レバ刺しと倫理憲章 世界は勝手な解釈で動いている

2012年06月02日 10:35

6月だ。毎年そうだが、「新しい期だ。俺はやるぜ、何かを」という厨二病的4月病と、「もう、俺、ダメ、オワタ」という5月病を経て、ようやく地に足のついた毎日が始まる。

この6月だが、焼き肉ファン、レバ刺し好きにとって、最後のチャンスとなりそうだ。「人はレバ刺し好きに生まれるのではなく、レバ刺し好きになるのだ」は私が考えた格言だが、そのレバ刺しが焼肉店から消えるのだ。


以前もこのエントリー「サラリーマンの喜びを阻害する厚労省 新社会人よ、初任給でレバ刺しを食べなさい(http://agora-web.jp/archives/1445963.html)」でお伝えしたが・・・、厚労省は昨年4月に発生した焼き肉チェーン店の集団食中毒を受けて、生食用の牛肉の提供基準を厳格化した。生の牛レバーを「レバ刺し」として提供することを禁止する時期を7月1日という方針を打ち出した。店が違反した場合、2年以下の懲役か200万円以下の罰金となるという。生の牛レバーの内部から重い食中毒を引き起こすO157が見つかり、今年の3月から提供を禁止する意見をまとめていた。最終決定はもう少し先になりそうだが、レバ刺しはいよいよ禁止となりそうだ。

レバ刺し好きにとっては、実に残念な方針である。考えて頂きたい。あのレバ刺しの官能的な色、光沢を。地上に存在する何とも違う食感を。レバ刺しのことを考えるだけで、私の口からはピュルピュルとよだれが出てくる。ここにレバ刺しがあろうものなら、胃袋めがけて超特急はやて号ではないか。

そのレバ刺し禁止だが、以前から「裏メニュー化するのでは?」「客が勝手に食べたらどうするのか?」などの点が指摘されていた。誰も庶民のとはいえレバ刺しを食べたいという揺れる想いを止めることができないのだ。耳をすませば、渇ききった時代に送る、まるで雨乞いの儀式のように、庶民のレバ刺し食べたいという声が聞こえてくるのだ。

そんな予感は見事に的中した。この写真を見てほしい。

DSC_0058

通りすがりの焼肉店のポスターだ(http://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/livedoor/imgs/b/4/b4e6e70b-s.jpg)。

「レバー焼き」
とあるが・・・。

誰がどうみてもレバ刺しではないか!ご丁寧にレバ刺し用の肉を使っているとまで書いてある。いかにも「レバ刺しとして食べるのは自由よ」と言わんばかりではないか。

あたかも、新橋や神田にあるマッサージ屋と同じである。「当店は風俗店ではありません」と明記されているものの、誰がどう見ても看板がエロ過ぎるだろというアレと一緒だ。風俗を極めた「風神」という異名をとる知人に聞いたが、あの手の店ではマッサージが終わった後「ヒミツノサービスあるよ。5000エンネ。オニイサン、スル?」(片言の日本語風に読むこと)と誘われるのだそうだ。裏サービスというやつだ。

レバ刺しの裏メニュー化を厚労省はどこまで対応するのだろうか?このように、提供した店が「レバ焼きだ」とバックれたら意味がないわけだ。いかにも、問題が起きて言われてから動き「私たちは食中毒が問題にならないようにちゃんと決まりを作りました」と責任逃れしようとしているようにしか見えない。たしかにレバ刺しはふぐ料理と違って、事前にリスクを回避するのは難しいとのことなのだが。

まったく話は変わるが、これは経団連の新卒採用における倫理憲章も似たようなもので、微妙な言い換え、ご都合主義の解釈で世の中は動いていく。2013年度新卒採用から、就活の早期化・長期化是正のために事実上の就活スタートとなる採用広報活動の本格開始が大学3年の12月1日、選考開始が4月1日となった。

倫理憲章にサインをした企業は、この決まりを実に上手に、守ったようなふりをした。実際は、いくつかの企業がビジネスコンテスト協賛、インターンシップによる接触、ソーシャルメディアを通じた接触などを行なっていたし、4月1日より前に内々定を出していた。

昨年もそうだったが、2014年度も盛り上がりそうなのは、「キャリア形成支援イベント」である。1年生~3年生を対象として、キャリア形成支援という名目で、実際の企業説明や仕事の紹介などに近いことを行うのである。実際の参加者は3年生がほとんどで、早期の就活イベントであることには変わりはない。物は言いようだ。昨年もこの手のイベントはあったが、今年はさらに堂々と行われることになりそうだ。昨年は参画をしぶっていた大手企業が、今年は堂々と参画することになりそうだ。この手のイベントが盛り上がることにより、倫理憲章が有名無実化していく可能性はある。

倫理憲章には罰則規定がない。高校野球の選手宣誓のようなものだ。爽やか球児も正々堂々とやると言いつつも、参加校の中にはタバコを吸う、暴力沙汰、女子マネジャーと不純異性交遊をする、女子マネジャーにドラッカーを読むことを強要するなどの問題を起こしているわけである(最後のはブラックジョークなのでスルーすること)。

「レバ焼き」「当店は風俗店ではありません」並みの華麗な言い換えに学生が納得するかどうか。注目することにしよう。

話が拡散してしまった。

レバ刺しに戻そう。

私はみなさんの中にいる、焼肉好きにのみ、語りかけたい。

我々は1つの偉大なメニューを失おうとしている。
これは敗北を意味するのか?否、始まりなのだ。
我々が掲げるユッケ、レバ刺しの自由化のための戦いを神が見捨てるわけがない。

厚労省は場当たり的な対応をして、日本の食文化を穢そうとしている。我々はその愚かしさを厚労省のエリートたちに教えなければならないのだ。

戦いはこれからである。

6月だ。私のようなノマドワーカー(笑)にはボーナスはないが、サラリーマンには支給される。軍資金はますます整いつつある。

この1ヶ月、食べて食べて食べまくるのだ。

レバ刺し禁止のこの悲しみと怒りを忘れてはならない。我々はこの怒りを集結させ、レバ刺しの続行を願うのだ。

レバ刺し好きよ、立ちあがるのだ!
試みの水平線

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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