トランプ大統領が、とうとう言ってはいけないことを言ってしまった。米国の政府債務は40兆ドルを突破した。どうやって返すのか。増税するのか、歳出を削減するのか。それとも経済成長で乗り切るのか。
TIMEのインタビューでトランプ氏が示した答えは、もっと大胆だった。「一定のインフレも、この債務を非常に速く返済することになる」。Forbesはこの発言を「ビットコインを買う40兆ドルの理由」と報じ、BTCはこの半年の最高値をつけた。

Al Jazeera
40兆ドルの政府債務は返す必要がない?
政府債務には、普通の借金とは決定的な違いがある。米政府の借金はドルであり、そのドルを発行するのも米国だからだ。
たとえば政府が100ドルの国債を発行したとする。それを買った人は10年後に国債の償還で100ドル受け取るが、そのとき物価が2倍になったら購買力は50ドルに減る。政府は額面上は全額返済したが、半分は踏み倒したのと同じだ。
つまり借金をインフレで溶かすのだ。これがインフレ税である。「実質債務のデフォルト」とも呼ばれる。これには法律も税務署もいらない。トランプが「大インフレになるまでビットコインを買え」という大統領令を出せばいいのだ。
JPモルガンが予言していた「債務のインフレ処理」
JPモルガンは2026年の見通しで、歳出削減や増税が政治的に困難なら、政策当局がFRBの独立性を弱め、高めのインフレと低い実質金利によって政府債務を実質的に減らすシナリオを指摘していた。
そして今、そのシナリオを米大統領が口にした。トランプは債務問題について「成長が債務を返す」と強調する一方、FRBの高金利を批判した。中間選挙で共和党が勝利したら、全国民に5000ドル配るとも約束している。これは確実にインフレになる。
もちろんインフレで40兆ドルの借金が消えてなくなるわけではない。損失を誰かが負担する。この場合は米国債を持つ人や、年金生活者や、インフレ率ほど賃金が上がらない労働者である。
ドルから実物資産への逃避が始まる
市場参加者が「政府は40兆ドルの債務をインフレで処理するかもしれない」と考えるなら、ドルから実物資産へ逃げるのは合理的である。ゴールドでも不動産でも株でもいいが、そのもっとも極端な選択肢がビットコインである。
ビットコインには中央銀行がない。発行上限は2100万BTCと決まっている。ドルはいくらでも増やせるが、ビットコインは増やせない。だからインフレを恐れる人々が、稀少なBTCを買うことは合理的だ。
米政府はすでに「戦略的ビットコイン準備金」をつくっている。トランプは2025年3月、政府が保有するBTCを原則として売却せず、BTCを追加取得する方針を表明し、ビットコインを「デジタルゴールド」と呼ぶ。
ビットコインは「安全資産」になった
もちろん、この作戦には大きな問題がある。投資家がインフレを予想すれば米国債を安い金利では買わなくなる。長期金利が急上昇し、40兆ドルの債務を借り換えるコストが膨張する。新発債の金利が跳ね上がり、既発債は暴落する。
だからインフレ税はフリーランチではないが、政治家にとっては魅力的だ。発展途上国ではよくあることだが、先進国では冗談にしかならない。しかしトランプがいうと冗談ではすまない。
ビットコインは今年最大の強気相場になっている。その材料は、AIでもETFでも暗号資産規制の緩和でもない。世界最大の債務国の大統領自身が、「インフレで借金を減らせる」と言い始めたことなのだ。







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