日本では、ここ30年の停滞の理由の一つが、正社員の地位を守りすぎて、解雇規制を緩和しなかったからだという意見があります。

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そして、正社員を解雇しなかったしわ寄せが、私のような氷河期世代に押し付けられ、その少なからずが新卒で正社員になることができず、非正規雇用で働くことになってしまいました。その人たちは50代になっても非正規雇用のままで、このまま高齢化しようとしています。
ところで、実際に正社員の解雇規制が緩和されている国では、一体どうなっていたのでしょうか。日本は正社員の解雇規制を緩和するべきだったのでしょうか。私はするべきだったと考えています。
私はこれまで日本、アメリカ、イギリス、イタリアで働いて、実際に規制が緩和された国はどうなっているかというのを現場で体験してきました。これは私の著書『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズでも度々解説しています。
欧州で最も解雇規制が緩いイギリス
昔は組合が強く、解雇規制が厳しかったイギリスは、経済を活性化するために、金融だけではなく雇用も含め、様々な規制を緩和しました。雇用規制は実は欧州では1番緩くなっていて、アメリカに近くなっています。これは日本の方のイメージと大きく異なると思います。イギリスは欧州にありますが、正社員の雇用を守ろうとする欧州大陸とは考え方が大きく異なります。
イギリスでは日本よりも正社員の解雇がはるかに簡単で、会社が黒字でも戦略の変更により、部署ごと解雇するなどといったことが全く珍しくありません。驚くべきことに、自治体や軍隊まで解雇やレイオフを行います。私の知人らも軍や金融機関、学校などでクビを経験しています。
非正規雇用の賃金が正社員より高い理由
一方で、もちろん非正規雇用の人も存在していますが、非正規雇用の人は基本的に賃金が割増になっています。そして、その賃金というのは大体業界標準のレートが決まっているので、それなりの技能や実績があると買い叩かれることはあまりありません。透明度が高いので、雇用者側が極端に低い賃金で雇うということができません。また、人材派遣会社を使っても「それではレートが低すぎて御社の評判が下がりますよ」ということをエージェントがはっきり言います。
これは規制でバリバリというよりも、自由市場なので、あまりにも安い賃金を提示するような企業というのは、批判にさらされて営業が難しくなってしまうからです。要するに、良い人が来なくなります。悪い噂も広まります。
一方で、正社員の場合、解雇がはるかに簡単ですから、正社員なのですが非正規雇用のような状況です。一応正社員ですから、様々な福利厚生を会社側が提示します(ただし日本ほど手厚くありません)。その代わり、基本給やボーナスは非正規の人より安くなっています。だから、福利厚生があることや、非正規よりは長いという前提の雇用期間で、賃金とトレードオフになっています。
解雇を前提にした働き方と旺盛な起業意欲
では、このような状況で、イギリスの働く人たちはどんな様子かというと、それが当たり前になってしまっているので、いつ解雇されてもいいように、常に準備をするというようなメンタリティーです。
つまり、解雇されても何とか生活ができるように多めに貯金をしておくとか、投資をしておくとか、雇われるのではなくて、自ら起業して仕事を作り出すという考え方が強いのです。そして、転職先を確保するために外部の人とのつながりを保ちます。なんだかんだ言って一番強いのがコネだからです。
そして、日本と一番違うのが、起業意欲です。自分が社長だったら解雇されることはありませんから。会社員でも普段から小さな副業をやってみたり、もし副業の方が当たれば、そっちを本業にして自営業になるという人は結構います。私の周りにもポツポツそういう方がおられます。うまくいかなくなったら、また正社員に戻ることもあります。メンタリティーが非常に柔軟です。
そして、失敗してしまっても、別にそれは自分が悪いのではなくて、市場の環境が変わったとか、ダメでもまたやり直せばいいよという前向きな考え方です。
これは日本の方が思っているイギリス人のイメージとは随分違うのではないでしょうか。イギリス人というのは、実は自由闊達で進歩好み、割と前向きです。アメリカ人よりもメンタルが強いかもしれません。私は彼らのそういうメンタリティーが気に入っています。
日本にも必要な解雇規制緩和と起業支援
そういうメンタルの人が多いので、政府の仕組みというのも彼らを後押しするようになっています。イギリスは起業が欧州で最も簡単ですし、破産もしやすいのです。資金調達も簡単です。事業をやる場合の事務処理も非常にわかりやすくなっています。サポートする業務、例えば会計士や弁護士というのも明朗会計です。保険も様々な種類があるから、副業をやる人向けの保険が豊富です。業種別に様々なユニークな保険があります。
日本でも政府は解雇規制の緩和を考慮していると思いますが、単に規制を緩和するだけではなく、起業や副業と本業を並走させる「パラレルキャリア」を進めるなど、税制や手続きの簡素化、支援サービスの充実といった側面での支援も行うべきだと考えます。今のまま解雇規制の緩和を進めても、不安になるばかりです。
さらに、非正規雇用の人々に、資格や技能に合わせた賃金がきちんと支払われる仕組み、非正規から正規への転換をごまかすような悪徳企業への厳しい罰則、労働関連の訴訟を迅速に解決できるイギリス式の労働審判の仕組みの導入なども進めるべきです。今の日本では働く方に不利な仕組みばかりで、フェアな状態だとは言えません。
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日本の常識は欧米の非常識 新聞やテレビでは学べない世界の現実
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