どうして日本人の働きがいって急上昇したの?と思ったときに読む話

城 繁幸

少し前になりますが、日本人の働きがいが急上昇したことが話題となりました。

昔からいろんな国際調査で「日本人は仕事も会社もキライで仕事に対する熱意が異様に低い」という結果をたたき出しているというのは割と有名な話です。

「愛社精神に富み、仕事に人生を捧げるような勢いで働くモーレツ会社員」というのは映画や小説の中だけのフィクションなんですね。

まあ会社によっては少数存在していたのかもしれませんが、少なくとも統計とってみると下記のような散々な結果になったわけです。

【参考リンク】どうして日本人って仕事が嫌いなのに転職や自己研鑽に消極的なの?と思ったときに読む話

それが、なぜ初めてランクアップに転じたのか。

いい機会なのでまとめておきましょう。きっと個人のキャリアにとっても示唆に富む内容であるはずです。

なぜ日本人の働きがいは低かったのか

では、なぜ日本人の働きがいは低かったんでしょうか。それは日本が世界でもまれなメンバーシップ型雇用を採用してきたからです。

具体的な仕事内容を明確にしたうえで就職し、給料もその内容で決まるジョブ型と違い、メンバーシップ型では「正社員という身分」に対して終身雇用で就職することだけが取り決められます。

具体的にどこに配属され何の仕事をするのかは配属されるまでわかりませんし、その後も会社都合でいろいろな部署に移り、様々な職種を経験することになります。

たとえば東京で採用されて九州に営業職として配属、5年後に大阪に行って総務、さらに5年後に東京に戻って営業支援なんてキャリアパスをたどって(社内限定ですが)潰しのきくゼネラリストに育成されるわけです。

そうする理由は、余剰人員を人手不足の拠点に移すことで雇用を維持するためです。そう、本来は労働市場を通じて行う機能を、一社内で完結させているわけです。終身雇用だから。

逆に言うと、特定の仕事にだけコミットされてしまうと会社は困るんですね。

「おれは営業なんてやりたくないし地方なんて行きなくない、俺がやりたいのは〇〇だ」なんて言われたら終身雇用ムラは維持できませんから。

やりがいや自己研鑽への意欲といった「仕事に対する前向きな感情」というものは、基本的に仕事に対するコミットの度合いに比例するものです。

自分で選んだ仕事なればこそ人は努力も自己研鑽もするし、ここ一番では踏ん張って耐えられるものです。

でも、誰かがある日ふと投げてきた仕事だったら……そして、またいつ誰かの都合で違う仕事にジョブチェンジするのかわからないとしたら。

まあ、基本受け身で適当に流しておこうと考えるのは無理もないでしょうね(苦笑)

ざっくりいうと、これが「日本人が仕事が嫌いで、自己研鑽の意欲も低い」ことの構造的な要因ですね。

日本人が悪いというより、日本企業自身がそういう人材が便利なのでせっせとそういう風に育成してきたと言うべきでしょう。

ではなぜ急に「日本人のやりがい」は定位置だった最低ランクから急上昇したのか。それはやはりコロナの影響でしょう。

筆者は以前より「日本企業の労使は終身雇用を維持するため、普段から昇給を抑えて内部留保している。いわば“終身雇用保険”を会社員は負担しているようなものだ」と述べてきました。

コロナ禍の緊急事態でも本邦の失業率は驚くべき低位安定っぷりを見せつけました。

新型コロナウイルスが世界経済に与えた影響~雇用の観点から

それがまさに冒頭記事中にある以下の評価につながっているわけです。

設問別にみると、「この会社で生じた利益は、私に公正に分配されていると思う」という設問での肯定率の平均は日本で72.0%で、他国の平均(58.5%)よりも13.5ポイント高かった。

要するに、ほとんどの人が存在を意識すらしていない“終身雇用保険”がその効果をフルに発揮し、コロナ禍でも日本の雇用を守って見せたことで「なんでかしらないけど自分は大事にされている」と実感したサラリーマンが多かったんでしょうね。

逆に、同じコロナ禍でもスパスパ首を切られた解雇ハードルの低い国は、その辺の順位が下がったんでしょうね。それも日本のランキングが上がった大きな理由でしょう。

23〜24年版にかけて5ポイント低下したカナダは、「この会社では従業員を解雇するのは『最後の手段』とされていると思う」といった項目の肯定率が下がった。

ただ、筆者はコロナが日本の働きがいをアシストしたルートは「“終身雇用保険”の威力を知らしめたこと」以外にもう一つ存在し、そちらのルートの方が強力だったと考えています。

それは、コロナが緊急事態下のリモートワークを通じてジョブ化を後押ししたことですね。

以降、
コロナは日本人をメンバーシップから一時とはいえ切り離し、目の前のジョブに向き合わせた
何もしなければ、日本人の働きがいはまた最下位に戻ってしまう

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以降、
コロナは日本人をメンバーシップから一時とはいえ切り離し、目の前のジョブに向き合わせた
何もしなければ、日本人の働きがいはまた最下位に戻ってしまう

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Q:「一度応募した会社に再応募しても大丈夫でしょうか?」
→A:「一定の評価はされているはずです」

Q:「日本の中高年引きこもり問題の根っこにあるのはやはり就職氷河期問題でしょうか?」
→A:「もともとあった日本型雇用の構造的課題に氷河期問題が上乗せされた感じですかね」

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’sLabo」2026年10月8日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。

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