都知事選、小池百合子の奇襲炸裂

2016年06月29日 19:40

都知事選連載バナーどうも新田です。崖から飛び降りるつもりで新聞社を辞めたら人生棒に振りかけたのは私です。ところで、参院選がまったく盛り上がらないうちに、クールビズの女王、小池百合子センセが仕掛けてきたことで都知事選のほうが面白くなってまいりました。

小池氏「崖から飛び降りる覚悟」 都知事選へ(産経新聞)

数日前に都連の一部で擁立する動きがあるとは伝えられていましたが、自民の本命候補は桜井パパということで、ひょっとしたら根回ししてねーんじゃないかと思いきや、ウッチー都議を始めとする自民都連は激怒プンプン丸のようです。 

自民、小池氏参戦に困惑=桜井氏説得に影響も-都知事選(時事通信)

“小池氏が自民党幹部らに根回しをした形跡はほとんどなく、党内からは「奇襲攻撃だ」「あんな高飛車な人は推せない」などと批判の声が上がった。”

Japanese Minister of Defense Ms. Yuriko Koike offers a toast in honor of the service Chairman of the Joint Chiefs of Staff Marine Gen. Peter Pace did with Japan and the United States at the Japanese Ministry of Defense in Tokyo, Japan, Aug. 17, 2007. DoD photo by Staff Sgt. D. Myles Cullen, U.S. Air Force. (Released)絶妙なタイミングだった奇襲攻撃

このニュースを受けて思ったのは2点。

まず「万年候補者候補」と自虐的に語っていた小池さんの上昇志向の凄さといいますか、初の女性総理の可能性が難しい状況にあっては、なんだかんだ、やっぱり都知事をやってみたかったんじゃん、ということ。もう一つは、政界きってのセルフプロデューサーぶりの健在ぶりと、記者会見という名の奇襲をこれほど絶妙なタイミングで仕掛けてくる勘は冴えわたっていると感じました。

小池さんが都知事選に出たいなら、このタイミングしかありませんでした。桜井パパの説得が予想以上に手間取っておりますが、ここで名乗りを上げると、パパはもうお手上げですし、桜井パパ以外で自民が検討している岩手の増田元知事では、大衆受けしないので、余計に手を挙げづらい。一方、他党をみれば、蓮舫さんはここ一番で勝てるゲームを捨てて国政を選んでしまって、あての外れた民進党は相変わらず候補者選びの見通しが立っておらず、維新系も、東さんが芸能活動をキャンセルできず、橋下さんもテレビとの契約中とあって動きたくても動けない。左派勢力から宇都宮さんが出たところで、せいぜい2位どまりでしょう。

1991年に小沢さんが磯村さんを擁立した先例のように(連載第2回参照)、自民が党本部の実質的公認候補にこだわれば、小池さんの読みは少し外れて分裂選挙になるでしょうけど、もしかしたらそのシナリオすらも想定内かもしれません。彼女を上回るネームバリューのある候補を立てない限り、勝てるという読みすらしていて、勝てば官軍。まあ、テキトーなタイミングでウッチーと手打ちすりゃいいってことなんじゃないでしょうか。

「崖から飛び降りる覚悟」に潜む巧妙な計算

政治家として支持する、しないはさておき、小池さんのセルフ演出は、見上げたものですね。NHKの昼のニュースと新聞各社の都内最終盤の夕刊締め切りを意識してお昼前に記者会見を設定。産経のウェブサイトには詳報が載っておりますが、最初のセリフがこれ。

“このたびの都知事選に、自民党議員として出馬の決意を固めた。地元の有権者はじめ、さまざまな方々から立候補の要請をいただいた。熟考した結論だ。都政の信頼回復、停滞の解消、山積する現在の課題の問題解決、希望あふれる未来の首都・東京の構築のために、崖から飛び降りる覚悟で挑戦したいと思っている”

「崖から飛び降りる」のワーディングが絶妙ですね。メディアの見出しになる言葉になるように意識して使っているように思います。

そして、ここ。

“国民のみなさまの共感を呼び起こして大義を達成する。その道筋を作ることは、行政官ではできない発想だと思う。”

ははは。こりゃ桜井パパや増田さん、民進党が擁立を検討した片山善博さんへのあてつけですね。舛添辞任当時、「知名度だけで選んではダメ。次は実務型の知事を」という一部の論調に対して痛烈に釘を刺しに行っております。

さらに

初めての東京の女性知事を目指すに当たり、1人1人の生活にきめ細やかな目を向けたい。”

“知事となって任期を約3年半とすることで混乱を避ける方法もある。”

キャリアウーマンのロールモデルとされる政治家や経営者によっては、メディアに対してことさら「女性」を強調しない人も多いのですが、ここでは敢えて「初めての東京の女性知事を目指す」と明言することで、メディアが取り上げたくなる勘所を突き、話題作り→世論喚起を狙っていますね。そして、4年後の五輪開幕時と都知事選が時期的にバッティングするという懸案についても自ら「任期を約3年半」と身を切る姿勢を示したことは、都民の理解を得られやすい。

これもある意味、“争点”を設定したようなもので、今後ほかの候補者もわざわざ自分から途中辞任を口にするかどうか言わざるを得ない状況を一気に作り上げてしまいました。

新進党結党時の演出力は健在

そもそも、小池さんは小泉政権時代のクールビズのエバンジェリストとしてもおなじみなわけですが、政界入りした直後から、テレビキャスターの経験をフル活用して様々な仕掛けをしており、その演出力には定評があります(興味あるアナタは大下英治さんの『権力奪取とPR戦争』をアマゾンポチ)。

日本新党発足時には、後に総理となる細川さんのテレビ写りがよくなるようにディレクションしたり、街頭演説に交響楽団を配置したり、演説会にクラシックを流したりするなど、日本新党の広告PRを担当した電通子会社代理店の人もびっくりする才気ぶりを発揮。新進党の結党大会では、「新進党」と書かれた大きな一枚の幕で、会場のパシフィコ横浜を埋め尽くしてしまう、米大統領選のような演出をやらかしたりなんてのもありました。新進党の政策なんか誰も覚えてませんが(笑)、あの結党式はうっすら記憶にあるという40代以上もいるはず。

新進党
※写真はiRONNAより

選挙プランナーの松田馨さんもすでにツイートしてましたが、「後出しジャンケン」が必勝法となってきた近年の都知事選において、仮に小池さんが勝てば先手必勝という新手の勝ちパターンになる可能性もあります。都知事選メディアウォーズ、いよいよ本格的に勃発ってところのようです。ではでは。

※写真はWikipedia

(アゴラ都知事選連載)

>>第1回「日本で最もアメリカ大統領選に近い選挙」はこちら
>>第2回「都知事選が狂った“元凶”は小沢一郎だ」はこちら
>>第3回「政見放送“生みの親”青島当選の真実」はこちら
>>第4回「大前、渡邉…経営者の待望論と苦戦のワケ」はこちら
>>第5回「「後出しジャンケン」石原流必勝の極意」はこちら

(政治・選挙PR関連の個人ブログ)

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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