必要ならば値上げを決断し、誠心誠意伝えよう

今やあらゆるモノの価格が上がっています。

こうなると、今の価格を維持するのは限界です。

しかし客離れが怖くて、ついつい値上げをギリギリまで先延ばしにしたくなる人が多いのも現実です。

また「値上げは避けたい」と考え、価格据え置きで容量を減らす「ステルス値上げ」をする会社もあります。

しかしこれは、消費者に対して誠意ある対応とは言えません。そして消費者は、意外とその狙いを見抜きます。こうなると信頼が上がることはまずありません。確実に下がります。

さらに、逆張りで大胆に値段を下げて目立つことで、集客して販売額を増やし、より稼ぐしたたかな会社もあります。しかし市場のパイは限られているので、インフレ時代の値下げ競争は消耗戦になります。

では、私たちはどう考えるべきなのでしょうか。

まずインフレ時代では、値上げの先延ばしは、命取りになりかねません。

価格戦略の第一人者であるハーマン・サイモンは、このように述べてます。

「インフレの進行による最大のリスクは、必要な価格引き上げの実施が遅すぎたり、もしくは全く行われなかったりすることである。価格引き上げの機会を逸したのちにこれを取り戻すことは難しい」※1)

つまり、インフレ時代に値上げを耐え続けて、その後インフレが終わってから耐えきれずに値上げすると、逆に悪目立ちしてしまうのです。

逆にインフレは、裏を返せば、数少ない値上げのチャンスです。

値上げで、ある程度の客離れがある事は仕方がないことですが、コストが増えて、本来の利益が減るのであれば、値上げを真剣に考えた上で、値上げを決断し、そのことをお客様に誠心誠意伝えるべきなのです。

赤城乳業は、1979年のオイルショックの物価高に直面して、カップかき氷『赤城しぐれ』を30円から50円に値上げしました。

すると売上が急減し、倒産の危機に瀕してしまいました。

この時、同社は「値上げは最終手段」という教訓を学びました。

その後、赤城乳業は看板商品『ガリガリ君』の価格を25年間「子供が気軽に買えるように」と60円に据え置いてきました。

しかし2016年、原材料価格や物流費の高騰で利益が出ない状態に追い込まれました。

社内で2年以上議論した末、断腸の思いで70円に値上げしました。

この時、赤城乳業は、「60→70」という文字の下で社員が何十人も並んで深く頭を下げるお詫び広告を展開しました。

すると正直に値上げの必然性を訴える広報戦略が功を奏し、売上は逆に10%増えました。

お詫び広告を見た英国BBCは、「なぜ値上げするのに謝らなければいけないのか」と取材に来たそうです。

その後、さらにインフレが加速し、70円でも厳しくなりました。

そこで2024年、赤城乳業は「70→80」という文字の下で、社員が何十人も並んでさらに深々と頭を下げるお詫び広告を展開しました。

写真の下には「前回よりも深くお辞儀をしております。」

インフレ時に値上げを躊躇することは、命取りになりかねません。

必要な時は勇気を持って値上げして、値上げの必要性を誠心誠意伝えるべきなのです。

※1)『価格のマネジメント』ハーマン・サイモン著


編集部より:この記事はマーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏のオフィシャルサイト(2026年10月6日のエントリー)より転載させていただきました。永井孝尚氏のメルマガのご登録はこちらから。

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