「頑張れ」はもう言うな。部下を動かす3つのズルい質問

(前回:「どうせ無理」って言う人の頭の中、だいたいキツネ説)

最初に言っておく。「君ならできる」は効かない。少なくとも、デカい壁の前でフリーズしてる人には。

役員をやっていた頃、期待の若手に新規の大型案件を任せたことがある。2週間たっても動かない。で、言った。「君ならできるって」。翌週、彼は動いた。転職サイトに登録するほうに。(笑えない。今でも笑えない)

『チームは「仕組み化」でうまくいく 組織力を高める行動経済学』(橋本之克 著)祥伝社

動けない人の頭の中では、もう失敗の映画が上映中なのだ。評価が下がる。責任を取らされる。会議で詰められる。そのストレスから逃げるために、脳は「どうせ無理」という結論を先に用意する。認知的不協和ってやつの自己防衛だ。

だからリーダーの仕事は、背中を押すことじゃない。「どうせ無理」が入り込む隙間を、先に埋めることだ。手は3つある。

その1。成功した場面から先に聞く。

人間は放っとくと失敗から考える。なら順番をひっくり返せばいい。「このアポ取れたら、何を提案する?」「これ当たったら、チームどうなる?」。これだけ。たったこれだけで、頭の向きが「どう避けるか」から「どう取りに行くか」に変わる。ズルいくらい簡単。ぶっちゃけ、問いを1個変えるだけ。

その2。課題を、笑えるくらい小さく刻む。

「この大型案件取ってこい」は、言われたほうからすれば富士山を指さされてるのと同じだ。登れるか、あんなもん。でも「来週、3件だけ電話してみよう」なら? 言い訳を探すヒマもなく手が動く。

ここは大事なのでしつこく言う。認知的不協和がいちばん暴れるのは、動く前だ。動いちゃえば「あれ、意外といけた」という事実が先にできて、気持ちのほうが後からついてくる。やる気を待つな。先に手を動かさせろ。

その3。本人の過去から、勝った記憶を掘り出す。

「無理」と言ってる人にも、似た壁を越えた経験はたいていある。だから聞く。「前にこういう状況でうまくいったの、どんなときだった?」。未来の不安はふわっとしてるから無限に膨らむ。でも過去の事実はガチガチに具体的だから、本人も否定できない。他人の「できるよ」より、自分の記憶の「できた」のほうが100倍効く。(100倍は盛った。でも体感はそれくらい)

似た案件で成果を出した同僚の話をチームで共有するのも、同じ理屈だ。「あいつにできたなら俺も」。人間、単純である。いい意味で。

で、最後に。この3つを全部ひっくり返す地雷がある。挑戦して失敗したら損をする職場、だ。

結果じゃなく、手を挙げたこと自体を評価する。「うまくいかなくても、あの案件に手を挙げたのは評価してる」。この一言が言えない上司の下では、3つの質問なんか全部ムダだ。断言していい。

人がフルスイングできるのは、空振りしても怒られないと知っているときだけだ。知らんけど。いや、これは知ってる。

※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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