2017年ベストアニメとユニーク映画

ベスト・アニメ部門

アニメーション部門は独立してランキングしています。2017年のアニメは、2016年のような、社会現象になるほどの爆発的なヒット作こそなかったものの、ハリウッド、日本、そしてアジアと、それぞれのカラーが出た個性豊かな作品が揃いました。

【1位】「KUBO/クボ 二本の弦の秘密
【2位】「SING/シング
【3位】「夜は短し歩けよ乙女
【4位】「我は神なり
【5位】「レゴ バットマン ザ・ムービー

1位は、日本のおとぎ話の世界を、ハリウッドが最先端技術で映像化した力作ストップモーションアニメ「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」。3秒作るのに約1週間かかるとも言われるほど、気の遠くなる労力を費やして作られた映像は、しびれるほどの美しさ。ストーリーもスリリングかつメッセージ性のあるもので、クオリティの高さを感じました。2位の「SING/シング」は、誰が見ても楽しめるエンタメですが、とにかく歌の力がすごい。歌う場面で歌うという当たり前の表現のミュージカルは、見終われば高揚感と幸福感に満たされます。湯浅政明監督の作品が2本(「夜は短し歩けよ乙女」「夜明け告げるルーのうた」)も見られた喜びも大きかったし、韓国アニメ「我は神なり」は実写化希望です!「レゴ バットマン ザ・ムービー」は、バットマン論として高く評価できる一方で、そのおバカっぷりに拍手でした。

ユニーク部門

ユニーク映画と評したこの部門は、何とも個性的な作品が揃っていて、まさに百花繚乱です。中には、ベストのカテゴリーに入れてもいいような真面目な作品も!劇映画、ドキュメンタリー、アニメーション、すべてミックスしてランキングしてみました。

【1位】「ゲット・アウト
【2位】「エル ELLE
【3位】「トッド・ソロンズの子犬物語
【4位】「パターソン
【5位】「哭声/コクソン

(以下順不同)
海は燃えている イタリア最南端の小さな島」「ネオン・デーモン
お嬢さん」「ボヤージュ・オブ・タイム」「フリー・ファイヤー
ハードコア」「スイス・アーミー・マン」「アトミック・ブロンド
人生タクシー」「ありがとう、トニ・エルドマン」「ボブという名の猫
ベイビー・ドライバー」「ゴッホ 最期の手紙

ユニーク部門の1位は、スマッシュ・ヒットとなった秀作「ゲット・アウト」。人種差別問題を扱う作品かと思いきや、あれよあれよという間にホラーやブラック・コメディーに、そしてナチスも真っ青の優良人種改造というSF要素も!これほどジャンルを自由に飛び越える作品も珍しい。ベスト・ムービーに入れてもいいくらいですが、あえてこちらにランキングしました。「エル ELLE」ではフランスの名女優イザベル・ユペールの渾身すぎるのにサラリとした演技に絶句。しかもあれだけ毒のある話なのに、さわやかに終わるラストが、これまた絶句。「トッド・ソロンズの子犬物語」は人を食ったようなインターミッションが最高!「パターソン」はいかにもジャームッシュ節だし、「哭声/コクソン」では國村隼さんの存在感が素晴らしかったです。

順不動の作品の解説も少しだけ。記録映画「海は燃えている」は移民問題の今を切り取った意義ある作品。「ハードコア」は全編主人公の一人称視点のみで描いた新感覚アクション。アニメーション「ゴッホ 最期の手紙」は動く油絵といった風情のアニメーション。「アトミック・ブロンド」と「ベイビー・ドライバー」は音楽の使い方が最高でした。

ユニークは、作品そのものがユニーク、題材がユニーク、語り口がユニークとユニークさも多種多様。善し悪しとは別に、とにかく憎めない愛しい映画たちを集めてみました。

どうです!映画ってほんとに飽きないワ~と、思い知らされる作品の数々。
ムムム…、ユニーク映画部門を発表していると、ますます映画が好きになってきました(笑)。

次回は、2017年の総括と2018年のかんたんな展望です♪


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年1月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。