経歴からして経理部門は得手ではなかったような気がします。
では今回社長に就任した戒田理夫氏ですが、氏も経理部門に強いかどうかはわかりませんが、私の見る限り、経理の数字そのものはおおむね落ち着いたように見えるのです。あとは経理部門の人材の刷新です。たぶん、これができないのでしょう。理由はそんな簡単に経理部長ができる人がいないのです。この点については戒田社長より南井正之代表取締役の手腕になるとみています。戒田氏は取締役ではなく、執行役員で社長です。一方、南田氏は現状ニデックのトップであると言えます。氏はトヨタ自動車の人事部長を歴任しており、HRのプロだと理解しています。既に問題ある人材の特定もされており、あと20人規模とされています。
よって私の見方としては10月末の東証への報告期限までにこの人事刷新をすることで限定意見を監査法人から取得することを目指すのだと思います。できると思うか、と言われると内部を見ているわけではなく、あくまでも評論的な立場になりますが、できる可能性は6割はあると思います。また仮に10月末までに監査法人の何らかのお墨付きを得られなくてもそこから東証は委員会を開いて決定するのに数か月かかる見込みです。10月末で一定の進捗があれば監査報告に多少の日程の食い込みがあっても許容される可能性はあります。
ポイントは経営陣の新体制での本気度の見せ方だと思います。問題の根源がある程度特定できているならば1か月で死ぬ気で頑張れば乗り越えられないこともないと思います。
あくまでも公開情報をベースにした推測ですのでこれに基づく投資には一切責任を負いかねますのでその点はご理解のほどお願いします。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年10月2日の記事より転載させていただきました。







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