朝日新聞が総括しきれないまま燻り続ける慰安婦問題

2017年11月26日 06:00

Wikipedia:編集部

「慰安婦」を巡る国際的なトラブルが相変わらず続いている。大阪市からの再三の申し入れにも関わらず、姉妹都市のサンフランシスコ市は慰安婦像の受け入れを決めてしまい、このほど姉妹都市解消の方針が決定(自民党の大阪市議団は、姉妹都市解消に反対しているようで呆れるが)。また、時期を同じくして韓国では、来年から8月14日を法廷記念日の「慰安婦の日」とする法案が国会で賛成多数で可決した(賛成205、反対0、棄権8)。

慰安婦問題を最終かつ不可逆的に解決するために、日韓合意が締結されてからまもなく2年になる。しかし、韓国側は政権が代わり、先のトランプ大統領訪韓の際にも夕食会に元慰安婦を招待して国内の反日世論に訴求(=日本側を挑発)する体質は変わらない。門田隆将氏も指摘するように、この問題を根深いものにしてしまった朝日新聞の歴史的罪の重さをあらためて感じる。

もちろん、朝日新聞は3年前の9月、慰安婦報道のフェイクニュースを30年あまり放置してきた責任を認めて記事を取り消し、その年に勃発した吉田調書の問題とともに当時の木村伊量社長が引責辞任をして一応の区切りはつけたように思われるが、どういうスタンスを取ってきたのか、第三者委員会の報告書などをあらためて読み返してみた。

当時の第三者委員会では、委員のうち、岡本行夫氏(元外交官)と北岡伸一氏(現JICA理事長)が次のように厳しく指摘はしていた。

韓国における慰安婦問題に対する過激な言説を、朝日新聞その他の日本メディアはいわばエンドース(裏書き)してきた。その中で指導的な位置にあったのが朝日新聞である。それは、韓国における過激な慰安婦問題批判に弾みをつけ、さらに過激化させた。

しかし、ほかの委員で国際政治学者の波多野澄雄氏(筑波大名誉教授)は、朝日の吉田清治氏をめぐる虚報が「大きな影響を及ばしたとはいえない」とし、国際世論に与えた影響の検証を担当した東京大学教授の林香里氏にいたっては、本人の調査レポートの冒頭からして

特定の報道機関による個別テーマの記事が、いかに国際社会に影響を与えたかを調べることは不可能

という見解を示す有様だった。

これらを受けた朝日の見解はどうだったのか。公表された見解書をみると、それぞれの委員の見解を紹介しただけで、「この問題で多角的な報道をしていきます」と述べているだけだ。つまり、自社の虚報が国際世論形成に与えた影響について、朝日自身が組織としてどう思ったのか、触れておらず、事実上、核心から逃げているようにもみえる。

林氏が朝日新聞の意向を忖度したとは言うまいが、いずれにせよ、当時の朝日の首脳部は自社の虚報が国際社会に与えた影響について、第三者委員会の多数派から厳しく断罪されなかったことには本音のところでは安堵していたのではないか。当時、朝日に厳しかった世論も、社長の首を取るという「テレビ映え」する事象に目を奪われてしまい、朝日新聞の報道が国際世論にどういう影響を与え、その責任があったのか、肝心要のところは追及しきれなかったのではないか。門田氏も提言するように、組織として再度の検証作業をすることは当然であろう。

ただし、コトはもはや朝日新聞だけに任せておける段階ではない。世界各地に炎上の種火がくすぶってしまっている。政府として、地道で実効性のある解決に向け、新しいアプローチでの国際世論対策が必要になってきている。

P.S   マーケティング視点も踏まえた新しいアプローチについては、別途、メディア・広報関係者向けの専門コラムで検討してみた。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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